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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム
第3章 私に必要な者
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23話 星の歴史

 



 その日の夜、落ち着いたクリスはルナに告げた。


「もう一度、《彼》に会いたい」



 あの気持ちは忘れられなかった。

 心が彼を求めていた。何故かわからない。

 今度はしっかり会わなければならないと思っていた。


 だが、私は暴走してルナを傷つけた。

 また呪いのような感情が暴れる可能性を考えてルナは許可してくれるとは思わなかった。



「また会ったら……クリスは大丈夫なの?」


 だが、ルナはクリスの心配をしていた。

 クリスは反対されるかなと思っていたので聞き直してみると、「会いたいんでしょ?」と言ってくれた。



「うん、会わなければならない気がする……

 後ね、もうあんなふうに暴走するとは思えないんだ」


 もうルナを傷つけたくない。ルナの傷ついた姿も見たくない。

 クリスのその言葉の根拠はルナの存在が理由だった。



 それを聞いてルナは安心した。

 そして別に気になっていた事を言った。



「あれからずっと考えていたの。私達は冒険者として、人族として……魔族の事を知らずに蹂躙しようとしていた。

 《彼》は言っていた。何もしていないのに何故だ、と。大切そうに弟を抱えて」



 Sランクの人達は魔族に強い恨みを持っていた。

 その言葉を信じ、魔族を駆逐するために戦争に参加した。


 しかし《彼》のような魔族もいた。


 人族が悪なのか、魔族が悪なのか……

 何が悪いのかわからなくなった。



「クリス、私は《彼》に聞いてみたい事が別にできた。

 だから彼を追い、魔族領のより奥へ向かう」


「うん、一緒に行こう。

 ありがとう、ルナ」




 ───


 陽が出てきた。

 クリスは感覚を取り戻し、体の調子は好良になっていた。

 『雨嵐』の人達の眠る場所へ向かった。


 その場所は昼でも暗く、4つの石碑が寄り添ってできていた。


「ルナ、ありがとう」


 彼らの石碑はルナが作ったのだ。


 クリスは彼らの元で跪いた。



「ごめんなさい……」



 《彼》の事やルナの事でかなり後回しになっていた。

 クリスが彼らを殺したのだ。


 あの時、躊躇など無かった。

 消えろと……死ねと思ったのだ。そしたら死んでいた。

 それほど《彼》に武器を振るう彼らが許せなかったのだ。


 自分でもどうやって殺してしまったのかわからない。

 だが、彼らが死んだのは私のせいだ。


 クリスは彼らの死を背負っていくことに決めた。



「よし、ルナ行こう」


「……うん」




 ───


 どこまでも続くような山の上空をクリスとルナは進んでいた。

 途中に湖や草原、沼地もあった。


 あれから3日も経つ。未だに魔族に遭遇していなかった。



「ルナ、こっちかも」


「わかった」



 クリスとルナは《彼》を追い、魔族領奥地へ向かった。、


 手がかりはほぼ無かったが進まないわけにはいかなく、彼が飛び立った方向へ空を飛んでいた。


 途中で山の中腹辺りに木製の家をみつけた。

 その近くの川辺に人影が見えたので警戒しながらそこに降り立った。


「すみませーん、お尋ねしたい事があるのですが」


 川辺には魔族のおじさんが1人いた。

 丁度水を汲んでいたらしい。

 クリスが印象の良い笑みを浮かべて話しかけた。


「う〜ん?こんなところに人族が来るとは珍しいな」

 

「珍しいのですか?」


「かなり昔1回だけな……っておい!人族じゃねえか!?」



 その魔族は持っていたものを投げ捨て警戒し、拳をクリスとルナに向けた。


「待ってください!戦闘する気はありません!!」



 クリスは慌てて両手を挙げた。


「人族にしちゃ珍しい。魔族を襲わないとはどういう事だ?」


 その魔族は警戒を緩めずに問いた。


「なんで魔族だから人族だからって争わないと行けないの?」



 ルナが捨てるように吐いたその言葉は、その魔族の男に響いた。


「へぇ、今の時代にこんな事を言う人族がいるとは驚きだな」


 そう言って笑うと腕を組んで自己紹介をしてきた。


「俺の名前はダムという。よろしくな、人間!」



 ───


 話がトントンと進み、気がついたら家へ招かれていた。

 丁度夜ご飯を頂いている。

 不思議な事に、このダムという魔族から信頼できそうな何かを2人は感じていた。


「そういえばなんで2人は魔族領に来てるんだ?」


「私達冒険者やっていてね、その依頼で」



 さすがに戦争に来ましたとは言えなかった。


「ほぅ、冒険者なのか!……なるほどね。

 じゃあなんで2人は魔族領へ来たんだ?」



 冒険者の依頼で魔族領に行く。

 そんな依頼は1つしかない。それをダムは知っていた。

 魔族だからって争わない。そう言った2人が何故魔族領へ来たのかを聞いたのだ。


 その質問の意図に気がついた2人は説明した。


「ある人を探していて……

 前世で一緒に過ごした《彼》を」



 ルナはクリスが前世の話を切り出すとは思っていなく少し驚いた。

 するとダムは顔色変えて驚いた。


「転生者なのか!?つまり……この世界は終わりに近づいているのか」



 ダムはいろいろ考え始めた。

 あまりに吹っ飛んだ話に2人は拍子抜けになった。


「え、どういう事?」



 するとダムは恐る恐るクリスに聞いた。


「なぁ、神はなんて言っていた?」


「え、神なんて会ったことないけど……」


「ん?世界の終焉じゃないのか?」


「いや?聞いたこともないけど……」



「「……ん?」」



 ダムとクリスは同時に首を傾げた。


「ちょっとまて、転生者なんだろ?」


「そうだけど……」


「いや、転移者じゃなくて転生者だからか?……」


「ねえ、ダムさん。

 ダムさんのいう転生者ってなんなの?」


 話が進みそうに無かったのでルナがダムに問いた。



「神の使いなんだろ?」


「え、違うけど……」



 いろいろと話が食い違っているので転生者が神の使いというダムさんに何故そうなのかを話をしてもらった。



 その内容は予想していたものよりスケールが大きすぎる歴史の話だった。




 ──

 今からおよそ数千年前、人族の1人の転移者が神によってこの世界に落とされた。


 その神は世界の滅亡と転移者に伝えたらしく、その未来を変えるために。世界の均衡を保つために転移したようだ。


 世界の滅亡と呼ばれるほどの原因は、気の狂った世界の異物とよばれた魔族の怪物だった。

 後に初代魔王と語られる魔族である。


 それに対抗するために共に暮らしていた人族と魔族、そして獣族は手を取り戦った。

 そして多くの犠牲を出して負けてしまったのだ。


 誰もが絶望した時、人族の転移者が先陣を切り魔族の怪物を打ち倒した。


 その転移者は後に初代勇者を呼ばれるようになった。



 そこまでは良かったのだ。

 だが、人族は奢った。その魔族の怪物を打ち倒したのは()()の勇者だからだ。


 そして人族はその戦いで出した犠牲の怒りの矛先を共に戦った魔族へぶつけた。


 それが長い戦いになった。


 それに見兼ねた獣族は、大陸の東側の山脈を越えた先にある大地へ移動した。


 勇者は世界を救えたのに、結局救えなかった。



 こんな事になるならと、勇者は神器とも呼ばれた己の愛剣と命を燃やして星規模の大技を2つ放った。


大陸 裂斬(星の地割れ)


エターナル(悠久の)テンペスト(暴風)



 その大技は大地を割った。

 その風はいつまでも衰える事は無かった。


 物理的にも人族と魔族は勇者によって関係を絶たれた。



 その傷跡は後に《絶縁の谷》と呼ばれるようになった。


 ──



 クリスとルナは息を呑んだ。



「皮肉なもんだよな……勇者は命まで投げ出して種族を切り離したのに、次はそこを乗り越えてまで戦争をするなんて」


 ダムはそう言ってため息をついた。



「昔人族が1人来たって言ったろ?それが勇者なんだよ」


「え?ダムさん何年生きてるの!?」


「もう、数千年以上だな。まぁ、俺は特別なんだよ」


 ダムはそう言って笑った。



「だから、転生者と聞いて世界の危機でもおきたのかなって思ったんだね?」


「そういう事だ、その様子だと世界の危機は無いようだから安心したな」



 クリスは神に転生させられたのではない。

 《私》の能力なのだ。


「ん?じゃあ今の勇者は?」


 ルナは疑問に思ったことを素直に口にした。

 するとダムは一瞬驚き、ため息をついて答えた。


「世界的に見るとな、魔王が誕生すると勇者が生まれる。

 勇者が生まれると魔王が生まれるんだ。

 なぜだかわからないがな。だから今勇者がいるなら魔王もいるのだろう」

 

「うん、魔王がいるって聞いた」


「やはりな……」



 面倒なことになりそうだ、とダムは呟いた。


「勇者がいると人族は魔族を駆逐するとか言い始める。戦力があるからな。そして毎回戦争になるんだ」


「そういうことなんだ……」


 ルナは合点がいった。

 ダムは不思議そうに首を傾げた。


「それにしても今回の勇者誕生は早いな。数年前にも戦争があったのに……代替わりでもしたのか」



 ダムは立ち上がり、お茶のお代わりを持ってきた。

 それを頂き、クリスはダムに1番気になることを聞いた。


「さっきから質問してばっかりだけど……

 勇者って転移者なの?」



 リル・ナスタシアと会った時、妙な親近感が湧いた。

 もしかしたら私の知っている人かもしれない……

 クリスはそう考えていた。


「いや、転移者は初代勇者だけだ。

 次世代からの勇者は星に愛された者と呼ばれている」


「星に愛された者ね……」


 ルナはクリスをじっと見た。

 するとダムは続けた。


「この世界には稀に勇者じゃなくても星に愛された者は生まれるんだ。その年でここまで来るとなると……2人も星に愛された者かもしれないな」



 そういいダムは右目を瞑った。


「俺の能力にな、人の力を見抜く目がある……

 2人の本質をみてやろうか?」



 その誘いは……その話が本当なら、転生の事や私の知らない私を知る事が出来るかもしれない。

 鼓動が一瞬高まった気がした。


 


初投稿から1ヶ月経ちました。

未熟で至らない所が多々ありますがこれからもどうぞよろしくお願いします。

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