第57話閑話 冒険者のお仕事2
荷運び用の馬車には2体のオーロックスが横たわっている。
流石にオーロックスが大き過ぎてこれ以上乗らん。
乗らなかったオーロックス達は、便利なアイテムボックスにぶち込んだ。
「じゃあネオンと刃鬼は、この辺で討伐してて。俺とサーシャはオーロックス納品して来るから。終わったら、空に向けてボム撃つからそれ目印で集合ね」
「わかったにゃー!」
「お任せ下さい」
ネオンは、手を大きく振りながらヤル気満々で、刃鬼は静かにヤル気満々だった。
つまりこの周辺の魔物は死ぬ。
刃鬼達と別れ、馬4頭に頑張ってもらいながら馬車を引いていく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一時間ほどでロムルスに帰って来れた。
途中で二体のオーロックスをアイテムボックスに入れ、馬車のスピードを上げ、街が近くなってからオーロックスを出した。
最初からこうしとけば良かった。
そんな事を考えながら、そのまま冒険者ギルドに向かう。
ギルドの前に馬車を止め、人が居ない冒険者用カウンターに向かう。
「すみません。オーロックスを討伐して運んで来たんですけど、どこに運べばよろしいですか?」
朝クエストの受理対応してくれた、おねーさんがびっくりした顔で、
「えっと、はい。ご案内いたします。どうぞこちらへ」
とギルドの正面玄関から一旦外に出て、裏の搬入口を案内してくれた。
この先は、解体する場所や、倉庫になっているらしい。
「そういえばカトライナさんって今居ます?もし居るなら、ここに来てもらってもいいか聞いてもらっても良いですか?」
「わかりました。ギルド長は部屋で書類関係の仕事をしていたはずですので、ちょっと聞いてきます」
「お願いします」
カウンターのおねーさんが、パタパタと足早に戻って行った。
搬入口は馬車も入れる大きさで、とりあえずそのまま中に入る事にする。
「すいませーん。オーロックス持って来たんですけど……」
すると奥から、見た事がある風貌の男が出てきた。
サーシャと目を合わせ、視線で会話する。(どっかで見た事あるんだけど……?)(私もです。どこでしたっけ?)(どこだっけなー……。あ!アルスメットの納品カウンターのクマさんに似ているんだ!)
「ほう、久しぶりの解体作業か……どれだ?」
相変わらず、周囲を威圧するクマさん(※人違い)その威圧を掻い潜りながら、荷台に被せたあったシートをどけ、二体のオーロックスを見せる。
「ふむ。傷がほとんど無い上に、仕留めたばかりの上物か。ちょと待ってろ、台車を持って来る」
台車を取りに行こうと、クマさん(※人違い)がギルドの奥に向かって行ったその時、奥の扉が開いた。
「お待たせしました。神崎さんどうなされました?」
扉を開けたギルド長が、俺たちの姿を確認し声を掛けてきた。
「すみません。お呼び立ててしまって」
「どうぞお気になさらず。って!オーロックスですか仕事が早いですね!」
馬車の荷台に目を走らせ、少し驚いた反応を示す。
「あー。ちょっとその事なんですけど、ちょと相談がありまして。これから起きる事を、出来るだけ黙っておいてもらいたいんですよ」
神の目を発動しながら、2人を見据える。
「うん?まあ、私は構いませんよ。そんな事を言うぐらいですから、盗んできたとか人様に迷惑のかかる事ではないでしょうし」
「ふむ?……まあものにもよるが、俺も基本は黙っていよう」
――嘘はついてなさそうだね。
まあ言いふらされたら、この街出れば良いだけだし、神崎パーティーは今、刃鬼というボディーガード、ネオンという索敵、サーシャという回復兼バッファー、ゴドフという防具担当が居て、俺が命を狙われても早々殺される事は無いだろう。
というか、権能を隠して馬車で往復するのが面倒臭いだけなのだが、冒険者ギルドに能力を伝えといた方が、後々良い気がするし……。
「えっとですね。オーロックスがまだ26体あるんですよ。んで、ここに出しても良いですか?」
クマさん(※人違い)とギルド長が、こいつ何言ってんだって顔している。
「えっ……と?運び手が欲しいと言う事ですか?」
カトライナさんが、自身の常識と合わせて、あり得る予想を立てて来る。
それに対して俺は、首をフルフルと横に降る。
「……じゃあ何だ?今持って来ているって事か?」
クマさん(※クマ違い)が、ぶっとい腕を組みながら、訝しげな眼でこちらを見ている。
「まあそうなりますね。ここに出しても良いですか?」
と、少し広いスペースを指差す。
「まあ構わんが……」
とりあえず5体ぐらいでいいか?
右手を前に出し、魔術的な演出を交えながら出す事にする。
パリっと電気を走らせた後、少し水蒸気を発生させ、更に地面を少し凹ませる。
その凹ませた部分に一体ずつ、計5体のオーロックスを、フッという感じでアイテムボックスから出した。
ふう……。この演出結構疲れるな。
横のサーシャを見ると、何やってんだこいつ?みたいな視線をこちらに向けていた。
いや、凄腕の魔術師って認識されているから、魔術で出しました。的な雰囲気を醸し出しのだが――失敗したかな?
そう思いながら後ろを振り返ると、目をまん丸く開いて、口が半開きになっているカトライナさんとクマさん(※熊違い)がいた。
◆◆◆
都合28体のオーロックスを納品し「んじゃあまた行ってきます。」と言ったら。
半泣きになったカトライナさんが、「今日と明日は食肉系の納品は勘弁してください!」と頭を下げてきた。
なんでも、この量を解体するのはクマさん一人では到底出来ず、商業ギルドから人員を雇って、フルで対応しても、今日中には終わらない……どころか明日中でもキツイらしいので、持って来ないで欲しいとの事。
こういった食肉系の納品は、解体してあれば別なのだが、素人が変なところで解体して、雑菌だらけになるのも困るので、なるべく頭を落とし腹を掻っ捌いて、内臓を取り出した状態での納品が好ましいらしい。
まあオーロックスみたいに、内臓も食べれるやつはそのまま納品する方が良いらしいのだが、いかんせん数が多すぎたらしい。
知らんがな。
出来れば、今度からは何を狩って来るのか教えて欲しいとも言われた。
まあそんな事言われても……いやあれか、アイテムボックスに入れといて調節すれば良いか。
アイテムボックス内は時間止まっているし。
と、てんやわんやしているギルドを横目に、ネオン達の元へと戻るのであった。




