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吸血一族の聖騎士  作者: 結城 からく


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第1話 前編

 薄暗い荒野。

 その只中で二人の男が戦っている。


 一方は赤いコートを着た吸血鬼だった。

 端整で若々しい顔立ちだが、その眼差しには数百年……否、数千年の老獪さを滲ませる。

 吸血鬼は高笑いを上げて真紅の槍を振るっていた。


 対峙するのは、白銀の鎧を纏う聖騎士だった。

 聖騎士は何を考えているか分からない真顔で剣を操る。

 迫る槍の刺突は盾で的確に捌いていた。


 壮絶な殺し合いの中、吸血鬼ザックは嬉しそうに告げる。


「聖騎士ダエル・ハートン! 長き生涯において、貴様ほど我を追い詰めた者はおらん! 誇りに思うがいいッ!」


「そりゃ光栄だな」


「なぜそんなに冷めておるのだ!? もっと笑ってみせよ! 最期の戦いを満期するのだ!」


「殺し合いで笑えねえよ。一緒にすんな、クソ吸血鬼」


 ザックの指摘に対しても、ダエルは表情を微塵も動かさない。

 彼の鎧には無数の破損があった。

 そこから多量の血が漏れ出している。

 己の命がもうすぐ潰えることを、ダエルは悟っていた。

 それでも彼は焦りや恐怖を感じず、戦いをやめようとはしなかった。


 刹那、ザックの槍が跳ね上がる。

 穂先がダエルの胸を貫いた。

 ほぼ同時にダエルの剣がザックの首を刎ね飛ばす。

 宙を舞うザックの生首が驚愕する。


「ぬおっ」


 ダエルがザックの身体を押し倒し、その心臓を滅多刺しにした。

 さらに転がった頭部を剣で串刺しにして地面に縫い留める。

 吐血したダエルは淡々と告げる。


「これで……もう、お前は再生できない……俺の、勝ちだ」


「何を言っておる。貴様も間もなく死ぬではないか。つまりこれは相討ちだ」


「いや、俺の勝ちだ」


「違う。相討ちであろう。なんなら我の勝利である」


「どういう理屈だよ」


 ため息を吐いたダエルがその場に倒れ込んだ。

 頭部を串刺しにされたまま、ザックは掠れた声で述べる。


「我々……吸血鬼は不滅である……貴様の死後、いずれ世界を統べるはずだ……」


「そうかい。なら俺が止めてやる。何度でも蘇って皆殺しにする」


「クハハッ、貴様の方がバケモノではないか」


「人間ってのは欲深いもんでね」


 曇天の空が淡く光る。

 厚い雲を切り裂くように一筋の陽光が降り注ぐところだった。

 それを認めたザックは目を細めて呟く。


「では、先に逝くぞ」


「ああ」


 陽光を浴びたザックが灰となって崩れ出す。

 肉体も同様に形を失っていった。


 宿敵の死を見届けたダエルは、ゆっくりと目を閉じる。

 そして二度と起き上がることはなかった。

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