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13 青春十八切符って使ったことない


 とうとう世界を救う旅が始まりを告げた。

 と、言うとものすごくかっこいい感じがするのだけれど、実際にはそんなに壮大な旅という感じではなく。と大規模な旅行みたいな感じの出発になってしまった。

 と、言うのも馬車が数台に前後をブラキウムさんが厳選してくださった騎士の方々で固めると言う移動方法だからである。……参勤交代かな?


 国に残るシュルマさんやブラキウムさんに見送られた馬車は、幼女を乗せているためか通常よりもゆっくりとしたスピードで進んでいるらしい。

 通常のスピードがどんなものかわからないから何とも言えないが、これ以上のスピードで揺れられると酔いそうなのでありがたい。


「休憩は多めにとる予定っすけど、もし気持ち悪くなったら言ってくださいね」

「はーい」

「お、いい返事すね! セイラちゃん」


 ルクバト君とせいらちゃんはすっかり仲良しさんだ。

 やっぱり子供ちゃんは外遊び大好きなんだな。出会ったその日に中庭で全力鬼ごっこで意気投合した結束力はすごい。

 子供追いかけるのって大変じゃない? 小さいからどうしても中腰になるし、意外と足が速い。ルクバト君が居なかったら絶対筋肉痛になってた。

 息切れ中アルヘナ君にはかなり呆れた目を向けられたが、仕方ないだろう。高校卒業して以来の全力ダッシュだったんだ。もうしたくないが、せいらちゃんがとびきり楽しそうだったのが唯一の救いか。


 とにかく、この馬車には私とせいらちゃん、そしてルクバト君の三人が乗っている。

 子供連れの長距離移動は大変って言うけど、彼のおかげでかなり楽だ。感謝の気持ちしかない。これならもしもの時のためにシュルマさんが持たせてくれたおやつも節約できそう。


「小さい子と仲良くなるの上手いね」

「弟と妹がいるんで。アイツらのちっちゃい頃みたいで楽しいっすよ」

「弟いるの? せいらも弟いるんだよ」

「お、じゃあお姉さんなんすね」

「えへへ」


 可愛い空間だなぁ。

 こっちに来て以来、随分心が洗われる機会が増えた。その内私、浄化され過ぎて消滅するんじゃないかな。


「ななちゃんは? 弟いる?」

「ううん。私はお姉ちゃんがいるよ」

「そうなんだ」


 あの人は奔放な人だったし喧嘩こそしなかったけどそこまで仲良しではなかった。

 そこに関しては別に何の感情もないので、どうということもないんだけど、あんまり兄弟の話とかしてせいらちゃんがホームシックにならないかだけが心配。


「レグルスくんたちは弟いるのかな」

「あー。レグルス王子にはお兄さんがいたっす」

「おにいちゃんがいるの?」

「うーん。ちょっと難しいんすけど、今はいなくなっちゃったんすよ」


 おっと。これ踏み込んでいいやつ? ルクバト君が知っているってことはお城では有名な話なのかもしれない。でも幼女に話すにはちょっと重めの話だね、今詳しく聞くのはやめておこう。

 このくらいの子ってどこまで人の話を理解してるんだろう。自分がこのくらいの時のことなんて何にも覚えてない。でも正直せいらちゃんかなり賢い方だし何かしら雰囲気くらいは察しているんじゃないだろうか。

 レグルス王子たちは私たちの一つ前を走る馬車に乗っている。休憩の時に会おうねとせいらちゃんが約束していたが、その休憩もまだ先だ。


「いなくなっちゃったの?」

「はい。でもアルヘナさんは一緒に育った兄妹みたいなものらしいっすよ」


 イクリール君の時も思ったが、王家には色々あるんだろう。それこそ私にはわかんないような何かしらが。

 年々人様の事情にわざわざ首を突っ込みに行かなくなるよね。そういうのは若い子の特権なのか。年を重ねるごとにそこまで人に向ける情熱が薄くなるのか。

 こうしてみるとゲーム内では結構語られてない話も多いんだなぁ。覚えていないだけかもしれないけど。……流石に好きだったキャラのエピソードは覚えてると思いたい。でも五年前の記憶だしなぁ。


「それに今は隊長もいるしイクリール様もいるんで、皆でレグルス王子を支えてるっす」

「そっかぁ」


 話を聞いてぽかんと口を開けて頷いたせいらちゃんは正しく理解したのかしていないのか。

 私個人としては色々あったが良い人に囲まれたんだなという感想しか生まれなかったが今のこの子は何を感じたんだろうなぁ。ゲームの十五歳のせいらちゃんならきっと寄り添おうとするだろう。

 そんなことを考えていたら不意に馬車が止まった。


「もう休憩の時間?」

「いや、流石にまだのはずっす」


 外から人の話す声がする。何かトラブルがあった?

 わけもわからず窓の外を覗こうとする私を制しルクバト君がスッと立ち上がって扉を見つめた。


「ちょっと、動かないでくださいね」


 ひそめた声と腰に下げた剣に伸ばした手。明るい彼もちゃんと騎士だったのだと実感しながらも思わずせいらちゃんを抱き寄せる。

 何が起こっているのかわからないまま、馬車の扉が開いて、そこにいたのは。


「すまない、こっちに乗せて貰ってもいいかな?」

「レグルスくんだ!」


 え、王子何してるの?


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