プロローグ
妹が、高校生になる。私と同じ高校。同じ制服。いやでも血筋を意識するくらいには、似通った顔立ち。そして、たぶん同じ性格。――たぶんがつくのは、周囲がそう言っているだけで私は認めていないからだ。
妹は、私よりよほど性格が良い。似ているといった後でいうのも変な話だが、顔立ちもかわいらしいと思う。私は何というか、パーツが少し違うというか……同じなんだけど、なんか別というか。
妹ほどかわいくないのだ。似ている=かわいいではないということである。
そして、何より。私の妹は、私のことが大っ嫌いなのである。
まぁ、私からすれば妹なんてものは赤子のころからよく見知った人間であり、多少文句を言われたとて前までおむつを履いていた小さなおこちゃまでしかないのでそこまで嫌いになるような対象ではないのだが……。向こうからすると「嫌い嫌い大嫌い」らしく。
私としては肩をすくめてやり過ごすほかないだろう。人の気持ちはかえられない。ひょっとするとかかわり方が悪かったのかも。知ったことか。
なので、そんな妹がまさか私と同じ学校を選ぶとは……って感じだ。普通の公立高校で、まぁ環境としては悪くない。私自身は制服がかわいかったこと、家から近かったことが理由だが、妹からすれば選択肢には本来はいらないはずの学校だったはずだ。
わざわざ、入りやがってという気持ちが少しだけある。
仕方ないし、入学式ももうすぐなのだから、入るななんて言うことはできないが。正直、気に入らない。私よりかわいくて、私より性格が良い妹が入学すれば。
私は、「じゃない方」である。わかるかな、意味が。
「三年生のほうの」宮入さん。かわいくない方の宮入さん。部活に入らなかった方。背が低い方。地味な方。癖っ毛の方。
言われ慣れている、じゃない方。
――それが嫌だったから、必死で中学の頃は勉強した。
普通の高校。嘘。地元じゃ上から数えて二番目の公立進学校。
制服がかわいい。嘘じゃない――けど、実のところ私服登校OKの学校。
家から近い。嘘じゃない――けど、ワンランク落とせば、家から徒歩五分のところに高校がある。
私より、学力で劣る妹には絶対、絶対、ぜーったい。入れないところ。私が、「ただの」宮入さんになれるところに入ったのに。
ところがどっこい、妹は何の因果か、びっくりするくらいの努力の末に、私と同じ学校に入ってしまった。
あぁ、神様。乗り越えられない試練はないといいますが。――まだ、試練を与えるつもりですか。
そう。妹のことがそんなに好きじゃないなんて、嘘。うそ。ウソ。
妹のことが嫌いなのは、本当は――私のほう。
嫌いと先に言ったのは、妹の方だったと思う。でも、先に嫌っていたのは――多分。いいや、絶対。私だろうな。
宮入葉月。八月に生まれた、「お姉ちゃん」。
宮入憂佳。七月に生まれた、妹。
二人並んで学校に行く日々が始まる。始めたくないけど。始めざるを得ない。




