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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム
第3章 私に必要な者
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25話 星聖女の宿命

 



『ギュアアアアアアアアッ!!』


 物凄い咆哮が地底湖内に反響した。

 とんでもない覇気だ。

 その覇気にクリスは怯み体制を崩した。


 水面から50メートル程に現れたその胴体と頭部は青く、とても逞しく大きい。

 その容姿から賢さと力強さが読み取れた。


 水龍……それは古代から存在する竜種のひとつにして、最恐の生物と呼ばれている。


 龍と呼ばれるものは叡智を有している。

 基本的に龍は歴史の節目に動くものとされており、存在を確認できるものは少ないそうだ。


 その龍が今、クリスの目の前にいた。


 死を覚悟させられたクリスは直ぐに体制を整えた。


 冷や汗が背中をなぞる。

 生唾を飲み込んだ。



 すると予想外の事が起きた。


『お主が……いや、人間が此処に来るのは初めてだな』


 とても力強く、覇気が込められた声が響いた。

 まさかとは思ったが、この状況。

 クリスが体制を整えるまでの時間、何もしなかったのも含めてこの龍が話しかけてきたと判断した。



「……話せるの?」


『我は龍種だ。それくらい容易い』


「そう、なんだ」



 水龍の眼が輝きを増した。

 すると、何かが体をすり抜けていくような感覚を覚えた。

 つい最近も感じたような……!?



「ダムさんと同じ……私を覗いた?」


 咄嗟のことにクリスは警戒した。

 すると水龍はクリスを読み取ったのか少し驚き、複雑な表情をつくった。

 クリスには表情の変化は読み取れなかった。


『名はクリスだな……良いだろう付いてこい』



 すると水龍は勝手に納得し、地底湖へ潜っていった。

 一連の流れに戸惑いながらもついて行かないわけには行かなく、水魔法を使いその後を追った。



 水底には大きな穴が真下に伸びており、水龍の通り道のようなものだった。


 更にその穴を降っていくと様々な蒼の水晶や魔結晶が生成されており、上にある地底湖より更に広い空間が広がっていた。


 そしてその空間は全てが水で埋まっていた。


 クリスは魔導を使い、水から酸素を口の中に作り出し、水圧は魔力を軽く纏いそれらを維持した。


 神秘的な空間の奥に水龍は佇んでいた。



『歓迎しよう。我が城へ』



 なぜか歓迎された。



「え、どういう事です?」


 クリスは声の波動を水に乗せて水中に響かせ、言葉を投げかけた。


 敵対しているかと思ったら付いてこいと言われ、悪意などは感じなかったので何となく付いてきたけど歓迎されるとは……てっきり勝負するのかと思っていた。洞窟内散々にしちゃったし。

 いつの間に仲良くなったのかな?



『我はこの世界の頂に位置する龍種。水を支配し操る唯一無二の水龍……名をリヴァイアという』


「私はクリス。さっき私を視たみたいだからわかると思うけど」


『あぁ……今世ではクリスという名だという事もわかっている』


「!?」


 ダムには私が転生したということを告げたのだ。

 ダムの眼では私の能力まで、転生の能力まで見抜くことはできない。

 この水龍は転生した事まで……能力までわかるのかと、クリスは内心驚いた。

 そして、その能力を知れる可能性に期待した。



『まぁ、私の眼は能力を見抜くことができる。クリスが本来、星に愛された者として持つはずだった能力まではな』


 まるで星に愛された者では無くなったかのような言い回しを不思議に思った。


『実際に、クリスが得た能力は星に愛された者以上の……星聖女と呼ばれる能力だ』



 星聖女……初めて聞く名だった。


「私は星聖女だっていうの?」


 クリスは怪訝そうに聞いた。


『星聖女とは星の化身とも呼ばれている。

 その能力は尽きることのない無尽蔵の魔力……

 だが、その本質は星から星聖女へ魔力が送られる。

 クリスが得た能力は星聖女の能力だ。つまりクリスは星聖女という事になる』



 心当たりがある。

 どんなに消費しても減らない魔力……

 それどころか何処かから魔力が私へ流れ込んでくるような感覚もあった。


 思わぬタイミングでクリス()の能力を知れた。

 そしてそれは納得が行くようなものだった。


『心当たりがあるだろう。

 星聖女の有する魔力は星のもの……よって星に存在するものにとても調和し、浸透する。

 基本属性に特化するのも自然の原理だ』



 確かに今まで、魔力がとても地へ馴染んだり、ダンジョンの魔力が私に何故か調和したりと、そのようなことが何度もあった。


 そしてクリスはこの水龍の目的がわからなかった。

 何故わざわざ私を歓迎して私の欲しがる情報を渡すのか。

 その意図がわからなかった。



『あぁ、まぁ何というか……その、暇だったから』



 ……なるほど、寂しかったのか。



『そうハッキリと言うな!』


「言ってないけど……心読めるんだ」


『うむ……龍だからな。造作もない』



 さっきから無駄に龍を推してくるなぁ


『ま、まあいいではないか。

 それでな、星聖女には宿命があるのだ』


 水龍のリヴァイアは話を逸らした。

 星聖女の宿命……気にならないわけがない。


「そんなのあるの?」


『あぁ、星は何故魔力を一点に集中……つまり星聖女に魔力を注ぐと思う?』


 この答えは何となくだがすぐにわかった。


「星の危機を守る為とか?」


 水龍は大きな首を器用に曲げて頷いた。


『その通りだ。初代魔王が存在した数千年前、初代勇者と星の管理者、竜種族、そして星聖女で力を合わせて初代魔王を殺したのだ』


「ダムさんは勇者が討ち取ったって言ってたよ?」



『さっきも言ってたがダムとは……あぁ、星の管理者に会ったか。だとしたら再び我ら竜種族が集うはず……』


 水龍は考え込んでしまった。


 少し待つと水龍は頷き何かに納得したようで、また話し始めた。



『待たせてすまんな。さっきの話だが魔王を直接殺したのは勇者だからだろう』


「あぁ、そういう事ね」


 それよりも水龍の言った竜種集合の話がとでも気になった。


「さっき言ってた竜種族が集うってどういう事?」


『星聖女が現れたとなったら星の示す危機だということだ。それを発見した星の管理者及び竜種族は連絡を取り、集う事になっている。

 恐らくダムという星の管理者はクリスの転生の力が強すぎて星聖女の能力が読み取れなかったのだろう』


「あ〜そういう事ね」


 確かにダムはクリスの能力を読み取れないと言っていた。

 という事はこの後竜種が集合とかあるのだろうか。


『いや、頼まれ事をしていてな。

 その事を他の竜種族へ伝えるのは半年後だ』


 その頼まれ事というのがとても気になった。

 そして半年後に伝えるという意味がわからない。


「頼まれ事って?」


『悪いがそれは伝える事が出来ぬ』


「そう」


 誰に頼まれたかなど気になったが、神の存在を知ったしそこら辺の人物?…神物?だろう。

 クリスは予想をつけ、納得した。



『次にクリス、転生の話だ』


 そう言うと水龍の表情がより一層と険しくなった。


 私が一番気になっていることが知れる。

 一瞬心臓が高鳴ったかのような気がした。

 だが……


『正直に言おう……転生の能力は私にも視る事ができなかった』


「!?」



 能力を視ることに長けている水龍ですら、見抜くことができなかった。


 この私の魂にまで根付いたという能力。水龍ならこれを視る事ができるかもしれないと期待を抱いていた分、その言葉のショックが大きかった。


 次になぜ前世の事などがわかったのか、気になった。


 水龍は私の心を読んで答えた。



『それはな、ある者から聞いたのだ。それとお主の心の声から確信を得たという事だ』


 水龍がいうある者という存在が気になった。


『悪いがその事も伝える事は出来ぬ』


 その答えは何となく察していた。



「ねぇ、水龍。……私はどうすればいいの?」



 世界の禁忌とまで言われた。


 決して解くことのできない呪いをかけられた。


 星聖女と呼ばれた。この星の危機を守る宿命だそうだ。


 《彼》に会いたい……しかし、今は戦争中だ。


 私には背負うものが多すぎる。大きすぎる。


 私はどうすればいいのか……


 わからなかった。




 水龍にはそのクリスの気持ちが痛いほど伝わった。



『我は龍種だ。色々制限もあるが、できる限りお主に力貸すようにしよう』


 水龍が力を貸すと言った瞬間、クリスの身体は淡い青色に光り包まれた。

 そしてそれはゆっくりと体に浸透していった。


 暖かく冷たい水のようなものが体を駆け巡った。



「……ありがとう」


『それは古龍のみ扱える加護というものだ……

 我は此処から出ることは出来ぬ。よって我にできることは少ない。

 余計なことはするなと言われているが……まあ良い、お主に助言をしてやろう』


「助言?」



『あぁ、お主が全てを背負うにはまだ若い。何かを背負い込むのなら分割すればよい。できることからやっていくのだ。

 それか他の人を頼るのがよい。何でも1人でできるとは思わない事だ。一緒に背負って進むのだ。

 これが長生きのコツだ』


 そう言って水龍は微笑んだ。

 その表情の変化に気がついたクリスは乾いた笑みを浮かべた。


「古龍が言うとなんかその通りだと思っちゃうよ」


 それだけの重さがあった。



『クリスにも大切な人はいるだろう?』


「うん、ルナっていう大切な人がいる」


『なら相談するべきだ。相談される事は相手にとっても嬉しいものだ。

 そのルナという者がこうして悩んでいるなら、クリスは相談して貰いたいと思うだろう?』



 その言葉はクリスに響いた。


「……そうだね。その通りだよ」



 ルナに何も言わずに飛び出してしまった。

 ルナが頼りないというわけじゃない。

 ただ、私のせいでルナを傷つけたりした。もう巻き込みたくなかったのだ。


 でも、私がルナの立場だったら違う。

 絶対にルナの助けになりたいと思う!!



 決まってしまった現状は変えられない。世界の呪いはもう解けない。

 例えそうだとしても……そこで挫けるか抗い生き抜くかだ。


 私は世界の呪いなんかで挫けない。挫けるものか!

 私は私の望む(せい)をする。


 そして私にはルナがいる。

 村には父母がいる。


 私は1人じゃない。



 それを水龍に教わった。



 決めた。私はルナと《彼》を探す。


 そして……ついでに星聖女として戦争を止めてみせる!



 クリスの心変わりを視た水龍は優しげに微笑んだ。

 そして……とても悲しそうにクリスを見つめていた。




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