表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/85

第34話 ドワーフ族の今。


「神崎さん朝ですよ、起きてください」


 遠くでそんな声が聞こえる。

 ただ頭も体も起きる事を拒否していて、表層に上がった意識が、また暗く深い眠りの底に落ちようとしたその時、


「にゃー私もやるにゃ!」


 ん?なにを?と声を出さず寝ぼけた頭で問う。


 すると、頬に何かが……っていうか、いつもの慣れ親しんだ足の裏の感触があった。

 そして一拍置いた後、サーシャの体重が足にガッツリ乗って顔が潰される。


「うげっ!ちょ、ちょっと待て、起きるから起きるから―!」


 自身の置かれている状況を一瞬で理解し、すぐさま起きようとするが、踏まれている頭は残念なことにベッドに固定されていた。


 そして視界の端でネオンの目がキラッンと光るのを捉えた。


「にゃー!」


 という掛け声とともにネオンが空中に飛びあがり、無慈悲なジャンピング・ボディ・プレスを俺に放つ!!


「がふっ!」


 カンカンカンカンカン!

 3カウント、サーシャ・ネオンチームの勝ち!


 ―——いつものくだらない朝だった。



 三者三様の体勢で、自分たちのベッドに居る。

 サーシャは腰掛け、ネオンは寝っ転がり、俺は腰をさすりながらベッドのわきに立っている。


「で、今日はどうします?」


「とりあえず夜になったら、装備品は貰っていく予定だけど、それまではミッドガルの町中でも見ようかね。明日この町を発って、すぐにロムルスに戻る予定だよ」


「え?ロムルスですか?メギト王国を通って魔族領に行くのでは?」


「いや、獣人領が少し不安だから、それを確認してからにしようかなと……」


「にゃにゃ!獣人領行くのかにゃ?」


「予定ではな」


「アルスメットからでは駄目なのですか?アルスメットもロムルスも、獣人領までの距離ははあまり変わらないと思うのですが、……わざわざ危険なところに顔を出さなくても良いと思います」


 サーシャの顔から少し複雑な表情が出てきている。

 別に、都市ロムルスが嫌いなわけじゃないだろうし、本当は顔を出したいのであろう。

 育ったところだしね。


「いや、聖女が居なくなって2カ月位経つだろ?ロムルスがどうなっているのか知りたいんだよね。というよりウラヌス教か」


 ゴージャスが馬鹿な事をして、孤児院にひどい事をする可能性もあるわけだし、確認だけはしときたい。

 全然問題ないならば、またアルスメットに戻ってから、馬車で獣人領に行ってもいいわけだし。


「確かに。現在ウラヌス教どうなっているんですかね?」


「……さあ?」


 と、ネオンと二人で首を傾げる。


 というわけで、今後の予定を決めたので、さっそくミッドガルの町中に繰り出すことにする。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ミッドガルは大きすぎて、一日で周るのは不可能だろう。

 ランドギス城周りは、さすがに警備が厳重で、観光的な場所でもないからパスするとして、どこに行こうか考える。


 やっぱりドワーフの町なんだから、武器や防具だろうか。

 俺の剣は、あの剣鬼の剣でいいとしても、防具は神専用武具になかったから、探してみてもいいかもしれない。


 そう考えると、ネオンの武器も買ってあげたい。


 ……そういえば、俺の借金って今650万超えた、のかな?

 サーシャさんに土下座すれば貸してくれるでしょうか。

 そういやシレっと、ネオンの食費とか宿代払ってもらってるな。


 よし今日の夜は、いつもより心を込めて土下座しよう!

 そうしよう!



 何というか鍛冶屋街というのだろうか、そこかしこからカーンカーンという音と、蒸気がもうもうと立ち込めている。

 どこの鍛冶屋が良いのかさっぱり分からないのと、入ったら怒られそうな気がする。


 ネオンは蒸気と戦っている。


「どうしようかね。なんか作られた武器を売っている所でもあると嬉しいんだけど」


「そうですね。ここは売っているような雰囲気じゃないですもんね」


 考えが甘かった。

 ラノベでは、鍛冶屋の工房とお店が一体になっているのが普通だったから、ここまで来てしまったけど、そりゃあ、問屋に卸したり仲買人みたいな人が買うよね。


 鍛冶屋で直接買うなんてことは普通無いか。

 何てことを考えていると、


「何故じゃー!」


 と鍛冶屋街で大きな怒声が響き渡る。


 ……なんか、前も似たようなことがあったな。

 その怒声が響いたところに向かうと、


「だからゴドフさん、ギムレットさんが言っているんですよ。神の武器職人であるギムレットさんの言う事が聞けないんですか?」


「じゃからその理由を聞いておるんじゃ!」


「五月蝿いから目障りなんじゃないんですか?」


「当たり前じゃ!おぬし等がたるんでいるからだろうが!」


「仮にそうだとしても、神に見向きもされなかったじじいが粋がるなよ」


「な、なんじゃと!」


「はいはい。とりあえず伝えましたからね?1週間後にはここを出て行ってください!」


 若そうなドワーフが颯爽と去っていった。

 残されたゴドフは、悔しそうに地面を睨んでいた。


「久しぶりですねゴドフさん」


「ん、誰じゃ!?おお!あの時の人族じゃないか!……はあ、嫌なところを見られてしもうたわ」


 道の往来で話を聞くのもアレなので、この近くにあるゴドフの鍛冶場で話を聞くことにする。

 俺らにはお茶を出してくれた。

 自分には酒を注いでいた。


「にしてもこんな所に居るとはのう。儂がこの町に戻ってきたのもつい最近じゃぞ?おんしらは、あの後すぐにミッドガルに向かったのか?」


「そうですね。確か、5日後位にアルスメットからミッドガルに向かったかな?」


「ほう、ここでなんか用でもあったのか?」


「ちょっとした野暮用、でももう大丈夫かな。そっちはなんか大変そうだね」


「そうじゃのう……もうダメかもしれんな。ドワーフ族は。」


 そう言うと、ドワーフ族的に珍しい自虐的な笑みを浮かべていた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 話を聞くとこうだ。

 

 今代の神の武器職人は、それほど才能もなければヤル気もないらしい。

 ただ神の武器職人になると、それ相応の役職になるらしく、その者は権力を使って遊んでばかりいるとの事。毎日酒を飲み、ドワーフ族の綺麗どこを一手に集め、税金で宴会を催すばかりで、自分の鍛冶の能力を上げたり、良い作品を作る気はないらしい。


 何故なら、武具を奉納するという事は、神の武器職人という役割を返納することになるので、今の生活を捨てなければならない。

 実は何代か前からその傾向はあったのだという。

 ただ、ここまであからさまにやっているのは元馬鹿弟子だけだ!とゴドフは憤っていた。


 それでも、ドワーフ族の誇りである神の武器職人なのだから、己を磨けとゴドフはその者に常々言っていた。何故なら、その者はもともとゴドフの弟子で、住み込みでずっと教えていたのだ。


 だがしかし、神の武器職人になってからは王宮の鍛冶場に行ってしまい、なかなか会う事が出来なかった。その為ゴドフは、会った時には口煩く言ってきたのだが、遂に相手が、実力行使でゴドフをミッドガルから追放したらしい。



「……」


 サーシャがいつもよりジト目で「おいお前、しっかり仕事しろよ」と語っていた。


 いや、言い訳させて。


 なんせ邪神を倒せる最強装備がもうあったから、神の武器職人の必要性が低く、任命する際はメチャクチャ適当に決めてた。


 ―—うん、まごうことなき俺の所為だね。


 ごめん!ゴドフ!


 声を出して謝れないけど、本当にごめん!

 だってこんなことになるなんて思わないじゃん!?


 って事はあれか?ドワーフ族が全体的にヤル気がないのは俺の所為か。

 

 神の武器職人に任命されるのが、技術があるとかヤル気が有るとかじゃなくなっている訳だから、頑張ってもしょうがないと、種族的に思わせてしまっているわけだ。


 いや、ほんとそんなつもりじゃなかったんだけど……。

 なんか罪悪感が半端ないな。

 

 俺は冷汗をダラダラ流しながらゴドフの話を聞いていた。


 よし!この問題は今日中に何とかしよう!そう心に決めるのであった。



「そういえば六色の杖はどうじゃ?」


 心に決めている間に、ゴドフに話しかけられてハッとしてしまった。


「凄い助かってるよ。正直これがなかったら何度か危なかったと思う」


 正直な気持ちを伝える。


「そうか。おんしと話しておると、心が軽くなるわい」


 ガハハハハと笑い、さて、今日からまた頑張るかのう!とヤル気が戻っていた。


 そうだ、ついでにこれも聞いとこう。


「そうだ、話は変わるんだけど、良い弓矢とかある?そこの獣人の子に渡したいんだけど」


 いきなり話を振られて、暇そうにしていたネオンがにゃにゃ!?といすから落ちた。

 嘘だろおい!猫ってそんなどんくさかったっけ?


「そこの嬢ちゃんようか?まあ無くはないが調節に少し時間がかかるぞ。」


「じゃあお願いしていいかな?ちなみにいくらぐらい位になるかな?」


「そうじゃのう……まあ100万はいかんじゃろ。」


「えーと、サーシャさんお金を貸してください」


「いいですけど、今いくらぐらい借りているかわかってます?」


「はい。これで約750万程になるかと……」


「分かっているならいいですけど、そろそろ、本格的に稼がないとまずくなってきましたね」


「弓買ってくれるにゃ?にゃら、それでバンバン獲物獲るにゃ!」


 ネオンがわーい、と手を上げて喜んでいる。

 まあこれでも弓の特技レベル5あるし即戦力だよね。

 

 採寸とステータスを教え、何個か質問を聞いたゴドフは、明日の朝には何とかしとくわい!ガハハハハと笑っていた。


 よし、もう今日は宿に帰って休もうかな。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ