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第一話 ハム公
ハム公に昨日の記憶はない。
ハム公に友人の記憶はない。
ハム公の記憶は1日で消えてしまう。
ハム公に分かるのは右手の爪と左手のひまわりの種の使い方だけ。
白と茶色の毛並み。
ピクリとする耳。
パンパンの頬袋。
ひまわりの種をハムハムする姿。
ハム公はどう見ても少し大きなハムスターのように見える。
「ひっ、ち、近づかないで!」
近くの村の少女が怯えながら、叫んでいる。
正面には狼のような魔物。
牙を剥き出しにしながら、今にも少女に食らいつこうとしている。
とっとことっとこ。
そこに1匹のハム公。
少女の目の前で止まった次の瞬間、
弾丸のような速さで魔物を頭突く。
そのまま狼の魔物は動かなくなった。
「あ、、、」
ハム公は何事もなかったかのようにその場を去ろうとする。
「ありがとうーっ!ハム公様ーっ!!」
少女がハム公に飛びつく。
ハム公はするりと少女の腕を抜けると、首を傾げた。
「急げっ!あそこだっ!」
血相を抱えた大の男たちが何人も村から飛び出してくる。
「魔物は、、、どこだ?」
息を切らしながら、周囲を見渡す男たち。
そこには笑顔の少女とひまわりの種を齧るハム公の姿があるだけだった。




