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第59話閑話 装備品


「やっと出来たわい!」


 どっこいしょと、凝り固まった腰と背中、肩周りをほぐしながら、自分の作った物を見る。


「あやつの普段のステータスが低すぎて、金属系の防具は無理。そのくせ本気の戦闘になると7000を超えるとか、全く舐めすぎじゃわい!」


 本当に困った神じゃ。


 しかし、難しければ難しい程ヤル気が出て来るのも、確かな事じゃ――腕がなるわい。


 今回の防具は、要所要所で金属系の素材を使いながら、竜系の素材と王馬のたてがみを編み込んだ逸品じゃ。


 正直、今までで一番と言っても良い程の出来じゃろう。


 他の者の防具と、旅服は作り終えた。

 魔王の武器とネオンの武器は、今後必要な時にまた作るとして、サーシャの嬢ちゃんと徹の武器も作らなければならん。


 嬢ちゃんのほうは、要望も聞いてあるから問題ないとして、問題は徹の方だ。


 あやつのステータスを考慮して作らないと、持てないとか、振ったら壊れたなんて事になるじゃろう。


 まあ普通に考えれば、普段用と、化け物時用のふた振り作れば良いじゃろう。


 確かステータスが低くても、ショートソードは問題なく振れるらしいから、軽い金属であるミスリルで一振りは作り、問題は、化け物みたいにステータスが高い時じゃな。


 ステータス7000で、振って、叩いて、切って、壊れない武器なぞ早々思いつかんが。


 さてどうしたもんかのう……。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ゴドフに新装備を渡され、着心地はどうかと聞かれ、問題ないと答えると、ならば次は動いているところじゃな!と言われた。


 そんな訳で、新装備を全員が装着して、適当に受けた冒険者のクエストをこなす事にする。


 俺の装備は、竜の皮を鞣し王馬という魔獣のたてがみを使った逸品だそうだ。伸縮性に富んでいて、高ステータスでの動きでも壊れないように調整されているらしい。


 簡単に言えば革の鎧である。中世っぽい服の上から付けるタイプの物で、色は深緑、両腕に籠手、両足の脛当て、胴体を守る鎧。


 まあ、以前のとは格が全く違うし、丁寧に鞣されたおかげで柔らかくありながら丈夫で、上品な肌触りの逸品だ。さらに鞣しの段階で魔術的なものも施されており、空気中の魔力を自動で吸収するようになっているらしい。常に魔力を吸収する事で、竜の特性を残したそうだ。

 

 そして一番大切なのが臭わない事だろう。しかもかっこいいし。



 んでサーシャは、ローブ……ワンピース?みたいな服装で、白を基調としておりシスターっぽい・・ていうかthe聖女って感じ。


 左手には白銀のガントレットを装着し、右手には70センチほどの長さのメイスが握られていた。メイスといっても先にくっついているのはトゲトゲ鉄球ではなく、雪の結晶を立体的に伸ばした様な物で先端には刃も付いていた。


 サーシャによると、多少重くても振り回せるので、普通のメイスより柄を長くしたらしい。これにより防御力と攻撃力がアップしたとか。


 まあ全体的に清楚な感じが漂っていて良いのではないでしょうか。



 次にネオンである。ネオンの武器は基本弓で、その弓はもうすでにあるからいいとして、問題は防具の方だ。


 ネオンは防具を着けたがらない。なんか動きが制限されるのが嫌だとか。

 足は素足がいいらしく、地面に問題があるときだけ靴とかブーツ、サンダルを履くらしい。


 とは言え何も着けないのは心配なので、丈夫な短パンとTシャツに、俺とおそろいの革鎧(形はだいぶ違うが)と脛当てを着けている。

 

 全体的に薄着であるが、自前の毛皮があるからいいのだろう。寒かったらマントやローブに包まるにゃ!と言っていたし。



 刃鬼は和服調の服装だ。刀は元々持っていた物でそれを脇にさし、左手には籠手を装備している

籠手はサーシャとは違う物らしく、和服に合うように少し小さめで、落ち着いた雰囲気であった。


今は人化しているから、ステータス的にこの装備でも問題ないらしい。しかし鬼化した時装備がどうなるかわからないから、それの検証もするとの事。

 


 ゴドフはミッドガルでつけていた装備ではない。話によるとあの時にしていた装備は、ドワーフ族の軍仕様で、旅とかには向かないらしい。


 まぁそりゃあそうか。


 とは言えゴドフの武器の大鎚はそのままだ。そして左手には大きめの盾を装備し胴体、両腕、両足に軽めの鎧一式装着している。

 これも金属と竜革を使ってあるそうだ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ミスリル製の片手剣を振るう。

 自身に神の加護を一回掛けた状態で、片刃の剣を下から上に振り上げる。するとなんの障害も無くゴブリンを両断した。


 っておいぃぃぃ!?


 切れ味良すぎだろ!

 

 ショートソードの時は、本気で振り切って、首を切り落とせるかどうかだったのに、この剣だとスパスパ行くんですけど。骨とかの引っ掛かりすらないってどういう事よ。


 恐ろしい。


「ふむ、あれじゃな。剣は素人と言っていた割には剣筋がいいのう。どう思う魔王よ?」


そうですわね、と言いながら腕を組み、右手の人差し指で左の二の腕をトントンと叩く。


「剣術2という特技レベルではないですね。普通に5とかありそうですわ」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ギィン!ギィン!ギィン!と剣戟の音がそこら中に響き渡っている。


 ステータスマックスの神モードの俺の剣と、鬼化して本来のステータスに戻った刃鬼の刀が、何度もぶつかり合い火花を散らしている。


 魔法やテレポートを使わず、最大ステータスでのテスト中だ。


 それにしても純粋な剣術じゃあ全然歯が立たない。

 先程から、大分手加減されているのが分かる。

 さすがに刀術8は伊達ではない。


 でも、これはこれで楽しいな。そう思いながら、踏み込もうとした時、


「そこまでじゃ!」


 ゴドフが声をあげる。


「ふむ……。2人とも装備は問題ない様じゃな。後は工房に帰ってから、おんし等の要望を聞いて調整をして完成じゃ!」


「ゴドフありがとな。助かるよ」


 はぁはぁと肩で息をしながら、ゴドフに礼を言う。


「なに、それがわしの使命じゃ。むしろドワーフ族一の幸せ者じゃろう。神に同行し武具を提供し続けるなぞ、今までの神の武器職人が聞いたら、嫉妬で狂うじゃろうな!がハハハハハ!!」



 すると、何故か近場で、シャドーボクシングをしていたネオンが、


「次は私にゃ!」


 と、ヤル気満々だった。


「……ちょと待って、俺は神の加護が切れないとステータスの調整が出来ん。刃鬼は?」


「人化を行う為には、もう少し時間が欲しいですわ」


 刃鬼に声を掛けると、時間が必要だと言う。

 鬼化している時と、人化している時とでは、角や爪、瞳等、異なっている部分がある。

 それを変化させているから、意外に人化や鬼化は大変らしい。


「えーと、じゃあサーシャと戦う?」


 と、ネオンに聞くと、


「刃鬼と戦いたいにゃ!」


 俺の発言で、一歩前に出たサーシャが、ネオンの発言を聞いて若干凹んでいる。

 まあ、ネオンは自由だからな。


「つっても、今の状態の刃鬼と戦っても勝てないよ?」


 ネオンは顎に手をやり、こてっと首を傾げ、良いこと思いついたにゃ!的な顔で、


「トオル!にゃんとかするにゃ!」


 んな無茶な、と無理難題を突きつけてきた。


「ネオンさん。神にも出来る事と出来ない事があるんですよ?」


 とネオンに向かって言うと、

 

「にゃんとかするにゃ〜!」


 と地団駄を踏みながら、俺の首に両腕を掛け、子泣き爺のようにイヤイヤしている。


 まあ、こんな感じで時間が経てば、俺の神の加護も解けるから、刃鬼じゃなくて俺で良いだろ。

 とネオンと遊んでいると、


「徹様、戦闘用の役割でも、ネオンにかけてあげたらよろしいのでは?」


 と言ってきた。


 …。

 ……ん?


 ……そう言えば、ゲーム中そんな機能あったな。


 魔王とか聖女とか神の武器職人とかの、世界を運営するための役割ではなく、戦闘用の役割を付加することが出来た。


 これは能力やステータスを上げる事が出来るシステムで、自身が運営している世界を旅する時に、NPCをお供にした時の救済措置だ。


 そもそもNPCのステータスはそれ程高くはない。

 高くても、今のサーシャやネオンほどであろう。

 そうなると、邪神との戦闘等で簡単に死んでしまうから、気に入ったキャラと旅をするためには、このシステムは必須であった。


 よくよく考えてみると、普通に聖女とか神の武器職人とかの役割を変更する事が出来ていたから、戦闘用の役割付与も可能そうだな。

 

 よし、やってみるか。


 と、試してみようとしたところ、物凄い殺気を感じた。

 バッっと振り向くと、誰もが惚れる様な笑顔をこちらに向けているサーシャが居た。


 やべ!殺される!?


「神崎さん。まさかそんな権能が有るのにも関わらず、私達に使わなかったんですか?」


 笑顔の裏から、恐ろしい声がまとわりついてくる。


「いや、あの、すいません。普通に、わ、忘れてました!」


 笑顔から真顔になりジト目に変わって、ジトー……という効果音が付きそうなぐらい見られている。

 背中と脇から冷汗がヤバい!


「ハア、まあ今まで無事だったから良いですけど……。そういった能力は忘れないようにしてくださいね?」


「はい……すいません」


 ――まあ呆れるはずだよね。


 実際、ミッドガルでの戦闘だって命の危険が無かったわけではない。

 今までは、たまたま無事に過ごせて来れただけで、リスクを軽減するのは当たり前の事だ。

 戦闘用の役割をちゃんと付与していたら、死の危険や怪我のリスクは随分減らせたはずだ。


 特にサーシャ達は、俺と違って神の権能がある訳でもなく、ステータスだって人族の中では高いとは言え、それはこの世界の常識の範囲内での話だ。


 エグゼバグクラスの敵に狙われたら、抵抗するも間も無く殺される可能性すらある。

 いや、狙われたらほぼ確殺だろう。


 それを忘れていたとか……このミスはさすがにダメなミスだよね。


「すみませんでした」


 取り敢えず、自主的に土下座をする。

 それを見たサーシャがため息を一つ付き、


「神崎さん、一応言っときますけど、私たちの事じゃなくて、貴方の事ですからね?仮に、私とネオンにそれが掛かっていたら、エグゼバグとの戦闘はもっと楽になっていた訳ですよね?」

 

「まあ、確かに」


 実際に、エグゼバグとサーシャ達が戦うかは別にしても、心配事が減ればその分楽になるのは確かだな。


「最悪、私やネオンが死んでも、その代わりは居ますけど、貴方の代わりを務められる人は居ないんですから、自重して下さい」


 と、自分達の事ではなく神の心配をしてきた。

 なんだかんだ言って、お前も刃鬼ばりの忠誠心だな。


 なら毎日の様に頭を踏んづけてるの何とかなりませんかね?


 え?それは御褒美だろ?

 違いますー。僕はそんな変態じゃありません。


 ……ほんとだよ?


「ま、まあ、大事になる前に気づいて良かった。と言う事で、戦闘用の役割の検証をしましょうかね」


 と正座をしながら言うと、サーシャが、それをお前が言うの?という目でこちらを見ていた。


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