閑話 襲撃の魔族 3
「俺こそはヴァンプロード家の当主ラルクの息子ユリウス!親父を殺したお前ら人間を皆殺しにしてくれる!」
パーティー会場の壁を壊して現れたその男の魔族は入ってくるなりそう宣言した。
この事態に一番驚いたのは、今襲われようとしているではなく勇者ボレアス達と話をしていたユリウス本人だった。
「貴様、我らを謀ったな!やはり魔族は信用ならないようだな」
更にはボレアス達はあの襲撃者をユリウスだと信じてしまったようだ。ユリウスに向かって得物を構えている。
「違います!私が本物のユリウスです!パーティーに来ている他の人に聞いてみればわかります…あ!」
弁明を述べながらボレアス達から視線をずらすと ユリウスを名乗る偽者は人間に襲いかかろうとしていた。ボレアス達を捨て置き魔族のもとへ駆けるユリウス。
「間に合わない…!」
偽ユリウスの爪が切り裂こうとするその瞬間、音もなく忍び寄っていた人物が偽ユリウスを羽交い締めにした。
「ロイド!」
「ユリウス様の名を語るとは…これ以上ユリウス様の名を汚すことは許しませんぞ!」
「誰だこの爺は!誰かこいつを殺せ!」
偽ユリウスと一緒に入ってきた魔族がロイドに襲いかかるが、ロイドは羽交い締めにしているその体勢から、偽ユリウスを支柱に据え、蹴りで他の魔族を近付けさせない。その時の衝撃で首が絞まったのか偽ユリウスは白目を剥いて意識を飛ばしたようだ。
「人間達の避難は大丈夫だ!ロイド!後はこいつらを叩きのめすぞ!」
ロイドが戦っている間に襲われていた人間達の避難を済ませたユリウスも戦いに加勢する。
「そこの勇者とやら!魔族を前に立っているのが勇者の仕事ですか!それならば邪魔ですので表に出てくだされ!」
ロイドは戦いながら未だに展開についていけずに固まっているボレアス達に発破を掛ける。彼らは武器を抜いてはいるがどちらに加勢する事もなく魔族の戦いを眺めていたのだ。
「…!後から来た魔族を倒すぞ!」
ロイドに促されたボレアスはひとまず人間を襲っていた魔族を捕らえるために動き出した。
ロイド一人でも拮抗していた戦況は、ボレアス達の参戦により大きく傾き、5人の魔族は全員捕らえられた。
「何故私の名を騙った?」
「ふん!何が人間との友好だ!ラルク様を討たれ未だにそんなことを言うのは貴様が腑抜けだからだろう!そんな貴様を当主とは認めん!」
「ならば当主会議の際に代わりに立てばよかっただけだろう?」
「そもそもそんな制度事態が生ぬるいのだ!何故力で決めない!?我らを説き伏せることなど出来ぬと知れ!」
「その力でも敗北しておりますがの…ホッホッ」
ロイドがそう言うと彼らもそれ以上の反論は出来ずに黙りこんだ。
ボレアス達は魔族の話している内容は詳しくは分からなかったが、主張の食い違いが平行線を辿るのだけは判断できた。
「ユリウス殿。この度は疑ってしまい申し訳なかった!」
ボレアスがユリウスに頭を下げる。
「顔を上げて下さいボレアス殿、私は気にしていませんから」
ユリウスは別に謝罪を求めてなどいなかった。それよりも魔族と人間の和平を望む場に襲撃があったことを逆に謝罪したいくらいだった。
しかし相手が謝罪をしてくれるのであればそれを利用しない手もない。彼の望む道は険しく、その為に使えるのであれば使わなければならないこともある。
「申し訳ないと思っているのであれば…今後もこのような場があった際にまた参加していただければ嬉しいのですが」
「ふむ…ユリウス殿のように真に和平を望むものがいることはわかりました。私でよければ力になりましょう」
ボレアスがユリウスの提案を飲むとリィカは少し険しい顔をしたが何もいうことなく黙っていた。
こうしてユリウスは勇者の協力を取り付けることが出来、魔大陸に戻って行った。
ボレアス達も今回の事件で魔族について新しく知ったこともあり、悪さをする魔物や魔族を退治するのには変わりはないが、襲いかかってこない魔族には話をする努力を始めたのだった。
ルージェ視点の話を一話入れて次の章に入る予定です。
次回更新は水曜日予定です。




