第9話 上位種襲来 〜連携が試される時〜
第9話です。
ついに上位種が動きます。
主人公ひとりでは勝てない相手。
初めての“連携戦”です。
それは、夕暮れだった。
柵の向こう。
森の影が、不自然に揺れる。
「……来る」
俺の声に、村の空気が凍りつく。
次の瞬間。
――ドンッ!!
外柵が、内側へ大きく歪んだ。
「グォォォォッ!」
現れたのは、通常種より一回り大きい個体。
赤黒い皮膚。
筋肉が異様に発達している。
(ゴブリン・ハイ……)
名前が、直感で浮かぶ。
【脅威個体を確認】
ゴブリン・ハイ
推定Lv8
(俺はLv5、カイルは実質Lv1)
正面からぶつかれば終わる。
「カイル、準備!」
「……っ、分かった!」
弓を構える音。
ゴブリン・ハイが、
力任せに柵を引き抜く。
(力が段違いだ)
「罠の位置まで、誘導する!」
俺は正面に立ち、
わざと目立つ位置へ移動する。
「こっちだ!」
挑発。
ゴブリン・ハイの目が、
はっきりと俺を捉える。
地面を蹴る音。
速い。
(来る!)
ギリギリで横に転がる。
――バキィッ!!
地面に叩きつけられた棍棒で、
土が弾け飛ぶ。
「今だ!」
カイルの矢が、放たれる。
――ビュッ!
肩口に刺さる。
「グォォッ!」
完全なダメージではない。
だが、動きが一瞬止まる。
次の一歩。
――ガチン!
仕込んでいた強化罠が、
片足を捕らえた。
「動き、止まった!」
俺は飛び込む。
狙うのは、膝裏。
短剣を、全力で突き立てる。
「――ッ!!」
反撃。
振り払われ、
俺の体が地面を転がる。
肺から空気が抜ける。
(重い……!)
「レイ!!」
カイルの声。
二本目の矢が、
今度は目の下へ刺さる。
ゴブリン・ハイが、
大きく仰け反る。
(今しかない)
俺は立ち上がり、
全身の力を込めて跳ぶ。
首元へ、渾身の一撃。
――ズン。
手応え。
数秒の沈黙。
そして。
巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。
静寂。
風の音だけが響く。
「……勝った?」
カイルの声が、震えている。
俺は、倒れたまま空を見上げた。
「……ギリギリな」
【ゴブリン・ハイを討伐しました】
【大経験値を獲得しました】
【レベルが5 → 7に上がりました】
【スキル獲得】
《連携強化 Lv1》
味方と同時攻撃時、威力微増
(……強くなった)
だが、それ以上に。
「カイル」
「はい」
「お前、ちゃんと戦えたぞ」
少年は、黙って頷いた。
その目には、
もう迷いはなかった。
村人たちが、
ゆっくりと集まってくる。
「……本当に、倒したのか」
村長の声が、震える。
「これで、群れは?」
俺は首を振る。
「終わってない」
森の奥には、
まだ気配がある。
だが。
「でも、戦えるって証明できた」
それが、今夜の成果だ。
空を見上げる。
小さな村。
小さな勝利。
だが確実に――
“次の段階”へ進んだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
第1章クライマックス前編でした。
主人公単体の成長ではなく、
“連携”による勝利を描きました。
次回で第1章完結です。
村が一つの区切りを迎えます。
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