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東方幻人録  作者: ポカ猫
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第16話 黒瞳異変後編、父との誓い

お待たせしました!

黒瞳異変後編です。

次回からは日常パートになります


では、本編をどうぞ!

「義人さんは……私の大切な人なんです」

「ふーん、それで?」

「だから……力ずくでも返してもらいます!」


 義人さんの体を何としてでも取り返さないと……


「幻想郷を支配するにはこの時以外ありえない!その野望のためにはこいつの体と能力が必要不可欠なんだ」

「あなたの勝手な野望のために義人さんを巻き込まないでください!」

「いやだね。しかし、こいつの能力は本当に素晴らしい。こいつは思いつかなかっただろうがこんなこともできるんだからな」


 グランが自分の右目を手で抑え、その手を放すと、義人さんの右目が魔理沙さんの目に変わっていた。


「こいつの能力は体全体を模倣させれば、そいつの身体能力をすべて使えるわけだが、目だけを模倣すると能力は使えないが、自分の身体能力を向上させることができる」


 そう言って、グランは今度は左目を霊夢さんの目に変化させた。


「これで魔理沙とやらのスピードと、霊夢とやらのパワーを貰い受けたことになる。そして、この箱に能力を込めると……」


 グランの持っていた箱が刀へと姿が変わった。


「剣術なら、負けません!」

「遅い……」


 妖夢が楼観剣を引き抜く前に、グランが妖夢の後に回り込んだ。


「そんな速さじゃあ俺を倒すなんて無理だよ!このまま死にやがれ!!」


 グランが刀を振り上げ、妖夢はもうダメだと思い目をつぶった。


 しかし、刀は振り下ろされず、鉄同士がぶつかる音がした。

 妖夢がゆっくりと目を開けると、そこには和服を着た義人によく似た男がグランの刀を自分の刀で受け止めていた。


「さすが義人の体を使っているだけある、刀の筋がいい……」


 男がグランの刀を弾き、腰を抜かしてしまった妖夢に手を差し伸べる。


「お嬢さん大丈夫かい?」

「はい、助かりました……ありがとうございます」

「俺の名前は市井海斗、義人の父だ。それと、ここは俺に任せてくれないか?子供を助けるのは親の仕事なんでな」


 えっ!?義人さんのお父さん!?どうりで雰囲気が似てると思った……


「ていうか、お嬢さんには手を出さないでほしい。息子をこんな風にした奴を許すわけにはいかないんだ」


 海斗の気迫に押され、妖夢は頷く事しかできなかった。



「グランとか言ったな…… 義人にはな、昔から女性を傷つける事はするなと教えていたんだ。そして、義人は気絶させたりはするが、あいつは今までずっと俺との約束を守ってくれた。それなのにお前は俺の息子の体を使い、その約束を破らせようとした。覚悟は出来ているだろうな……」

「覚悟だ?くだらない事いってんじゃ……」


 グランの真横を燕の形をした斬撃が横切った。


「次は当てるからな」

「クソがァァァ!!調子に乗りやがって!!!」


 グランは刀で目にも止まらぬ速さで海斗を斬りつけた。

 海斗は目をつぶり、それを全て綺麗に交わしきった。


「そんなもんか?次は俺が行くぞ」


 義人……すまない。お前の体、傷つけちまう。どうせ今日で最後だ、許してくれ。


「水燕流、追風」


 海斗がグランに向かって走り出し、刀で3回ほどグランを斬った。

 しかし、グランの体には傷1つ入らない。


「なんだよ?見掛け倒しもいいとこだな〜」


 その時、走り抜けた海斗を追うように、燕形の斬撃がグランを襲った。


「うがあぁぁぁ!!!」


 グランの体から血が吹き出す。


「てめぇ……自分の子供の体になにしてやがる!!」

「義人の治療は幻想郷1の医者がしてくれる。なら、何をしてでもお前を義人の中から追い出すのが先だろ?」


 海斗は刀を構え、次の攻撃の準備を始める。


「水燕流雨の型、村雨」


 すると、海斗とグランの足元に水が現れる、そのまま海斗は刀で水飛沫をグランの頭上まで飛ばす。

 頭上にあった水飛沫が斬撃に変化し、雨の様に激しくグランに突き刺さった。


「ハァハァ……容赦がないじゃないか……」

「当たり前だ」


 気がつくと足元にあった水が消えていました。


「有幻覚か……恐ろしいものをつかうんだな……」

「そろそろ出てこい。俺はこれ以上義人の体を傷つけたくないんだ」

「ふざけるな……誰が出るか!幻想郷支配のためにこいつの能力が必要なんだ!!」


 なかなかしぶとい奴だな…… やはり……


「次でお前を仕留める。お前も俺と刺し違える覚悟で来るんだな」


 そう言い、海斗は刀を鞘に納め、立ったまま瞑想を始めた。


「何呑気に寝てんだよ!叩き斬ってやるよ!!」


 グランが海斗の脇腹を狙い、斬りかかった瞬間。

 海斗がグランの刀を弾き飛ばした。


「なっ……!」

「お前、カウンターって言葉も知らないのか?お前の敗因は2つだ。1つはすぐに刀を捨て、殴り合いの勝負に持ち越さなかったこと。2つ目は相手が俺だったことだ」


 海斗はゆっくりと流す様に刀を滑らせた。


「水燕流、舞風」


 刀から半透明な燕形の斬撃が現れ、グランの体を通り抜けていった。そして、斬撃はまるで舞を踊るかの様に行ったり来たりと、グランの体を往復する。


「うああああぁぁ!!!やめてくれ!死んじまうよ!!!」


 グランが叫ながらその場に倒れ込む。


「これは対妖怪用の剣術、幻覚で相手の精神を切り刻むんだ」


 グランが口を開け、その中から黒い霧が出てきてそのまま溶ける様に消えていった。


「終わったか…… 悪かったな義人、今永琳先生の所に連れて行くからな」

「海斗さん!!」


 妖夢が義人をおぶった海斗を呼び止める。


「あの……義人さんは……」

「もう大丈夫だよ、心配かけて悪かったね」


 すると、今度は霊夢、魔理沙、アリスの3人が神社の鳥居をくぐり、海斗に近づいてきた。


「3人のお嬢さん方、もう終わったよ。俺は義人を永琳先生の所で治療をしてもらってくるんで、宴会とか始めちゃってください」


 そう言って海斗は永遠亭に向かった。



「永琳先生、お久しぶりです」

「あなた……海斗ね?久しぶり、亡くなったって聞いたんだけど?」


 海斗は今までの事情を永琳に話した。


「そう、今日1日でいなくなってしまうのね。せっかく旧友に会えたのになんだか寂しいわね」

「柄にもない事言わないでくださいよ。それより義人の怪我、今からすぐに治して貰えませんか?こいつに言いたいことがあるんです」


 海斗が頭を下げると、永琳が笑いながら頷いた。


「任せなさい、1時間で治してあげるわ。本当はすっごい高いのよ?」

「すみません、手持ちはないんですよ」

「あなたからお金なんて取らないわよ。じゃあちょっと待ってなさい」




「義人、外で待ってる人がいるわ。行ってきなさい」

「分かりました。永琳さんありがとうございます」

「気にしなくていいわよ、ほら行った行った!」


 永琳さんは急かすように俺を永遠亭の外に出した。


「治ったみたいだな、やっぱり永琳先生はすごいな」


 聞き覚えのある声が聞こえたので、そちらの方を向くとそこには。


「親父……!」

「よう……元気になって良かったよ。大体の経緯は分かるな?」

「あぁ……」


 それから親父は映姫さんの所にいた事や、今日1日しか生きられない事、そしてもう俺が死ぬまで会えるか分からない事も教えてくれた。


「なんだ?泣いてんのか?しょうがない奴だな……」

「だって……俺のせいで親父は、たった1回の大切な……」


 すると、親父は優しく俺の頭を撫でてくれた。


「いいんだよ。元々、お前を助けるために使うつもりだったんだよ」

「親父……」

「だから泣くなって!本当にお前は泣き虫だな!」


 親父が俺の髪の毛をクシャクシャにした。


「背……伸びたな…… もう、俺と同じくらいじゃないか。立派に成長してくれて、俺は嬉しいよ……」

「うん……」

「早く逝っちまって悪かったな。お前には寂しい思いをさせてしまった」


親父を見ると、親父の目にも少し涙が溜まっているようだった。


「そう言えば、永琳先生に貰ってきたんだ。一緒に飲もうぜ」


 親父が取り出したのは1本の酒だった。


「お前と酒を飲むのが夢だったんだ……いいだろ?」

「ここは幻想郷、断る理由なんてないよ」


 そう言って親父の注いでくれたコップを受け取り、親父の隣に座る。


「息子と飲む酒が、こんなに美味いとはな……」


 それからは2人で昔話に花を咲かせた。どれもこれもが懐かしい事だらけで、また泣きそうになってしまった。


「もうすぐ時間だ、最後に1つ俺の頼みを聞いてくれないか?」

「なに?」

「俺の水燕流、継いでくれないか?」

「もちろん。ていうか、俺から継がせてくれって頼むつもりだったよ」


 すると親父は笑いながら、そうかそうかと喜んでくれた。


「じゃあ、刀と指南書だ。受け取ってくれ、刀は無名刀だけど許してくれな。俺が最後まで使ってた刀だ」

「あぁ、大切にするよ」


 すると、俺たちの目の前に大きな鎌を持った女性が現れた。


「小町さん迎えに来てくれたんですね」


 親父の口調が変わる程って事は……そういうことだよな。


「義人……これでお別れだ。元気で暮らせよ?体調管理はしっかりな」

「うん……」

「義人……気持ち悪がられるかもしれないけど最後だから言うな。お前の事が大好きだ、生まれてきてくれてありがとう」


 目に涙を浮かべながらも親父は俺に笑顔でそう言ってくれた。


「親父!!俺も…… 俺の事を1人で育ててくれた親父が大好きだよ!俺を大事にしてくれてありがとう……」

「その言葉、最高の土産になるよ……」

「時間だ、行くよ」


 親父がだんだん薄くなっていく……


「今度あの世で会う時はまた一緒に酒飲んでこっちで送った生活を教えてくれよ。じゃあな……」


「親父ー!!!」


 親父と鎌を持った女の人はもう消えてしまった……

 俺は親父が今まで立っていた場所をずっと見つめ続けていた。


「俺が向こうに行くまでに親父が面白がるような事、沢山経験してくる。だから……親父も向こうで楽しく暮らせよ!」

最後まで読んでいただきありがとうございました。

作者まさかの年により書いてて自らが泣くという始末なんでだろう……


次回更新は木曜日になります

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