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姫様とユリウス兄様

 竜帝様の城を出た私は、先に帰られたお二人を全力で追っていました。話をしていた時間はそんなに長くありませんでしたし、お二人の乗った馬車はそこまで速度を出すものではありませんから急げば追い付けると判断致しました。


 お二人が馬車を使って私はどうやって移動しているか、ですか?

 当然自分の足で走っております。とは言えお二人の前で息を切らしたり、汗をかいているようでは侍従失格ですゆえ全力は出しておりませんが。


 竜帝様の居城から姫様の屋敷までをまっすぐ通るには、途中で赤竜の住処を通らなければなりません。しかし彼らは戦いを好み、通るものに無差別に勝負を仕掛けますので、恐らく姫様達は迂回しながら帰られているでしょう。


 そんな赤竜をやって来るそばから蹴り飛ばしつつ私は急ぎます。最悪追い抜かして先に屋敷に着いてしまったら、夕飯にデザートを一品追加で作ってお待ちすることにしましょう。


 結局私は姫様達より早く屋敷に戻ってしまい、帰ってきた姫様達は既に屋敷に居る私に驚いていらっしゃいました。


「あれ?なんでレイラが居るの?」


「竜帝様のお話が予定より早く終わったとの事でしたので、最短ルートで戻って参りました。姫様達と合流しようかとも思いましたが、抜かしてしまったようです」


「なぁルー、レイラさんって何者なんだよ…最短ルートって赤竜の縄張りだろ?なんであそこを突っ切って傷どころか汚れすらないんだよ…」


「私が生まれたときにはもう居たんだから知るわけないでしょ。それにレイラが規格外なのなんて今更じゃない。」


「それはそうだけどさ…」


「気にしたら負けよ負け。それより今後の予定を話したいのだけれどルイは大丈夫?」


「あー、そろそろ一回帰らないと親父が切れるな、ある程度予定が立ったら連絡くれればそれで良いぜ、こっちもそれに合わせて準備するから」


「ええ、じゃあレイラを通して連絡させるわ。レイラもそれで良い?」


「仰せのままに」


「それじゃまたね、ルイ」


「おう、ルーも気をつけろよ」


 結局ルイ様はお食事は召し上がらずに帰って行かれました。折角作った料理が勿体ないとも思いましたが、姫様が一緒に食べましょうと誘って頂けましたので、ルイ様よく帰ってくれましたと内心で感謝しました。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 姫様と食事を取っているとユリウス様が帰宅されました。いつもより随分早いお帰りのようです。流石にユリウス様の前で食事をしているわけにもいかないと立とうとしましたが、その前にユリウス様に止められました。


「あぁ、レイラは座ったままで良いよ。どうせルーが一緒に食べようと言ったんだろう?」


「ありがとうございますユリウス様」


「それにしても驚いたよ、ここ最近はずっと出掛けなかったルーが、竜帝様のところに行ったって急に聞いたからね。どうしたのかと思って今日は早めに帰ってきたよ」


「えぇ、久々におじいちゃんに会いたくなったの。もう随分と会ってなかったもの」


「そっか、竜帝様はお変わりなく?」


「相変わらず元気だったわ」


「僕も当主になったら挨拶に行かなければいけないね」


 そう言って少し困ったような笑いを見せるユリウス様ですが、当主になると言った際に姫様の笑顔が少しこわばったのには気付いていないようです。


「そうね、5大家長の当主として、挨拶しなくてはいけないものね。でも兄様、兄様が家長になったら今人間達と進めている協調計画はどうするの?」


「問題はそこなんだよね…家長になれば代表戦争には出なきゃいけない。でも人間を殺してしまえばこの計画はおじゃんだし、ヴァンプロード家が5大家長では無くなっても今のまま計画を進めるのは難しくなるんだよね…」


 ユリウス様が進めている計画とは、人間もそれ以外の種族も分け隔てなく暮らせる世界のための計画です。


 ユリウス様は昔から知恵のある生き物同士が殺し会うのはおかしいと言い続け、5大家長の息子と言う立場さえ利用して平和を訴え続けていました。いずれは魔大陸も人間大陸も関係なく暮らせるように人間側にも協力者を作り計画を進めています。

 ユリウス様が居なければ代表戦争以外でも争いは絶えなかったと言われるほどです。


 そんなユリウス様ですが父君が亡くなられ当主を継ぐ、となると問題が発生してきます。5大家長の当主は必ず代表戦争に出なければいけません。そしてユリウス様が戦争に出てしまうと人間との共存をうたいながら人を殺すという矛盾が起こってしまうのです。

 そのためユリウス様は悩まれており、それを知った姫様はユリウス様の代わりに当主になろうとしております。とは言えユリウス様も妹の姫様を可愛がられておりますから当主になることを反対するでしょう。それゆえ姫様はユリウス様にはなにも言わず5大家長との接触をはかっているのでした。


「当主の決定会議迄はまだ半年ほど有りますから、その間に対応を考えれば大丈夫よ。兄様ならきっと平気」


「ルーがそう言ってくれると嬉しいなぁ。うん、でもなるべく早く話を纏めたいから明日からしばらくは人の大陸に行ってくるよ。協力者ももう少し増やしておきたいからね」


「わかりました。兄様が頑張っている間、私も何か出来ないか考えるわ」


「うん、ありがとう。でも無理はしないでくれよ?僕の家族はもうルーしか居ないのだから」


「えぇ、それではもう食事も終わりましたので私はこれで」


 そう言って姫様は食堂を出られて自分の部屋へ戻って行きました。私も姫様の食器を片して、お風呂を沸かして姫様に入っていただかなくてはなりませんので席を立ちます。


「それではユリウス様、私もこれにて失礼致します」


「うん、いつもルーの面倒を見てくれてありがとうレイラ。無茶をやろうとしたら止めてくれよ?」


「それはもう、姫様にお怪我などさせるわけにはいきませんから」


 そう話ながらも片付けは進め、私も食堂を後にしました。

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