3 訪問者
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正門の前で、ジャージ姿の体育教師とマイクを持った女性がやり合っており、その姿を、不精ひげを生やした男性が、市販のものとは思えない大仰なビデオカメラで撮影している。
そういえば、最近は大きな事件や芸能界のゴシップもないようだ。ネタに困ったどこかのテレビ局が、C組をむしばみつつある「眠り病」について取材をはじめたということらしい。
「比留間さんっ、ぼーっとしてないでっ、早くカメラ止めさせてよっ」
体育教師に促されても比留間先生はオブジェのように突っ立っているばかりだ。顔色は青白いのを通り越してドブネズミみたいな土気色で、そんな姿を目の当たりにしたこっちも、胃に穴が開きそうになる。
C組の教室に足を踏み入れるなり、ぼくは引き返したくなった。重苦しさが、むわっとするほど煮詰まっている感じだ。
乙宮さんが遠慮がちに会釈をよこしてくる。今朝のこともあって気恥ずかしいみたい。
教室はインフルエンザで学級閉鎖すれすれみたいに空席が目立つ。
「委員長がいけないんだっ」
女子生徒のひとりがわざとらしく声を荒らげた。
「わざと遅くきて、小鹿さんを見殺しにしたに決まってるよっ」
「そうだそうだっ」
すかさず徳伊くんが合いの手を入れる。まさに金棒引き、ここに極まれりでございますね。
いつもならばおちゃらけまじりに反論する乙宮さんも、今回は元気なく黙りこんでいる。
じつは登校する前、舞坂さんの家に寄ってきた。大きな門に設置されているインターホンのボタンを押すと、応じたのはしとやかで大人の魅力に満ちた、母親らしき女性だった。
――ごめんなさいね。今朝はなんだか気分が悪いみたいで。
それを聞いて、ぼくはほっとしてしまった。とりわけ今日は舞坂さんが学校で吊るしあげられそうな予感があったんだ。
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思いがけない訪問を受けたのは、二時限が終わった直後だ。
黒板側のドアのところで、ほかのクラスの男子生徒が安達くんと言葉をかわしているのをぼんやり眺めていると、安達くんがその彼をひきつれて、こっちへやってきた。
「おい。神永。おまえと話したいってやつが来てるみたいだぞ」
ぼくが安達くんのうしろにいる、いかにもリア充寄りな短髪少年に目を向けると、彼があわてたふうに顔の前で手を横に振った。
「おれじゃねえって。さっき、体育の授業でグラウンドの外から声をかけられた。おまえのサバゲー仲間だってよ。C組の神永に伝えたいことがあるから、呼びだしてくれって」
誰? 戸惑わずにいられなかった。そんな人物の訪問を受ける心当たりなんて、まったくなかった。そう。ぼくにはサバイバルゲームに興じる趣味なんてないのだから。




