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物陰から様子を窺っていたリーゼットは、口に手を当て、酷く笑みに富んだ口元を隠した。
「さて、仕上げだ──転移!」
リーゼットの詠唱で、部屋の中に居たフユハの姿が一瞬にして消えた。フランシスは驚き、辺りを見渡すが人影は無く、慌てて家の外へと飛び出した。家の影ではフユハの口を押さえたリーゼットが、向こう側へと走り去るフランシスの背中を見送っていた。
「さーて……どうするつもりだい?」
「…………すみません」
口から手を離したリーゼットは、やれやれと言わんばかりに俯くフユハの顔を覗き込む。フユハは為す術も無く、ただただ項垂れた。
「消失した死体を戻す術は無い。諦めな。友達を失った位で済んだんだ。安いもんさ……」
リーゼットがその場から歩き出す。フユハの目には涙が浮かんでいた。
一歩、二歩、三歩と歩んだリーゼットの足が、ピタリと止まった。振り向き様にニヤリと嘲るリーゼットのその横顔は、悪魔的な微笑みであった。
「方法が……」
「……?」
「方法が無いわけでは……無い」
「……えっ?」
「妹は一つあえて書かなかったのさ。禁呪と呼ばれる神の領域を……」
リーゼットはそのまま転移呪文でフユハの目の前から消え去った。残されたフユハの心にはポッカリと穴が開いたまま、冷たい風が吹き抜けた。
リーゼットは転移を繰り返し、怒り狂うフランシスを拉致同然の如くダンジョンの最下層へと連れ去った。
「ま、言いたいことは山ほどあるだろうけれど、先ずは落ち着け、他の蘇生方法を教えてやるから」
他の蘇生方法と聞いたフランシスの顔が、一瞬にして元の落ち着きの無い顔へと戻る。
「他にあるの!? 教えなさいよ!! フユハに全財産払ってこの様よ!! このまま終わりなんてゴメンだわ!!」
食い気味に迫るフランシスを見て、リーゼットはニヤリと笑った。
「ココだけの話だが、次の変動期は近い。変動期中は魔力の流れが大きく変わり、流れは速く、そして大きくなる。魔物は強くなり、その分ドロップアイテムも格段に良くなる」
「私には縁の無い話ね」
「まあ聞きなさいな。変動期になると溢れた魔力が溜まり、何処かに魔鉱石が出来る。場合によっちゃ魔鉱石は巨大化し、そしてとてつもない魔力を秘める」
「……で? なによ……」
段々と話が現実離れしてゆく様に、フランシスの脳内はその間に幾分か冷静さを取り戻しつつあった。
「その魔鉱石の魔力で時間を戻す。そして蘇生をやり直すのさ!」
「──!?」
「呪文自体は既に仕入れてある。ただ、あまりにも魔力を消費するから、私だけじゃ使えない」
「つまり、その魔鉱石を使えば……」
「出来る」
その言葉にフランシスの表情は明るくなり、リーゼットは含みを込めた笑いでソレに応えた。




