ティータイム ~白魔道士リゼリアの嘆き~
影は細く長く、そして何者か分からぬ程に傾く時分。リゼリアは一人しょぼくれていた。
何者を目指すわけでも無く、ただ生きるために意地を張るも、皆の足を引っ張る結果となったことに落胆し、目指すべく道はそもそもあるのか。それは何処なのか。全くの五里霧中に全てを投げ出したい衝動に駆られていた。
そんな背中を見つめる一人の男──エルは、何も言わずリゼリアにグラスを差し出した。
「まあ飲め、多少は気が晴れるぞ」
「お酒は好きじゃない……けど、ありがとう」
グラスを片手に壁を向き、一人時が止まったかのように微動だにせず、ひたすらに落ち込んだ。
「…………はぁ」
巡り巡った塊が、ため息となって溢れた。
そして持ったままのグラスに少し口を付けた。
「あ、美味しい」
一言の後、リゼリアは一気にグラスを空にした。
「あ、おい、無理するなよ──」
その言葉を投げかけたエルは、懐かしさを感じた。
左手で頬杖を突き、右手の人差し指でグラスを押すその仕草に、かつて仲間と過ごした団欒を思い出したのだった。
「やっぱり、そういう所も似るんだな……」
「?」
エルはマイボトルを棚から取り出し、リゼリアの向かいに座った。
「右手を見せてみろ……」
「?」
リゼリアがゆっくりと右手を開いた。
「おい、フェリー! 居るんだろ!? ちょっとコイツを見てくれや!」
エルが少し声を荒げると、店の棚の中から、同じくマイボトルを持ったフェリーが姿を現した。
「何で居るの分かったの?」
「大抵いつもこっそり飲んでるだろが……それよりもコイツにはアイツに似ている点が多い。その割に魔力はカスだ」
「…………ぐすっ」
それまで我慢を重ねてきたリゼリアの瞳に、うっすらと涙が浮かび上がった。酒も入り、ついに我慢の結界は脆くも崩壊したのだった。
「あーあ、君ってホント酷い奴だなぁ…………」
「ウッセ! お前も泣くな! ホントのことなんだからよ……まったく、ホントは俺が泣きてぇよ」
エルがリゼリアの右手を取り、手相の鑑定を始めた。
「……どうしたんだい? 急に手相なんて」
「見ろ。コイツの魔力線は、赤子の時から変わってねぇ。大抵成長と共に体が大きくなるから、器が大きくなった分、入る魔力も大きくなる。つまり、魔力線も伸びるはずなんだが……」
「本当だね。おちょこみたいな小さな器だね」
「……ぐすっ」
「お前も大概酷えな」
「ゴメンよ。悪気は無いんだ。でもさ、妖精族に伝わる魔力占いだと、リゼリアのつむじは決して悪くは無いんだ。寧ろ良い部類なんだけどねぇ……」
「だろ? アイツの子ども達が全員脳筋だった時は盛大に笑ったが、いくらなんでも孫にも素養が現れないのは、少し妙だぜ?」
「……もしかして」
「いやいや、まさか……」
「…………え? な、何……?」
二人の顔が、捨て猫を見るかのような、そんな哀れみに満ちていた。
「何処かで拾われた?」
「…………ウワーン!!」
「あーあ、泣かした。オイラ知らなーい」
「…………面倒くせえ」
そして慣れない酒を煽ったリゼリアは、泣き止むと同時に直ぐに突っ伏して寝てしまった。




