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死者を動きは、生こそ感じられはしないが、そのカラクリは生者と同じ物である。
フランシスは素早く筋を狙った。
筋が失われ、死肉に無理を効かしている動きは肉体の限界を超え、関節が折れ、肉がもげ、包帯巻きは次々と倒れていった。
「ウッソ……フランシスどうしちゃったの?」
十字架で頭を吹き飛ばすリゼリアは見知った知人の急激な変貌に唖然とした。
一際大きな墓石がドンと持ち上がり、落ちた反動で墓石が割れる音がした。二人が見つめる先、ツギハギだらけの顔が白目を向いて墓穴からヌッと現れた。
「札……札……」
まるで血の気のしない白い手が、額に札を一つ貼った。すると超人的な勢いで墓穴から飛び出した人影が、クルリと一回転しながら地面に着地した。
「……我、我…………名前忘却……多分殭屍」
「なに……あれ……?」
「わからない……何も分からない」
額に『頭上注意』と書かれた謎の札。だらりと伸びた土気色の白衣を身に纏い、死者らしき女は無表情でボソボソと、何やらを口にしている。
「……氫氦」
「──避けて!」
嫌な予感がしたフランシスは、咄嗟に身を低くし地面を転がった。するとフランシスの居た場所の空気が変色し、上へ昇るようにたちどころにグジグジと空気が腐っていき、至近距離に居た包帯巻きの顔が瞬く間に腐り落ちて崩れた。
「危ないわね!」
リゼリアは考える前に十字架を振るった。しかし背を逸らすように十字架を躱した死者らしき女の、土気色の白衣の袖から、分銅の着いた鎖が飛び出し、リゼリアの持つ十字架を絡め取った。
「危険物……没収」
武器を取られたリゼリアが距離を開けた。しかしそれは自らだけが的になるだけの悪手であった! 死者らしき女がこれぞとばかりに、鎖に絡まった十字架を振り回す。リゼリアはギリギリ躱すのが精一杯で、当たれば大ダメージは免れないだろう。
「こっちよ!」
素早さで勝るフランシスが咄嗟に囮を買って出た。
「鋰鈹硼碳氮氧氟氖」
死者らしき女がそれを口にすると、忽ちに周りの空気が黄色に変色し龍の姿を形取り、牙を剥き出しにしてフランシスへと襲い掛かった!
「うわっ! 良く分からないけど触ったらヤバそう!!」
躱し際にサーブルで空気の龍をカットするも、傷は入らず反応も無い。その間にも鎖十字架はリゼリアの身体を捉え壁に激突していた。
「愉快愉快……」
その姿を見て笑う死者らしき女。十字架を壁から引き抜きリゼリアの姿を窺うも、そこにリゼリアの姿は無かった。
「いい加減大人しくしなさい!」
割れた墓石を手に、リゼリアが死者らしき女へと飛び掛かった!
「危険!」
死者らしき女が飛んで引いた。しかしそこには既にフランシスがサーブルを構えて待ち構えていた。
「これでどう!?」
しなりを効かせたカットは死者らしき女の額を掠めた。額の札が二つに切れ、ヒラリと地面に落ちる。
「嗚呼……脱力…………」
すると、死者らしき女はグニャリと地面へと項垂れ、膝を着いたままうつ伏せに寝転んでしまった。
顔を横にすると、ふと地面に転がる割れた墓石に刻まれた文字が目に入った。
「……崙崙」
「ん?」
「ろんろん?」
「我、名前、崙崙……多分」
彼女が現れた墓穴の傍に『天才錬金術師ここに眠る』と書かれた石が倒れており、実験器具と思われるガラスの器が幾つか散乱していた。天才の文字の前に僅かな空白があり、乱雑に剔られていたが二人は見て見ぬフリをした。
「埋めて帰ろうか……」
「そうね」




