第35話 怪盗ゴット三世
あの後、早めの晩御飯を食べて、宿屋に帰った。
ネオンは終始ご機嫌で、にゃーにゃー言っていた。
と言うわけで、神の武器職人の役割奪還作戦を開始します!
サーシャには、神専用武具を取って来るとしか言っていない。
あんまり心配させるのもアレだしね。
まずは専用武具を取ってきますか!
まあ特に言う事はないです。
テレポートで飛んで、アイテムボックスに入れて終了です。
ただ、装備を一瞬で入れ替える換装システムを構築した!
というか練習した。
意外に出来た。
以上です。
と言う訳で、3種類の装備状態に分ける事にした。
今までの従者装備に、座標の腕輪・三重のイヤリング・重複の首飾りを装備した通常モード。
四神装備の戦闘用モード。
通常モードに隠匿のローブと浄化の錫杖と、剣鬼の剣を装備した神モードの3種類になった。
で今は神モードです。
何せこれから犯罪に手を染める訳ですし、バレたくありません!
基本アクセサリー3種類は外さないようにしよう。
今までアイテムボックスは触れている事が前提だったが、座標の腕輪は思った通り、離れた物を出し入れすることが可能になった。もちろん距離の制限はあるのだが。
重複の性能は後日確かめるとして、並列思考が便利過ぎる。
別に人格が3人プラスされるとかそんな変な事はない。
なんと言えば良いのだろうか?よくテレビとかで、右手と左手を違うことさせてゲームをしたり、脳の活性化につながりますみたいな変な動きをさせられるが、アレが簡単にサクサク出来る感じと言えばいいのかだろうか。
片手だと難なくできるけど、もう一方の手が増えると途端に出来なくなるアレね。
片方に集中すると、もう片方が釣られちゃって上手く出来なくなる訳だけど、それが両方に集中できるようになる感じだ。
まあそんな訳で、今は六色の杖で、アイテムボックスに魔法を補充しながら、神の目を常時発動し周りを警戒している。
ポロッカ火山の山頂付近から、ランドギス城を眺めテレポートで飛ぶ。
ランドギス城の屋根にしがみつき辺りを窺う。
近くから見ると、その屋根周辺に施されている装飾一個一個が、緻密で職人の腕を感じさせる。
いい仕事してますね~。
まあこの手の良し悪しはわからないんだけど。
特に問題ないようなので、近くの窓から城の内部を確認し、ドワーフがいない事を確かめ内部に侵入する。
ちなみにこの間、ガンガン魔法のストックがなされている。
もう夜も遅いからだろうか、城内にはあまり人気……ドワーフ気が無く、目的の場所まで難なくついた。
途中でドワーフの警備兵とすれ違ったが、高い天井の上の方にテレポートで飛んで、その出っ張っている所に足をかけやり過ごす。
すぐにテレポートで逃げれるようにしながら、その豪華な扉をギィっと開け、神の目で確認する。
今日も宴会があったのか、そこら辺に酒瓶が転がり、酒の匂いが充満していた。
目的のギムレットを視界に収め、神の武器職人という役割を剥がす。
役割を剥がしたら、ここにはもう用がないのでテレポートで宿に戻る。
フッと部屋の中に着くと、バッという感じでサーシャが臨戦態勢をとる。
うん?神の加護もかけてるような……。
「――何か御用ですか?」
メイスを持ち、緊張感をもって聞いてくる。
……え?別に夜這いしに来たわけじゃないよ?
「いや御用ていうか。帰ってきただけなんだけど……」
「え?神崎さんですか?」
「うん?あー隠匿のローブか。ごめんごめん!これでどう?」
パッと、換装でいつもの装備的な感じになる。
「ふー……。びっくりさせないで下さい。いきなり化け物みたいのが現れたら、そりゃあ警戒しますよ」
「え?そんな変な感じだった?」
サーシャは腕で額の汗を拭い、首を傾げながらそうですねと少し考え、
「なんか全体的に黒い靄っぽいもので覆われていて、声は女なのか男なのかすらわからず、発せられた言葉をかみ砕いてやっとわかりましたよ」
「まじか!でもまあ、俺って事はわからないって事だよね?」
「まあ、誰なのか想像すら出来ない感じですかね」
まあ神モードで何やっても、神崎だとバレなければそれでいいか。
そういえば、いつもはにゃーにゃ―五月蝿い奴が静かだな。
「ネオンは爆睡中?」
「はい。神崎さんが行ってから、少し頑張って起きていたんですけどね。結局すぐ寝ちゃいました」
「そうか、じゃあ俺らも寝ますかね」
「そうですね。神崎さんおやすみなさい」
お休みと言いながら、ベッドに入り瞼を閉じる。
昨日も夜起きていたからか、割とすぐに眠りの中に落ちていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「神崎さん朝ですよ、起きてください」
遠くでそんな声が聞こえる。
「行くにゃー!」
「がふっ!ごほっ。ネーオーンー!」
俺を起こすときに、ジャンピング・ボディ・プレスを放つ事が気に入ったのか、ネオンが俺の上に乗っかっている。
体を起こし乗っかているネオンを脇に退けると、猫がパソコンの上にやってきて転がり「遊んで?」みたいな体勢で、
「弓とりにゴドフの所に行くにゃ!」
と言い放った、顔がめちゃくちゃウキウキしている。
なにこのペット、めっちゃかわいい。
頭を撫でてやると、うにゃーと言いながらしっぽが喜んでいた。
「その前に、まず朝ご飯な」
「そうにゃ!ご飯も大切にゃ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
馴染みになってきた近くの食堂に行き、それぞれご飯を頼む。
ちなみに、今日発つ予定なので宿は払った。
そのご飯もおいしく頂き、ゴドフの所に向かう。
「ゴドフー!弓とりに来たにゃ!」
ゴドフの鍜治場が見えた途端に走り出すネオン。
サーシャと目を合わせ、少し早歩きになる俺ら。
扉を開けたネオンの第一声が先程の言葉だ。
「ゴドフさんおはよ」
「ゴドフさんおはようございます」
「おうおはよう。獣人の嬢ちゃん調整は終わっておるぞ」
ほれ。とネオンに手渡すゴドフ。
ネオンはそれを手に持ち、目をランランに輝かせながら、弓の弦を引いたり持ち手などを確認している。
「ほへー綺麗な弓だね。どうネオン?」
金属製だけど無骨では無くて、細身で翡翠色した綺麗な弓だ。
こんな綺麗な物を、ゴトフのあの無骨な指で作っていることを考えると 世界七不思議にいれてもいいと思う。
「良い感じにゃ!丈夫そうだししなりも私好みにゃ!」
「ガハハハハ。そうだろうそうだろう、その弓は嬢ちゃん専用だからな!」
その後もネオンとゴドフが少し話して、矢を数十本購入しゴドフに礼を言う。
金額は95万ギルらしい。
サーシャさんのお金から払わさせて頂きました。
僕の借金に加算されます。
「いやーゴドフさん助かったよ」
そう言いながら手を差し出す。
「なにうちも商売だからな!ガハハハハ!」
ゴドフも手を出し固く握りあう。
と同時に、神の武器職人の役割を彼に授ける。
「これからも頑張ってくれよ。期待している。俺たちはゴドフ製の武具を使いたいからさ」
「ガハハハハ、おんしと話しておると、まことにやる気が湧いてくるわい!ミッドガルにこの先もおるかはわからんが、また縁が在れば会えるじゃろ」
確かに……、この先簡単に会うのは難しいか、きっとランドギス城の鍛冶場で鎚を振るうわけだしね。
お互い手を放し、少し後ろ髪を引かれるが旅立つ事にする。
「じゃあゴドフさんまた」
「うむ、おんしらも息災でな!」
「ゴドフさんもお元気で」
「ゴドフありがとにゃ!」
ネオン、ゴドフにお礼を言うのは良いけど、その代金俺が借金して買ったんだからね!?ちゃんと俺にもお礼言って!
俺は鍛冶場を先に出て、ネオンとサーシャが手を振りながら鍛冶場を後にする。
少ししんみりしてしまったが、ロムルスに向かいますか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今、ミッドガルの城門でランドギス城から目抜き通りが続いている正門玄関に向かっている。
つまりミッドガルに来た時に通った城門だ。
今回は食料などの物資を買い込む必要がない。
ミッドガルから出て人目が無くなったら、テレポートでロムルスに行く予定だからだ。
目抜き通りを歩いているのだが、なんかこの周辺の人々が騒しい気がする。
「何かあったのでしょか?ドワーフ族の方々が騒いでいるみたいですけど。」
「確かに珍しいな。おおらかなドワーフ族が緊張感をもって騒いでいるのは……」
城門が見え始めた頃、
「魔獣のスタンピードだー!」
「来るぞー!門を閉めろ!」
「城に知らせたか!?」
「地竜まで居やがるぞ!」
「早く王様に知らせろ!」
「警鐘を鳴らせーーー!!」
外に居たドワーフ達が走って城門を潜ってくる。
そして、ガンガンガンと大きな鐘の音が、ミッドガル全体を包んでいた。
城の方に走っていくドワーフ兵、町中を走り回る住民たち。
城壁の上で右往左往するドワーフ達。
「――どうしますか?神崎さん」
「にゃにゃ?戦わないかにゃ?」
また勝手にイベントがスタートしたよ……。
どうするって答えは一つしかないじゃん!
この流れは、ここで対応しないとミッドガルが滅ぶやつじゃん!
そしたらきっとその流れでドワーフ族も滅ぶんだよね。
おい人族よ。今回はお前等じゃないよな?




