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妹ってうざいよな。  作者: あらき


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第三話

 みちるちゃんのダメージから回復してすぐ、みちるちゃんに似ていない制服の少女がやってきた。……夕日丘という姓で薄々感づいてはいたが……あぁ、こいつがみちるの義姉か。


「みちる。そろそろ帰るわよ――あら、お友達?」


 憂佳を見て、愛想よく朗らかに笑う。


「えと、その……みちるとはずっと前から幼馴染の、宮入憂佳です。えと、先輩……ですよね?」

「ピンポン。みちるの義妹(あね)の夕陽ヶ丘とおるです。いつもありがとね」


 同じく。みちるにお姉さんって呼ばれそうになったから実質姉の宮入葉月です。なんて言ったらさすがにウルトラセンシティブだし、みちるにさらにもう一発されてはたまらんので、普通に会釈する。てか、姉がいるのに私を姉呼びするのはなかなか、どう解釈していいのやらって感じだ。


「うっす。このガキの実妹《あね)の宮入葉月」

「――自己紹介はいりませんよ? 会長」

「一応必要かなって思っただけなんだけど」

「ひとかけらもいりません」


 私たちのやりとりに、みちるが首を傾げた。


「葉月先輩と、とおるさんはお知合いですか?」

「おんなじ高校なんだから顔を合わせたことがあるだけだよ」

「何の嘘ですか? 生徒会で一緒なんですよ、私たち」

「えっ、お姉って生徒会長なの!?」


 ぎょっとする憂佳に、驚くみちる。ついでに、胡乱気な目をこちらに向けるとおる。


「先輩、妹と知り合いならそう言ってくださいよ」

「いやぁ、とおるは『新しくできた妹』としか言ってないじゃん! 赤ちゃんだと思ってたよ」

「さすがにそれなら新しく生まれたって言いますけど!?」

「いや、独特な言い回しだなぁと……」

「さすがに葉月先輩がおかしいんじゃないですか……?」

「黙秘していい?」

「会長はなんも考えてないからね」

「お姉はそんなもんだよ」

「寄ってたかって……」


 私のポリシーとして、家族の関係に深入りしないというものがある。あまり立ち入ると、なんかややこしくなる気がするからだ。私は実際ややこしくするタイプだし。

 とおるは私と妹を見比べている。そして、何か得心したようにうなずいた。


「会長、憂佳ちゃんがかわいそうですよ」

「何が?」

「教科書販売。知ってるんだから、スーツケースくらい持ってくるよう言えばいいのに」


 妹に意地悪してるんですか、と尋ねるような顔をしている。う、うるせぇよい! それは、その、忘れてただけっつーか、私も誰にも教えてもらってないし、そもそも二年前の私を見てれば勝手に対策できたはずだし……なんて言い訳はしません。


「別に、意地悪してるわけじゃないのにそんな言い草すんなよ、とおる。憂佳が持つわけじゃないんだからいいだろ」

「……お姉?」

「――私が持ってやるよ。……もともとそのつもりだったし」

「え、ほんとに?」

「オネエチャン、ウソツカナイ。……思ったより多そうだから、半分だけでいい?」

「うん! ありがと、お姉!」


 なんか素直で嫌だ。そんな感想とは裏腹に、みちるととおるが顔を見合わせていた。


「……会長って、思った以上に妹に優しいんですね」

「――とおる。お前、みちるちゃん以外に妹はいるか?」

「えと、いませんけど」

「じゃあ、教えといてやる。これくらいな、お姉ちゃんなら当たり前なんだよ」


 死ぬほど嫌だけどな!!! と、腹の中では悪態をつく。そして、憂佳を軽く小突く。


「朝も言ったけど。いらないから、そのお礼。急に殊勝ぶるな」

「――なんか、優しいのか優しくないのかわかんないですよ、先輩」


 当然だ。優しいつもりなんて微塵もない。それに、こいつは。


「……それでも、ありがと」


 私の思い通りになんて、ならないんだから。


「てか、とおる。お前もスーツケースくらい引いてやれよ」

「そんな、いいですよ。先輩。とおるさんにそんな無理言うなんて」

「別に、無理ってほどでもないけど……」

「じゃあやれ。会長命令ってことで」

「ぱーわーはーらーだー」


 憂佳が、つぶやく。


「なんか、みちると全然似てませんね」

「そりゃ、血もつながって無けりゃ環境も違ったんだから、当然でしょ」


 ノンデリな妹を殴ってやりたくなる。とおるは、みちるちゃんとの距離感を考えてるんだ。


「それで言うと会長と妹さん、えっと、憂佳ちゃんだったか、は――うん、姉妹って感じだね」


 さすがとおる。私の表情から空気を読んだな。やべって顔をしていたみちるもほっと溜息をついている。そうだろうそうだろう。私はその手の話題はちゃんと文句を言うタイプだ。まぁ、憂佳の前でキレることはしないけど。


「そうですかぁ? よく似てないって言われますけど」


 一番ノンデリなのはうちの妹らしい。ムカつくぜ。こういうところが嫌いなんだよ。お前の場合は、それが誉め言葉だもんな。

 あんまり言っても仕方がない。憂佳のほっぺたを軽くつねって、声をかける。


「んじゃ、そろそろ帰るぞ。みちるちゃんもとおるも、また新学期に会おう。とおる、みちるちゃんに生徒会に入ってもらいたいから説得しといてくれよ!」

「えぇ!? いきなり何言ってるんですか会長!」


 妹をちらりと見る。お前は入らなくていいからな、とウインクすると、憂佳はつぶやいた。


「私も、興味あるかも」


 ご勘弁!


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