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小さな魔王さま  作者: maria77
第2章  
17/17

魔王さまと魔剣士

昼間に見たあの男。

リアは勇者だと言っていた。



「久しいのうリックスよ、それともヴァンダールか?」



リアはくすくすと笑いその男を見据える。

そのリアの言葉に男は眉をひそめて静かに礼をした。


「申し遅れました、今の私はサライエ・サイラス・ボル・ケルビムです」



男の口調はとても爽やかだが目が笑っていない


「そうそう、リックスもヴァンダールも我が殺したのだな」



リアはとても楽しそうに話す。

リックスもヴァンダールも聞いたことがない名前だ。


「ええ、そうですよ、二人ともあなたの魔力につぶされてしまった」



サライエは口を歪めて答える。

ルイトはこの二人の空気に耐え切れなくただ突っ立ってるしかなかった。


「ところで、ここへは何しに来たのだ?」


「あなたには関係ない事です」


「今回の勇者はとても愚かだな」


「なんです?」


「そなた剣はどうしたのだ?勇者の剣ではないと我を倒すことはできぬぞ」


「っく!!」


サライエはまだ俺たちが何をしようとしたか知らないらしい。

知らなくていいだろう。

処分しようとしたなんて口が裂けても言えない。

そう、口が裂けても...。




「見物していくか?もう少し力を加えれば粉々だ」


リアはテーブルに置いてあったものを指をさして教えた。

サライエはリアから一瞬目を離して奥のテーブルを見る。


「さっきから何を言ってるんですか?いい加減にしないと怒りますよ」


サライエはリアを睨む。

この期におよんで何を言うのかと怒っていた。


「今回の勇者は馬鹿で助かる」


リアはニヤリと笑い剣を見る。


「ん!?」


リアは剣を見て首をかしげる。


「はて、この剣はこんなに黒かったのかの?」



俺もその剣を見るが...なにが起きたのか確かに黒い。

先ほどは汚れていたが白く輝いていた。

だが、今はどうだ。


刀身も黒く柄も黒い。

そして禍々しい。

なんだこれは!?


「のう、ルイト、これはこんなに禍々しく黒かったかのう?」



こっちが聞きたいぐらいルイトも驚いていた。

コレクションにしようと思っていたが先ほどの神々しい光がない。



「なにを2人で話してるんですか?」


「そなたは一旦帰るが良い、面倒だ」


「そうはいきませんよ、私は勇者であなたは魔王です。ここで倒さないといけません」


「どうやって倒すのだ?」


「そうですね、今はケルビムの剣がありませんので今は魔力のみですが」


「魔力でならそなたはまた死ぬぞ、そなたの前の勇者もそれで死んだのだからな」


「くっ!!たしかにそうですが、剣があればあなたなんて楽勝で勝てます」


「ケルビムの剣はもしかしたらもう戻ってこないとは思うがな」


「なにを!!」


「今ここでそなたを殺してしまったらとても罪悪感が残る」



サライエは悔しそうに顔を歪める。



「それに我は今、勉強中ゆえに人間は殺さぬ」


「は?」



サライエはリアが言ったことに不思議そうに顔を向ける。




「我はここにいるルイトの家にお世話になっている。人間の生活を勉強しておるのだ」


「勉強って、あなた魔王でしょ?人間の事知って皆殺しでもしようとしてるのですか」



サライエの言い分はわかる。

俺も初めはそうだと思ったからだ。

けどリアは本当に人間を理解しようとしている。

プライドの高いリアが魔力制御のチョーカーをつけてるんだ。


サライエの言葉にイライラしたルイトだったがこいつには何を言っても無駄なような気がした。



「うむ、そうだな、以前の我ならそう思ったであろうがそなたは知っておるか?人間が陽なら我等魔族は陰の存在だ、それらの均衡が崩れるのはこの世界の崩壊になる」


「魔王が世界を気にするんだね」


またもサライエはリアに不思議そうな目を向ける。


「世界の王の一人だから考えなくてはいけないだろう」


「だからって人間を殺さないって意味が分かりませんが」


「そなたも勇者の記憶があるだろうから覚えているだろう、この世界には魔王領は一つではなく3つ分かれていた。なんで滅びたかわかるだろう」


歴史書にもたしかに載っている。

今から8千年前ぐらいか、魔王領は3つだった。

フロンタン領、ヴァルダヴィ領、そしてカルヴァトロス領。

そのうちの2つの領土が一夜にして焦土とかし、2千年間その火は燃え続けた。

そして魔族領は1つとなり、焦土となった土地は今は魔族を守る森となったという。

2つのどの領土が消滅したかは人間の歴史書にも載っていない。

ましてや、理由なんて知りもしないだろう。



「...っち、今回は見逃します、ですが私はあきらめません、今度はちゃんと剣を持って戦います」


「...剣のう」



リアは気まずそうにチラッと真っ黒に染まった剣を見る。



「絶対に私があなたを倒して見せます。それまであなたは誰にも倒されてはいけませんよ」



サライエはそう言い家を出てしまった。






「...」




しばらく沈黙が続いたがこのまま黙っていられなかった。




「この剣どうしたらいい?」


「うむ、もうこの剣はケルビムの剣のような魔王を切る力はない」


「へ~、それは良かった」


「けれど、高密度の我の魔力を吸い取り魔剣になってしまった」


「ま、魔剣ね」



何かケルビムの剣って言葉よりかっこいい。

黒く禍々しい剣を見る。

確かに勇者の剣っていうより魔剣ってかんじだな。




「素材はケルビムの剣、それに我の魔力を存分に吸い取った。これ以上の最強の剣はないだろう」


「え!?」



そんなにすごいの?




「そなた今日から魔剣士になったな」


リアはにっこりと俺に向かって笑った。



「魔剣士...」


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