7-5
フランシスがいつものカフェテリアで帽子を取るかどうか迷っていると、不意を突いてリーゼットが姿を現した。
怪しく揺れるチャイナドレスは健在で、フランシスが何かぼやく前に、リーゼットが話を切り出した。
「コレ……アンタのだろ?」
人差し指に絡みついたペンダント。それはフランシスが両親から受け取った唯一の形見である。
「──どうしてそれを!?」
「武具屋の前に落ちてたのさ」
ひょいとペンダントを投げると、フランシスは慌てて両手で慎重にキャッチした。
「……ありがと」
「で、拾った時に中を見ちまったんだけどさ…………やっぱりアンタ、アルデーノ家の御令嬢だったんだねぇ」
「…………」
フランシスがそっとペンダントに隠された仕掛けを押すと、ペンダントが開き、中には蒼いトラの紋様が描かれたプレートが仕込まれていた。
「……だから? なに?」
フランシスは冷静に、そして慎重にリーゼットを睨みつけた。
「両親の末路はさぞかし悲惨な物だったろうに」
「アンタには関係無いでしょ……」
「そして遺体は行方不明」
「……っさい」
「疑惑は晴れたが無念は晴らせず」
「──うっさいわね!!」
立ち上がりテーブルを叩いたフランシス。その目には涙が零れていた。
「墓の場所は、私は知っている」
「──!!」
「そして骨の一部があれば蘇生は可能だ」
「──ウソ! そんなのウソに決まってるわ!!」
「病死や老衰は無理だが、不慮の死なら可能だ。実際ダンジョンで死んだ奴等はバンバン蘇生してたしさ」
「ウソ……まさか…………!!」
「場所は教えてあげる。『寂れた坑穴』の最奥。行けば分かるさ。だからアンタはそれを持ってアイツに頼めば良い」
「だ、だれ、に……?」
「それは遺体を持ち帰ってから教えてやるさ。少なくとも、孫の出涸らしでは無いことは確かさ」
「フランシスー」
その声に驚き振り向くと、遠くでリゼリアが手を振っていた。ハッと振り向き、リーゼットと見据えようとしたが、その時既にリーゼットの姿は無く、フランシスの手は汗で酷く湿っていた。
「どうしたのフランシス? 今誰か居なかった?」
「……別に」
「そう? それよりさ、最近フユハとマニエルが強キャラ化して私達置き去り感パないから、こっそり特訓しない!?」
「……え?」
フランシスの頭の中はそれどころでは無かった。しかし同時にフランシスはあることを閃いた。
「それなら……行ってみたい所があるんだよ、ね」
「どこどこ?」
「……寂れた坑穴、って所なんだけど……」
「二人だけで行って大丈夫なら行ってみようか。ね?」
フランシスは内心ヒヤヒヤしたが、リゼリアの屈託のない笑顔に、少々心がチクリと痛んだ。
二人はその夜、皆に内緒で鉄道に乗り、南の海岸沿いを抜け、遠くへと出掛けた。




