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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム フトシ
第2章 異世界アスティルカ
16/58

14話 武術大会 開催!

 



 現在宿泊中の『くまさん』にて店主ダイルにガゼフの家の場所を訊いた。

 丁度手が空いているらしく案内してくれることになった。


 ダイルは昔ガゼフと冒険者パーティを組んでいたらしく、ガゼフは国にスカウトされて旅商人に、ダイルは実家を継ぐために料理人になったらしい。

 道中そのような話をしてくれた。


 しばらくすると、王都中央の王城付近にある豪邸の前についた。

(旅商人すごいな!)

 2人の気持ちはそれで埋め尽くされていた。


「旅商人は限られた人しかなれないからな。言ったろ?ガゼフは塩でかなり稼いでいると」


 ダイルはそう言うとガハハと笑った。


「じゃあ、私の案内はここまでだ。

 そろそろガゼフも帰ってくる頃だと思う。

 ……おっ、丁度お帰りのようだ」


 ダイルがクリスとルナの後方を見るので振り向くと、ガゼフが馬に騎乗しながら手を振っていた。

 夕陽を背景に馬と駆けてくるおっさん……やけに渋かった。



「久しぶりだな!クリスちゃん!ルナちゃん!」


「久しぶり〜!」

「久しぶり!」


 ガゼフが馬から降りて手ずなを片手にした。

 するとダイルが踵を返した。


「じゃあ私は帰るぞ」


「ダイルさん!案内ありがとう!」

「うん、また後で……夜ご飯楽しみにしてる」


「ははは、また後でな!腹空かせて帰ってこい」


 ダイルは嬉しそうに帰って行った。

 ガゼフはダイルと上手くやっているクリスとルナを見て、やけに嬉しそうにしながら家の中へ案内した。



 家の中はとても綺麗で、大きなリビングと気持ち良さそうなソファが並び、クリスとルナは口を開けていた。

 そこへ綺麗な女性が話しかけてきた。


「あら、いらっしゃい。

 クリスさんとルナさん?」


「はい!えっと、」


「ふふ、私はガゼフの妻のマリといいます」


「ガゼフさんの奥さん!?とても綺麗!」


 その女性はとても美人で、渋顔のガゼフの奥さんだとは思えなかった。


「あら、ありがとう。

 ガゼフから2人の事はよく聞いていますよ。

 なんでも可愛い孫のようだと」


「お、おいマリ!それは言わなくていいだろ!」


「うふふ」


 言うことは言った。という感じで奥さんのルナは奥の部屋へと戻っていった。ガゼフは恥ずかしそうにしていた。


 クリスとルナは、ガゼフの奥さんがとても綺麗だった事に驚き、ガゼフが私達の事を孫のように思ってくれてると知ってとても嬉しく何とも言えない温かい気持ちになった。



「こっちの客間で話そう」


 ガゼフは恥ずかしさを隠すように歩みを進めたので2人は笑顔でついて行った。


 綺麗な客間に通され、ふかふかなソファーに腰掛けた。

 するとマリさんがお茶を入れてくれた。


 1口すすると、様々な香りや味が楽しめた。

 とても良い茶葉だと思えたので大切に飲んだ。


 2人のその様子を見て微笑ましくなりながらガゼフは話を切り出した。


「まず、2人とも久しぶりだな。

 Bランク冒険者になったんだってな!おめでとう!」


 ガゼフは独自の情報網からその事を知り、とても喜んでいたのだ。


「ありがとう。でも本当はSランク」


 ルナはそう言って金色のカードをガゼフに見せた。


「おお!まあ2人の実力ならって思ってはいたが、だがBランクと聞いたぞ?……あぁ、そういう事か」


 ガゼフは2人がSランクとBランクの冒険者カードも所持しているのをみて事の内容を察した。



「今日はガゼフおじちゃんにお願いがあって来ました」


 その言葉にガゼフが身を強ばらせた。


「お、おう。2人のお願いかぁ。俺に出来ることならなんでも言ってくれ」


 ガゼフは王都への道中、2人の暴れっぷりを思い出し、『俺に出来ること』と少し強調して言った。


「大会終わったらまた塩を求めアベラへ行くでしょ?」


「あぁ、そのつもりだぞ。……ってなんで大会の事を知っている!?」


「私達出るから」


「ぇぇええええ!?」


 ガゼフは顔を真っ青にして叫んだ。

 大会関係者として魔法を使われたら罰しなければならないからだ。


「武術の大会だぞ!魔法ダメなんだぞ!?」


「魔法攻撃は使わないよ」


「本当にか…?」


「当たり前じゃん、ガゼフおじちゃん私の事どう思っているの?」


「え?魔法大好き暴走っ子」


「……あはは、そんな事ないじゃん。

 あれ?おかしいな、右腕が」


 クリスがそっと右手をガゼフに向けた。


「ひぃぃ!嘘ですごめんなさい!!」


(うわぁ、なんかすごいデジャブ……)

 この2人はこのやり取りが好きだなぁとルナは呆れた。




「今日はガゼフおじちゃんにお願いがあって来ました」


「俺に出来ることならなんでも言ってくれ」


 ふりだしに戻った。


「大会終わったアベラへ行くでしょ?」


「あぁ、大会の期間は1週間程だからな。その後すぐに出発する。なんか頼み事でもあるのか?」


 ガゼフは村の人達へ手紙でも預かるのかと予想した。だが、次に聞く言葉を聞いて顔が今までに無い程に真っ青になった。


「私達もアベラに行きたいから連れて行って欲しいの」


「え?」


「私達もアベラに行きたいから連れて行って欲しいの」


「……ぇ?」


 何とか言葉の意味を理解し、いろいろ気を使いながら2人に問う。


「空飛んだ方が早くないか?」


「アベラまでの道がわからないからさ」


「そういう事か……まぁ、いいだろう。連れて行ってやる!ただし、なんかもう、暴れないでくれ」


 断る理由もないし、ガゼフはクリスとルナの事が好きだ。

 アベラへ行くのに途方に暮れたとなると心が痛む。

 馬には悪いけど思いっきり走らせて、なにか暇つぶしになる物を買い込んでおく事に決めた。



「うん!ありがとうガゼフおじちゃん!」

「じゃあ大会終わったらまた来るね」


「あぁ、わかった。その時にアベラまでの計画を話そう。……大会では魔法攻撃は絶対しないようにな。ちゃんと武器で戦うんだぞ?

 それと頑張れよ!」


「うん!いろいろありがとうガゼフおじちゃん!」



 クリスとルナはガゼフとマリに礼を言って宿へ向かった。

 なんだかんだ言って2人にとって良いおじいちゃんだ。

 迷惑をかけないようにしようと2人は考えた。


『くまさん』へ戻るとダイルが夕食を準備して待っていた。

 いつも通り、夕食はとても美味しかった。





 ───


 ガゼフの家に訪問してから2週間が過ぎた。

 今日が大会当日だ。

 2人はコツコツと依頼をこなしてお金を稼いでいた。


 特にこれといった事は無かったので割愛する。



 予定通り開会式が行われた。

 大会参加者は530名まで増えた。

 1グループ53名の10グループでロイヤルバトルらしい。

 勝ち残った3名、合計30名がトーナメントへ進める。

 シード枠が18名で総合計48名だ。


 16名のトーナメントを3つ作り、そこで各トーナメント事に1位を決める。そして3つのトーナメントの1位同士で優勝〜3位を決めるそうだ。


 ロイヤルバトルではクリスは8番のグループで、ルナは2番のグループだった。



 沢山の試合が行われるからか、すぐ1試合目のロイヤルバトルが始まった。


 会場内はすごい熱気に包まれ大いに盛り上がりをみせた。

 刃を潰した鉄の武器がぶつかり会い、大きな鈍い金属音が会場内を逞しく鳴り響く。


 場外で負ける者、気を失って倒れる者、片手を挙げて棄権する者など様々な動きがみれた。観客の声がうるさい程に響く。ロイヤルバトル形式の仕様か、試合はすぐに終盤を迎えていた。


 最後に残った3名の名前を司会者が読み上げ、試合は終了した。

 医療班がストレッチャーを持ち出場者を運び始めた。


 動ける出場者も、打ち倒した者を抱え退場していった。


 会場には大きな拍手がごった返した。



 思ったよりも雰囲気や治安などが良く、クリスやルナの心も徐々に昂ってきた。


「2番のグループの方、出場になりますのでこちらまでお願いします」


 ルナが立ち上がった。


「クリス、行ってくる。絶対残るから。

 クリスとの勝負まで負けない。」


「うん!負けないでね?ルナ!」


 ルナは槍を持って行った。


 ルナが会場にでると話しかけてくる人がいた。

 最近冒険者活動をしている時によく話しかけてくる人だ。



「おぉ!ルナちゃんじゃん!ルナちゃんが出るなんて聞いていなかったなぁ!いや、楽しみだ!」


「えっと、はい。よろしくお願いします」


 ルナはその人の事なんて覚えていなかったが。


 観客席からも冒険者達がルナを応援している声が聞こえた。



(あれ?ルナってこんなに知り合いいたっけ?私とずっと一緒にいたのにな)

 クリスは不思議そうに見ていた。


 実際にはルナと同じくらいクリスも冒険者の中では有名だった。

 なにせ新しく王都に加わった実力のある若い女子。

 噂にならない訳がない。



 大きいコングと共に試合が始まった。

 ルナは舞台の端により相手の攻めの手を待っていた。


 簡単に落とせると思った者がルナに襲いかかった。

 するとルナはその攻撃を綺麗に躱し、槍の石突でその相手を場外させた。

 それを見た者がルナへ寄ってくる。


 ルナはまるで躍るように攻撃を流した。

 そして優しく場外させる。


 一連の動きに会場内が湧いた。


 そして気がついた時には試合が終わっていた。

 ルナの他、女性2名がトーナメントへ出場した。


「ルナ〜!お疲れ様!

 あんなに端っこにいるからハラハラしちゃったよ!」


「ふふ、あれが1番効率が良かったからね」



 ルナがトーナメントに残った事を嬉しそうに話しているとガゼフが控え室に来た。


「久しぶりだな、クリスちゃんとルナちゃん」


「え!ガゼフおじちゃんだ!久しぶり」

「あれ?なんでガゼフさんがいるの?」


「ああ、このトーナメント表を張りにな」


 そう言ってガゼフは手に持ったトーナメント表を見せてくれた。


「まだ名前は決まってないが、形式などがわかりやすいように張るんだ。それとルナちゃん!トーナメント出場おめでとう!とても綺麗な試合だったぞ」


「ふふ、ありがとう」


「クリスちゃんも頑張れよ!」


「うん!ありがとう!」


「そしてこれは俺からの差し入れだ、妻のマリが2人にってな」


 ガゼフは弁当を2人に渡した。

 クリスとルナの嬉しそうな表情を見て満足したのかガゼフはそのまま去っていった。


 2人は「「ありがとう!」」と言ったら振り向かず手を振ってきた。

 さすがガゼフ、とても渋かった。



 元々、昼は屋台で食べようとしていたので、この差し入れはとても嬉しかった。

 マリの弁当はボリュームもあってとても美味しかった。


 ロイヤルバトルは進んで行く。

 本日中に余裕を持って終わるほど早く決着がついていった。


 そして7番の試合が終わった。


「8番のグループの方、出場しますのでこちらまでお願いします」


 クリスは片手剣を手に取り、立ち上がった。


「クリス、負けないでね」


「うん、勝つよ」


 クリスはそれだけ言って出場入口へ向かった。

 出場するとルナと同じように観客席から声が上がった。


「クリスちゃ〜ん!頑張れ〜」

「クリスさん!負けないでね!!」

「クリス様!あぁ、クリス様!」


 変なのが混じっていた気がしたが手を挙げて返した。


 そしてゴングが鳴った。


 近くにいた女性が短剣を持ってクリスを背後かを襲った。

 クリスは魔力を軽く込めた剣を軽く後ろへ回転しながら薙ぎ払った。


 すると、短剣で受け止めた女性が()()()()()

 その短剣は砕け、周りの人を巻き込んで場外へ落ちた。


 会場は一瞬静寂に包まれ…… いっきに湧いた。


「うぉぉおおおお!」

「すげえええええ!!」


 クリスは今の一撃で数十人を場外にした。

 今の一撃でやばいと判断した者は勝ち残るためクリスから離れた。

 が、クリスに飛びかかる勇敢者がクリスに弾かれ、それの巻き添いを食らう形で数がどんどん減っていった。


 立っていたのはクリスを含め2人で、試合終了となった。


 前代未聞の勝ち方でクリスは一躍有名人となった。



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