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フユハの回復呪文で目を覚ましたエルは、鼻にティッシュを詰めて冷静に語り始めた。
「そのバニー──いやいや、その服には呪文軽減、そして状態異常耐性が施されている。安心して着ててくれ」
「うわ……キミってやつは本物のアホだね」
「ガチもんじゃないと着てくれないと思ってな」
「……まぁ、確かに」
「そのトレイ──いやいや、その盾はドラゴンが踏んでも壊れない代物だ。安心して攻撃を受け止めて貰って構わない」
「……笑うしかないね」
「ぷに子ちゃんが傷付いたら困るからな!」
マニエルは苦笑いしか出なかった。フユハは「似合っていると思いますよ?」と天然なのかボケなのか、落ち着いて品評をし、とりあえずこの場には真面な人間が居ないことを肌で察した。
キャンプを終え、帰路に着く四人。しかしエルとフェリーの視線がチラチラとマニエルの方を向いては歩みが遅くなるのであった。
「出るとこ出てるし、出て欲しいところ出てるし、後はアレだな……とりあえず安産型だな」
「……あんまりジロジロ見ると、後で怒られるよ?」
恥ずかしそうに着ているバニースーツを手で隠すマニエル。なお、その仕草が彼等の劣情を更に誘う事になっているとは、彼女は知るよしも無い。
帰り道もエルの呪文とフェリーの斬術で後ろの二人は見ているだけであったが、その出番は突然訪れた。
「のわっ! メッチャ湧いてるんだけど!!」
「うひーっ! こりゃ凄い……!」
四人の前に、足が無数にある、大きめの昆虫が大量に現れた。
「む、虫嫌い……虫嫌い……!」
カサカサと音を立てる虫達を見た途端座り込み頭を抱えるマニエル。
「おっと、二人には足一本触れさせないぜ!?」
詠唱から素早く攻撃に移るエル。氷の刃が虫達を貫き、黄色の汁が辺り一面に飛び散った。
「オイラも虫はあんまり……」
「どっちかって言うと、大きさ的に食べられる側だからな」
フェリーも小刀で斬り捨てるも、数が多過ぎて苦戦している。
「ちょっと数が多すぎやしないか!?」
「脳が単純な生き物ほど影響を受けやすいからね! 仕方ないよ!!」
倒しても倒しても湧いて出る虫達に、二人は次第に手が回らなくなってしまい──ついに後ろの二人へと虫達が襲い掛かった!
「いやぁぁぁぁ!!!!」
「い、いけません……!!」
フユハが杖を振り回すが、多勢に無勢。直ぐに虫達は二人の足下を埋め尽くした。
そしてマニエルは──立ったまま気絶した。
「大丈夫か二人とも!!」
「わ、私は大丈夫ですが……!!」
マニエルは下を向いたまま動かない。
「ケ、ケケ……」
マニエルの手がピクリと動いた。
「お?」
「う?」
「ケケーッ!!」
マニエルは血相を変えて、まるで別人のように鬼神の如くトレイを振り回し始めた!!
「死ねウジ虫め!! 死に絶えろ!! 死ねーっ!!」
トレイで虫達を薙ぎ払い、身体中に汁を浴び、トレイを投げては虫達を斬り刻んだ!
「…………」
「…………」
豹変したマニエルを恐れた二人は、虫達を追い払った後、その態度を悔い改めた。
「あんまりイジるとトレイで首を刎ねられそうだ……」
「そうだね。やり過ぎはよくないね……」
マニエルはその後地上に戻るまで豹変したままであった。




