恋の終わりと、始まり 14
信じてもいいのだろうか?
さっき行ったネイルサロンの店長もオネエだった。バサバサのつけまにバッチリメイク。女装してたから、かなりガチ目の。
いわゆる同族。
親しげに話していたあの人と、てっきり深い仲だと思った。いや、相手がオネエじゃなくても先生の容姿なら。
彼氏でも、彼女でも、セフレでも、何人いてもおかしくない。
「凪……沙……、この人誰?」
ハァハァと息の上がってる蓮の声は、押し黙ってる私の耳の左から右へ通過していく。
なんか、もう、今はそれどころじゃない。
アキラ先生は私のライバルだった人で。
と言っても、まだAKIRAのデビュー前。同じ時期にC-ielのコンテストへ応募してた中の一人。私が一方的にライバル視してただけなんだけれど。
「急に電話が繋がらなくなったから心配したんだぞ」
アキラ先生は尊敬する漫画家で。
私には手の届かないと思ってた人で。
「昨日は本当にごめん」
私には蓮がいたし。
アキラ先生はオネエで。
「これからのこと、いい機会だから話しようよ。って、凪沙? 聞いてる?」
絶対に好きになっちゃいけない人で。
「ねぇ、もしかしてだけど、お前も浮気してたの?」
"好きだよ。凪沙" ただあの一言だけが。
今は頭の中にこびりついて離れなくなってる。
「おい、何とか言えよ。無言の肯定ってやつか? なら、あいこじゃん。俺は許すから凪沙も許せるよな」
薄ら笑いを浮かべた蓮は "やり直そうぜ" と私の肩に手を置いた。
やめて。
気持ち悪い。
キタナイ──。
何があいこだ。
私が浮気? 冗談じゃない。
何かがプチンと弾けた。
30歳目前で、逃したらぼっち確定。
妥協すればいつかは結婚できるかもしれない、という淡い期待。
そんなもん……、そんなもん、ゴミ箱へポイだ!!!
情に流されてやり直すほど若くはないし、あいにく浮気を許す広い心など持ち合わせてないわ。
好きか嫌いかと問われれば、どっちでもないと今ならハッキリ言える。
つまり、どうでもいい。
「やり直す気はない」
肩に乗っかってる蓮の手を払い除けた。
「え? 凪沙?」
「別れたいの」
「ちょっと待って。昨日のことは謝ったじゃん。今でも凪沙のことが好きだし、俺には凪沙しかいないんだよ」




