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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム
第3章 私に必要な者
34/58

32話 覚醒

 



 雷を纏った拳が目の前に迫る。


 あぁ、死んだ。


 そう悟り、目を瞑った。



 ──ドゴォォォォンッ!!──


 激しい衝撃音と物凄い土煙があがる。



 そして、鈍い何かがぶつかった音が聞こえた。


 ルナの体は酷い傷を負い、既に感覚を失っているが故に、首が飛んだと感じた。



 私は……死んだのか。



 だが、いつまで経っても私の意識を確認できた。恐る恐る目を開けた。



 ……っ!?


 舞い上がる土煙の中、ルナの目先に佇む1人の少女がいた。

 青の入り交じった髪を(なび)かせ、暴力的な魔力の覇気を纏っている。


 私と目が合った。その左眼は青く輝いている。



 あぁ、良かった。



 心底安心した。枯れた体から、瞳から涙が出た。


 髪が青と入り交じり、瞳がオッドアイへと随分変わってしまった。


 私の大切な人、大好きな人。

 また私を守ってくれた。


 ……いや、守ることができた。


 自然と口が開いた。



「おはよ……クリス」




「……おやすみ、ルナ」



 私はクリスの温かい魔力に包まれ、そっと意識を手放した。





 ───


 おかしな程の衝撃音が聞こえてくる。


 眠い……


 ルナの叫び声が聞こえた。


「ぇ……ぁ、ルナッ!」


 咄嗟に身体をおこす。だが、ルナがどこにいるかわからない。


「なに……ここ」


 周囲を見渡すと、この場所を中心に焦げた地が広がっている。


 そして、この焦げた土地の境目にある木々や大地が枯れていくのを()()()


 何かがあると思ったクリスは急いでその方向へ走った。


 すると直ぐにルナを見つけた。だが、ルナの体は朽ちているかのようにボロボロだった。


「ッ!?」


 そして魔族の男がルナを殺しにかかった。



 気がついたら、雷を纏った拳を無意識に青の根で受け止めていた。


 そして魔力を込めた脚でそいつを蹴り飛ばした。


 すぐに振り返りルナを見る。

 とても傷ついていた。



「おはよ……クリス」


 ルナは優しく微笑んだ。

 その仕草が、全てが胸を締め付けた。


「……おやすみ、ルナ」


 優しくそう伝えると、ルナはそっと目を閉じた。

 青の根がルナを優しく包み込む。



 次に地に埋もれた彼に気がついた。


「マティルッ!!」


 駆け寄りながら、地盤を変動させ調節した。

 地中から出たマティルをすぐさま青の根で包み込む。



 ……ギリギリだった。

 あと少し遅れていたら、死んでいたかもしれなかった。



「……許せない」


 クリスは静かな怒りに燃えていた。

 青の髪と左眼が魔力に合わせて鼓動する。

 それを確かにクリスは感じ取っていた。


 ルナとマティルを包んだ青の根を、背後に移動させた。

 そして背を向けて呟いた。


「2人とも……私を守ってくれてありがとう。

 安心して休んでて。もう大丈夫だから」



 今まで以上に体に満ちたる魔力が高まりうねる。


 その目先は2人を傷つけた元凶へと向いていた。



 ───


 雷が横薙ぎに木々を倒しこの広場に到達した。


 左腕があった場所を痛そうに抱え、その怒りで物凄い形相になっている。



「お前はァァァ!!

 やっぱり生きていたのか星聖女め!」


 クリスを睨み、大声で怒鳴りつけてきた。

 それに対してクリスは静かに言う。



「へぇ、なんで私が星聖女だって知ってるの?」


「その生命の樹を使うのが星聖女の能力と聞いているからなぁ!」


「そう、これの事?」


 クリスは青の根を足元から手元へと伸ばした。

 そして自在に操ってみせる。


 そのクリスの余裕の仕草にヨルドは激昴した。



「つ、くそがっ!俺を舐めてるのかぁ!?

 星聖女だか知らねぇがあの女やマティルと同じように殺してやるよ!!」


「……それってルナとマティルを貶しているの?」


 自然と声のトーンが下がった。

 その姿を見てヨルドは笑う。



「ふはは、そうだよぉ。俺の腕をこんなにしやがってぇぇぇぇ!!!この手でとどめをさしてやるのによぉ!邪魔すんじゃねえよっ!!」


「もう、指一本触れさせるつもりは無い。

 それに……腕を失くしたのは私もだけど?」


「はァ?魔王幹部の高貴な俺と、お前ら人族を一緒にすんじゃねえよ!!」



 私は大人じゃない。もう限界だった。

 声すら聞きたくない……だけど、ルナとマティルをこんなに傷つけた中身まで悪のこいつを簡単に殺す事などできない。

 痛めつけて、絶望させて……後悔させて殺してやる。


 情けは要らない。絶対に許さない。



 強い魔力の覇気が放たれる。

 それに当てられた手下達は怯み、身動きを封じた。

 ヨルドが魔力を込めたので足元へ瞬時に移動し、上空へ蹴り上げた。


「ぐああああっ!」


 その蹴りをまともにくらったヨルドが絶叫をあげた。

 規格外の速さで上空へ移動したクリスは未だに上昇し続けるヨルドの背を魔力を込めた拳で殴りつけた。

 そしてそのまま急降下をし、地中を突き進んで行った。


「があぁぁぁぁぁぁ」


 クリスが自由落下で地上へ降り立った頃には地中から音が徐々に遠くなり聞こえなくなっていた。


 上空へ消えたと思ったら地中へといなくなった一連の流れに追いつけなかった手下達だったが、ヨルドを見兼ね一斉にクリスへ襲いかかった。


 クリスはそれを見ずに腕を振り払った。


「【テンペスト(暴走)ストローム(する風)】」


 おかしな程の魔力を込めたその魔法は、暴風を生じさせ全てを呑み込んだ。

 そしてそれらの残骸は、数十キロ先まで一滴も零すことなく吹き飛ばした。


 それが一瞬で行われたため、まるで掻き消えたかのように見える。


 すると地中から何かが這い上がる音が聞こえてくる。



 クリスはそっと地面に手を当て魔法を使った。


「【ヘビー・グランド(増重力場)】【アイアン・ソウル(鉄化する土)】」


 その魔法は星の一部の重力を一時的に変換させた。

 その魔法は地中の土を鉄のように硬く変換させた。


 聞こえてきた音は一切聞こえなくなった。



 ヨルドは雷を使う。雷は地中では使えない。地から流れてしまうからだ。そして重力の変動で這い上がれなくなり、鉄のように硬くなった土で完全に身動きを封じたのだ。



「【グランド・オーバー(圧縮する大地)】」


 ─ゴオオオオオオオ─


 地中から物凄い音がする。

 その魔法は地中のヨルド周辺にある鉄の土を敢えて程々に圧縮させた。



 地に手を当てるとまだ生きていることを感じた。


 魔法が強すぎる為か直ぐに終わってしまった。

 このまま餓死させるのも悪くは無いが、あまりにも早く終わってしまったため、ルナとマティルの分が済んでいない。


 掘り起こすことにした。



「【エクスプロージョン(大噴火)】」


 ──ドンッ!!ゴオオオオオオオオオオオオオ──


 地中で大爆発が起きた。


 そしておかしな程の地震が大陸内を駆け巡る。


 クリスがその噴火口の場所を一点に決めたためそこから勢いよく焼き溶けた土や溶岩と共にヨルドが吹き出してきた。


「【グランド・ターン(地盤回帰)】」


 ヨルドが出てきた以上、このまま噴火活動をさせる理由は無いのでその噴火口を塞ぎ、地を安定させた。


「【テンペスト(暴走)ストローム(する風)】」


 ヨルドと共に上空を舞う溶岩やその残骸等を彼方へ吹き飛ばした。


 そして全身が焼き垂れ、潰され、血だらけのヨルドが気持ち悪い音を立てて地に落ちた。


「【バインド・ソウル(束縛する土)】」


 ボロボロの手足を土で縛り、圧縮して粉砕した。


 ヨルドは身体中にかなりの重症を負い、肺と喉が潰れ声すら出せていなかった。



 まさに圧倒的だった。



「貴方も私の大切なルナとマティルに同じようなことしたよね?」


 ヨルドはクリスの声が聞こえたらしく、必死に首を地に引ずって振った。


「ルナには魔法で傷つけたのでしょ?……そしてマティルには死にかけるまで殴ったんでしょ?」


 クリスは2人の傷で何をされたのかはっきりと理解していた。


「私の大切な人に手を出したのは貴方。

 だから私は……貴方を決して許さない」


 ヨルドは口を開けて何かを訴える。

 だが空気が抜けていく音しか聞こえない。


「さっきの魔法のコンボはマティルの分……そして今からやるのはルナの分」


 辺りに濃い魔力が充満する。

 それは大地を癒し、木々を成長させた。


 そして凍りつく。


「【ニヴルヘイム(凍りつく世界)】……×100ね」



 宙を舞う、氷の輝く結晶は……一斉にヨルドへ猛威を奮った。


 そして……散った。



 大技を使い過ぎたせいか、クリスの髪がより青に染まっていた。

 左眼が鼓動する。


 水龍に言われた事。今ならはっきりとわかる。



「私は……星聖女として覚醒したんだ」



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