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なんといいますか、暗く重い感じですいません(´;ω;`)

 この国の王様は正室以外に百人以上に側室を囲う。


 そして側室だけに留まらず妾として千人以上の美女を国中から募って王様は毎晩の様に色んな女性と関係を持つ。フランツ様の言う『関係を持つ』と言う言葉はいくらバカな私にだって意味くらいは分かる。


 やっぱりそう言う事かな、と思って少しだけ恥ずかしさを感じる。だけどそれを語るフランツ様が誰よりも辛そうに見える。



 一見して笑顔を絶やさず自分の出生を語るフランツ様。



 だけどその笑顔が私にはフランツ様が無理をしている様に思えた。何も言わずにフランツ様を静かに見守るジャンヌ様は隣に座る私をギュッと抱き寄せてくれ。


 「聞いてあげましょう」と私に話すジャンヌ様もまたす凄く辛そうに見えた。いつもニコニコと優しい笑顔を向けてくれるジャンヌ様が真剣な表情になる。


 私は普段と様子の違うジャンヌ様に無言のまま首を縦に振ると彼女はようやく笑顔を向けてくれた。


 やっぱりジャンヌ様は笑顔が似合う。


 私は大好きなジャンヌ様の笑顔に背中を押されて目の前のフランツ様と正面から向き合う事が出来た。だけどいくら向き合ってもフランツ様の説明は私なんかでは想像すら出来ない内容で、ただただ驚くことしか出来なかった。


 フランツ様は時折冗談を交えてくれる。


 多分、私たちに気を遣ってくれてるんだと思う。


 だけど今はその気遣いの方が申し訳ないと感じてしまう。この人はどうして辛い話をこんな風に語れるのだろうと思ってしまった。


 目からあふれる涙を拭って必死になってフランツ様の説明を聞かないといけないと思う。だってこれは私の不用意な質問が招いた事なのだから最後まで聞かなくちゃ。



「一度に百人以上の女性の妊娠が発覚してね。その時のお城の様子は今でも王城勤たちの語り草だよ、寝る暇すらなかったって。しかもその女性たちの中には王と関係を持つ前に他の誰かと関係を持っていた女性もたくさんいてね、誰が本当に王の子を身籠ったかなんて調べる時間すらなかったらしい」

「「……」」

「王妃を含めた百人以上の女性の世話を強要された家臣たちも次第に誰が誰の世話をしてるかも分からなくなって、誰が一番最初に妊娠したかも分からなくなったらしいよ? 終いには次から次へと生まれる王子や王女の見分けも困難になって、母親たちすらも自分の子供の見分けも付かなくなっちゃってさ。だから家臣の誰かが適当に「この子供こそ第一王子だー」って僕を選んだんだ」

「……殿下」

「ジャンヌ様?」



 ジャンヌ様は静かにフランツ様に声をかけた。多分フランツ様にはジャンヌ様の声は届いたと思う。だけどフランツ様は聞こえないフリをして説明を続けた。


 その様子に気付いてジャンヌ様は諦めた様にソッと目を瞑る。


 私もジャンヌ様に倣ってギュッと目を瞑った。


 するとフランツ様はそんな私たちの様子に気付いたみたいで「君たちは本当に双子みたいに仲が良くて羨ましい」と話の途中で笑い声と一緒にそう呟きを漏らした。



 フランツ様は呟いた後に小さくため息を吐いて、勢いを付ける様にまた説明を続けた。



「……誰が誰の子かも分からない。だから母親の方も誰に愛情を注げばいいかも分からない。中には双子や三つ子がいた筈なのに、誰が双子なのか、三つ子なのかの判別すら出来なくなって出産に立ち会った医者さえもあまりの忙しさにカルテも作成出来なかったんだって? 笑っちゃうよね?」

「「……」」

「母親たちも次期王位を巡って自分の子供に継承権を、と争って御家騒動にまで発展したけど、結局は自分が抱いている子供が他人の子供だったらどうしようって考えて錯乱する者もいたって話だ。僕は一応正室の息子って『設定』になってるから王妃も大切にしてはくれるけど、多分本人は気が気じゃ無いと思う。……僕は僕自身が何者さえも知る術が無いんだ」

「「……」」

「当然の話だけど兄弟の仲だって最悪さ。それでも僕は恵まれてる方かな? ジャンヌ、君と言う大切な友人を手に入れたのだからね。まあ君の場合は僕に気を遣いすぎて逆に踏み込んでこなかったけどね」

「殿下……」

「僕は充分に幸せさ、だから君もそんな顔をするなよ。少なくとも君との悪巧みを僕は楽しんでいるんだよ。それとマリー」

「……はい」

「こんな話を自分の口から誰かにしたのは初めてだ。言いたくても自分からは言えなくて、それでも聞いて欲しくて。世界中に僕の不満をぶち撒けたかった。……ずっと誰かに不満を漏らすキッカケを作って欲しかったんだ。だから君も頼むから泣かないでおくれ」

「フランツ様あああ……」

「ははは、だから泣かないでいいってば。可愛い顔が台無しじゃないか」



 どうしてフランツ様はこんなに優しいんだろう。


 どうしてずっと笑顔を絶やさずいられるんだろう。


 どうして私の方が優しくされてるんだろう。


 こんな話の後だから私もジャンヌ様も何も言えなくて、言ったところでフランツ様に笑い飛ばされそうで黙り込んでしまった。


 部屋は逆にフランツ様の笑い声で満たされていく。


 私とジャンヌ様は何方から共なく抱き合って、ただお互いの温もりを確認し合っていた。人が人を好きになれる事の幸せを抱き合う事で繋ぎ止める。そうしないと自分自身が何者なのか、目の前にいる大好きな人が誰なのかさえも忘れてしまいそうだった。



 それくらいフランツ様の話は衝撃的だった。


 私はフランツ様の話を聞いて自分が人に必要とされてこなかった事に寂しさを感じた事さえ恥ずかしくなっていた。なのに……。


 それさえもフランツ様は笑い飛ばしてくれた。


 この人は凄く強い人だ。


 私はこの時、初めて人に敬意を感じ取った。ジャンヌ様やレオポルト様を大好きと感じた時と似た気持ちが私の心の中を埋め尽くして私の心を温かくしてくれた。



「ま、人は大なり小なり不幸を抱えるものさ。僕はたまたまそれが人より大きかっただけの話だよ」

「……今のお話、乙女ゲームの中にも出てきませんでした」

「何でも知ってる筈のジャンヌを出し抜けた気分で僕は気持ちがいいなあ」

「あうううう……」

「ほらほら、マリーも泣かないで。君が泣くと僕も悲しいんだ」



 そう言ってフランツ様は取り出したハンカチで私の涙を拭ってくれる。一番悲しい筈のフランツ様に優しくされる事に恥ずかしいと思いながらも、そのハンカチからはフランツ様の匂いがする。



 強さを兼ね備えた優しい匂い。


 ああ、これはジャンヌ様と同じ匂いだと思う。人の匂いが同じな訳がないけど、それでもそう感じる。王子様にお世話をされるなんて凄くいけないことの様に感じるけど、つい甘えたくなってしまう。


 そして背中からジャンヌ様が抱きしめてくれる。


 凄く落ち着く、ジャンヌ様に抱きつかれると温もりを感じて私は幸せで満たされていく。この想いを目の前にいる人に伝えたいと思った。


 すごく失礼な事だと分かっていても伝えたいと言う思うが心の中に積もっていく。私はその衝動が抑えきれなくてギュッと唇を噛み締めてフランツ様に抱きついた。


 彼は一瞬だけ驚いた表情になったけど直ぐに穏やかな顔になって微笑んでくれた。


 私がジャンヌ様から教わった事、寂しい時こそ辛いと思う時こそ人は人の温もりが恋しくなる。それを私はフランツ様に伝えたかっただけだ。



「……ギュッてすると落ち着くでしょ? ジャンヌ様から教わったんです」

「ああ、初めて人の温もりを知ったよ。マリーは温かいな」

「ジャンヌ様はもっと温かいですよ?」

「……マリー、君には感謝してる。まさか今日一日でこんなに色んな事が叶うとは思わなかったよ」

「殿下、もしかしてマリーに本気になっちゃいました?」

「ジャンヌ、マリーと引き合わせてくれた君にも同じく感謝を」

「私も殿下と同じだったんです」

「ジャンヌ様?」

「突然前世の記憶を思い出して、まるで別の世界に一人放り出された気持ちになって。当然の事とは言え弟は私を避けて、父は多忙で家にも中々帰って来れない。ずっと一人ぼっちだと思っていた矢先、私とソックリな女の子と偶然出会って……その時は運命だって勝手に直感しただけなんです。私がマリーに抱きつくのは……ただ……」



 私を包み込んでくれるジャンヌ様は震えていた。


 まるで神様に懺悔する様に震えながら私を強く抱きしめるジャンヌ様も何かに飢えていたんだ。だけど彼女が何に飢えているのかは今の私には言葉に出来ないものに思えた。


 それでも私やフランツ様と同じでずっと人には言えない苦しみを抱えていたんだ。


 私の直感は正しかった。


 この二人はやっぱり似たもの同士だったんだ。



「ま、君もそのセクハラ癖をいずれは直さないとね」

「可愛いは正義なんですよ」

「また減らず口を……、でも君らしいと言えばそれまでなのかな?」



 二人の会話の内容は良く分からなかった。


 だけど今はそんな事がどうでも良かった。


 いつかジャンヌ様の口からそれを知る事が出来たらいいなと三人で抱き合いながら私は心の中で願うのみだった。

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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