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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム フトシ
第2章 異世界アスティルカ
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16話 ルナの秘技

 



 Cトーナメントの決勝のゴングが鳴った。

 ルナに対峙するのはクノイという名の口元を黒い布で隠した忍者のような女性だ。

 短剣使いらしく、試合開始と同時にルナの槍の間合いに侵入してきた。



 この世界には武技というものがある。

 それは決められた型ではなく、その動きを繰り返し鍛え作り上げた個人のオリジナルの技なのである。その効果は絶大で通常攻撃の数倍もの威力と速さ、正確さを持ち合わせている。


 代々受け継がれる武技や、騎士が使う国の象徴の武技など、武人は日々最善のものへと昇華させている。

 つまり、オリジナルにして努力の境地。決して才能だけでは辿り着く事が出来ないのが武技というものなのだ。


 ルナは魔法を主体とした槍の使い手だ。

 それが本来の戦闘スタイル。

 だが、魔法を禁止された場合、ただの槍使いだ。


 それをルナは自覚していた。

 ルナは魔法使いである。魔法使いの致命的弱点は魔力が底を尽きた時だ。それを補うためにルナは槍を使っている。

 その槍技がこの大会でどこまで通用するのかを試したかったのだ。



 手数の多い短剣がルナに猛威を振るう。


(くそっ、早いっ!)


 女忍者はルナに余裕を与えなかった。

 短剣を器用に繰り出しルナに攻撃の隙を与えなかった。

 そしてこの状況は、ルナが危機していた場面と非常に似ていた。

 ルナより素早い動きに槍より短い武器。

 そして手数の差は圧倒的に不利。


 女忍者は一瞬身を屈め、ルナを下から蹴り飛ばした。

 体が浮き上がったルナは場外ギリギリまでルナは転がった。


「ぐっ、つ!?」


 体制を立て直すため立ち上がるとすぐ目の前に女忍者が迫っていた。


(まずいっ!!)


 ルナは槍を足元に強く突き、棒高跳のように空中へ身体を翻した。


 が、それにも反応した女忍者はルナの腹部を踵で蹴り飛ばした。


「ぐはッ!」


 肺から息を吐き、反対側の場外スレスレまで転がった。槍は手放さなかった。



「ルナっ!!」


 遠くからクリスの声が聞こえる。


(クリスの声だ……負けられないなぁ)


 このままでは確実に負けてしまう。ルナは意を決して決勝戦でクリス相手に使うつもりだった奥の手を切ることにした。


(この状況は奇妙。私が槍しか使わない時は魔力が無い時……。でも今は、魔力が有り余っている!!)


 ルナは素早く立ち上がり、槍を地に刺した。

 その槍を握り、魔力を練り流し込む。

 そしてルナの()()を作った。



「【魔力場】ッ!!」


 ルナの槍から流れ込む莫大な魔力は舞台の地中に充満した。



 この世界には『魔力場』と呼ばれるスポットがある。

 見分けのつかない大自然に生成されるものであり、その土地の上に立つと魔力が供給される場所と体内保有魔力が地に吸われる場合がある。


 ルナはそこでヒントを得たのだ。

 自身で魔力場を作り、相手から魔力を吸い上げれば良いと。


 だが、ここで大きな問題が発生した。

 相手から吸い取り得る魔力より、相手から吸うために消費する魔力の方が莫大なルナの魔力を必要とするからだ。

 そして魔力場を作ると地中へ自身の魔力が垂れ流しになる。


 浮島などに魔力を満たす事が出来るなら、最強の術として使えるだろう。

 だが、地は星の一部だ。地へ魔力を満たしても、すぐに星へ流れていってしまう。


 つまり魔力場を作ると魔力がすぐに尽きてしまう。

 そして魔力場を作る魔力があるなら相手から魔力場で吸う必要もなく、その魔力で魔法攻撃をすれば良い。



 本来なら使えない魔術だった。

 だが、魔法を禁じられ魔力が有り余る今ならとても使える魔術なのだ。


(この技にはリスクが多い……、まず地に槍を刺すか手を置き魔力を注ぎ込むのを維持、そして魔力操作をしなければ数十秒で魔力場は消えてしまう。

 そして早く試合を終わらせないと私の魔力が尽きてしまう)


 ルナは魔力場を発動させ、すぐさま女忍者へ駆け出した。

 女忍者もルナへと駆け出そうとしたが、バランスを崩して倒れた。


(やっぱりそうだった!彼女は、クリスと同じく魔力で自身を強化している!)


 女忍者は自身の変化に驚愕した。

 だがすぐに体制を戻し跳躍したが、女忍者が跳べた飛距離は……地面から僅か1メートル程だった。


 魔力場を発動中はその地上にある魔力を喰らう。

 だがルナの魔力場が吸う事ができる魔力は相手が練り上げた魔力だ。存在魔力までは吸い取れない。

 女忍者はほぼ無意識に行動の度に魔力を練っている。

 その行動に必要な魔力を吸い上げた事で身動きが上手に取れないのだ。


 再び倒れ込んだ女忍者まで駆け寄ったルナは、女忍者の首の横の地に槍を突き刺した。そしてその首筋に優しく槍の穂を添えた。


「くっ……、う、あぁ!!」


 女忍者は力の抜けるような声を上げた。

 ルナは魔力吸収を直接行い、皮膚が薄い所から一気に吸い上げたのだ。

 女忍者は槍や地に身体が密着しているので体内にある保有魔力を急激に吸われたのだ。


「はぁ……くっ、参った。降参だ」


 女忍者は震える手を挙げて降参を宣言した。

 そうするしかなかったのだ。


『き、決まったあぁぁぁ!!!

 クノイ選手の降参で、勝者!ルナーー!!!!!』


「「「わああああああああああ!!!!」」」



 試合終了のアナウンスを聞いてルナは片膝をついた。

 魔力を一瞬で酷使したからだ。

 魔力場は何もしなくても地に流れ消え行く。

 正直勝てるか微妙だったため、この勝利がとても嬉しかった。

 女忍者が苦しそうに質問してきた。


「くっ、我に何をした」


「……魔力を吸ったの。貴方魔力で身体強化していたからさ」


「なっ、どうやって魔力を吸ったのだ!?」


「ここに魔力場を作ったの」


「!?そんな事が可能なのか……この試合、我の完敗だな」


 女忍者はルナの発言に驚いた。そして清々しい笑みを浮かべた。


「そんな事ない。普通に戦ったら絶対負けていたよ。本当にギリギリの勝負だった。楽しかったよ!ありがとう」


「あぁ、こちらこそ。優勝おめでとう。決勝戦、応援してる」


 ルナは身体が魔力不足で動けないでいる女忍者を肩で背負い、退場していった。


 観客から温かい拍手と声援が送られた。

 するとアナウンスが入った。


『以上をもちまして、本日のトーナメント決勝の部は終了となります!明日は今大会の最終日です!!大いに盛り上がりましょう!!』


 こうしてトーナメント決勝戦は終了した。



 ルナが控え室に女忍者と戻るとクリスが待っていてくれた。ルナを経由して魔力を分けてくれた。


「クリス、魔力ありがとう。勝ったよ……」


「うん、ルナ。優勝おめでとう。そして……」


「「絶対私が勝つからね!」」



 また明日みたいな雰囲気出しているが、この後一緒に飯を食べ風呂に入り仲良く寝るつもりだ。


 女忍者はその2人の表情をみて優しく微笑んだ。



 再びアナウンスが入り、明日の試合の順番が発表された。


 1試合目 クリスVSルナ


 2試合目 ルナVSシクレ


 3試合目 クリスVSシクレ


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