救いの両手斧
「シュージ! 今度こそ、ムリだ! 俺を、置いて……」
それができるほど薄情ならいっそよかったよ。
「まったく。お前と出会ってからろくなことが起きないぞ」
ゴブリンどもは標的としていたスライムを見失って少しばかり足をとめたものの、すぐに新たな標的として俺たちを見つけ、こちらへ足を向けた。
こんなところでやられてたまるか。
いざとなったらどんな手を使ってでも危機を脱してやる。
じりじりと狭まっていくゴブリンとの距離に腹をくくった。
ゴブリンどもはニタニタ笑いながらゆっくりと近づいてくる。
先頭のゴブリンがこん棒の射程まで近づき、得物を大きくふりかざした。
ここは避ける……いや、ナイフの腹で受けてから力で押し退け、他のゴブリンに斬りかかって俺に注意を向けさせるのが最善か。
ふり下ろされるこん棒。構えるナイフ。
衝撃を覚悟したそのとき、ガギンッと硬質な音が響いた。
「おっと……危ないところじゃったの」
年寄りじみたしゃべり方にそぐわない少女の声がすぐとなりから聞こえた。
視線を向けるとそこには各所にプレートが施された半鎧に土色のスカートを身にまとった女の子が大きな両手斧でゴブリンの一撃を受け止めていた。