プレゼント
とても有意義な時間だった。あのお茶会でいろいろ知ることができた。
私が本当の聖女であること、私がセミオンの運命の番いであること。
後は、幼い頃にセミオンと交わしたという約束の思い出は私の中で枯渇してる聖女の力が完全に戻り開花した時に思い出すことも。
それと、セミオンのご家族の話も聞けた。
あの約束を交わした日はセミオンはお兄様と城を抜け出した日でもあったそうだ。森の中で遊んでいた時に的確な刺客に襲われて困っていた時に私が彼らを救ったらしい。
「そのお兄様はどこに?」
「えっとね、最近婿入りした」
「え。最近…」
「本当は兄のセバスチャンが王位継承順位が1位で皇太子になるはずだったんだけど、異国に婿入りして席を抜けたから辞退して僕が2位から1位に繰り上げになって、最近皇太子として認められたんだ」
(い、いろいろゴタゴタした時に来ちゃったな。なんか申し訳ない…)
「でも、兄さんのこと全然恨んでない。寧ろ、向こうの国で愛する人と幸せになって欲しい。兄さんが見つけた運命の番の人と一緒に決めた運命が光あるモノであって欲しい」
セミオンの兄の幸せを願う時の表情がとても優しかったのを覚えている。
この城の雰囲気からも感じ取れたが、セミオンのご家族の関係がとても強い絆で結ばれているのだと感じさせてくれた。羨ましいとさえ思えてしまった。
(アリーシャがいる限り無理)
お茶会を終えた夜、私の自室となった部屋のベッドで寝転がりながらそう思った。
実家のベッドよりもふかふかで上品なシーツと心地よいブランケットに包まりながらセミオンのことを考える。
確かにセミオンは優しくて私に尽くそうとしてくれている。好きとさえ言ってくれた。
でも、彼の気持ちに応えられる程の度量が私にあるのか、彼のそばに居ていいのか考えてしまう。
まだ、自分の気持ちに気づいてもいないのに。
(……せめて彼の力に、彼の助けになりたい。助けられた恩を返したい)
問題は山積みだ。どれから手を付けていけばいいのか分からない。それでも目的だけは定まっている。
(必ず母様の精霊石のペンダントを取り戻す)
アリーシャの首にかけられている母様のペンダントだけは必ず取り戻す。それだけは譲れない
"エレナ。焦っちゃダメだよ"
"もっとセミオンを頼って。彼は君の助けになる人だよ"
"エレナの願いは必ず叶うよ"
「ありがとね、みんな」
精霊達が私を心配して来てくれた。
聖なる力を授けられた皇族の血を引くセミオンにもこの子達の声が聞こえているのだろう。
セミオンの精霊達はどんな会話をするのだろうか。可愛らしい彼ならの姿を想像しながら私は眠りについた。
翌日、メイド長のシーナさんとセミオンが手配してくれた侍女のアリサさんが私の元に挨拶に来た。
シーナさんとアリサさんは私を見てとても感激していた。
「まぁ、本当に似ているわ!!聖女エリザベートにそっくり!!」
「こんなに素敵な人を虐めてる人がいるなんてありえない!!」
エリザベートという名は母様の名前だ。シーナさんは一度、息子さんの病気を母様に治してもらったことがあるそうだ。
「エレナさん。これからは私達フェシリア帝国の一員として貴女を支えますからね!!もうあんな酷いことをしてきた場所に戻らなくてもいいように…!!」
「シーナ叔母さん、私も何かかっこいいこと言いたかったのにぃ!」
「フフ!ありがとうシーナさん、アリサさん。これからよろしくお願いします」
シーナさんとアリサさんだけではなく、本当にここに住む人達は優しくて素晴らしい人ばかりだ。
私がいた村…いや、アリーシャ達が来る前、母様が生きていた頃の村の様子もこんな感じだった。
困っている人を助け、差別のない優しい世界。
だが、アリーシャの魅了の異能によって全て汚されてしまった。
私がいなくなった今も村のみんなはアリーシャを聖女として崇めているのだろう。
私が戻って真実を伝えても結果は変わらない。
帰る場所がない私の居場所は今はここしかない。早く聖女の力を回復させてセミオンの力にならないと…。
それからの生活は以前とは比べ物にならないくらい幸せなものばかりだった。
好きなことができるのは当然だが、シーナさんやアリサさん以外にも親しくなった使用人が増えた。
彼女らと開くお茶会はとても楽しい。セミオンとの2人だけのお茶会も。
セミオンの私への溺愛も更に加速していった。それはアリサさんの忠告で明らかになった。
「あ、エレナ様。一つ御忠告が…」
「え?忠告?何なの?」
「もうすぐきます」
「へ?」
トントンと扉からノック音が聞こえたので入って来ていいと合図すると、開けられた扉から綺麗に梱包された箱などを持った大勢の使用人達が私の元にやって来た。
私は驚いて一瞬言葉が出なくなってしまった。
「あ、あの、これは一体…」
「プレゼントです。セミオン様と皇帝夫妻の」
「え?!!!」
箱の中にはどれも皇室御用達の高級ブランドのドレスや靴、アクセサリー等が入っていた。中には私が好きな熊のぬいぐるみも入っていた。
(す、すごい。これが帝国の力…)
セミオンのご両親にもお会いし、シーナさんと同じように母様のよく似ていると話していた。
私も知らなかったのだが、皇帝夫妻と母様が友達同士だったなんて本当に知らなかった。
特にセミオンのお母様である皇后様は涙ながらに私を見ていた。
「本当にエリザにそっくり…!!セミオン、この子を幸せにしなかったら私が許しませんからね…!!」
セミオンは皇后様の切なる要求に「分かっています」と怯むことなく応えていた。
そのこともあってのこのプレゼントの量だろう。
でも、気持ちがこもったプレゼントを貰うことはとても嬉しいこと。
こんなに心が暖まるようなプレゼントは母様から貰った精霊石のペンダント以来だった。




