第5話 学園の戦い 5/5
直は、怪物に立ち向かっていった女子生徒、という話題に晒されることを恐れてか、翔虎が走り去るのを見送ると、いち早くその場を離れ生徒たちの中に紛れ込む。そのまま亮次の姿を探したが、生徒や教師でごった返すグラウンドに、亮次の姿を見ることはできなかった。
パトカーや救急車のサイレンが校門から聞こえてくると、直は校舎に入っていった。
「直!」
「成岡さん!」
「成岡ぁー!」
文芸部室前の廊下でドアに手を掛けた直を呼ぶ声があった。
文芸部のメンバーたちだった。美波、矢川、こころが、それぞれ直の名を叫びながら駆け寄ってくる。
「先輩……」
直は振り返って呟いた。
美波は直の肩を掴むと、
「怪物に蹴り入れたの、あれ、直でしょ? どうしてあんな危ないことしたの! ……どうしたの? 泣いてるの?」
「は、はい、ちょっと、ムカついて……あ、これは、あの怪物が爆発した時の塵が目に……」
直は、そう言って涙を拭った。
「部長の言うとおりだよ、成岡さん。あんな危険なことを……しかも理由が、ムカついたって……」
矢川も、ため息混じりの半ば呆れ顔で漏らした。
「はい。ごめんなさい。心配させてしまいました」
直は三人の先輩に頭を下げた。
こころひとりだけは、
「いやいや、私は見直したです。みんなビビって見てるだけだったのに。たいした根性ですよ!」
「こら、こころちゃん。焚きつけるようなこと言わない」
美波はこころを叱責して、
「とりあえず部室に入りましょうか」
部室に入り、椅子に座った直に、美波は、
「もうあんなことしたら駄目だからね。わかった?」
「はい。約束します」
直は、そう言うと、もう一度頭を下げた。
「まあ、またあんな怪物が出てくるとは思えないけど」
と言った矢川の言葉に、こころが、
「それがですね、矢川先輩。商店街でも同じような騒ぎがあったらしいんですよ」
「商店街で?」
「はい。そこでも、凶暴そうな怪物と鎧の戦士が戦って、鎧の戦士が勝ったらしいんです。で、これがそのときの写真です。商店街にいた友達が送ってくれました」
こころは携帯電話の画面を一同に見せた。直たちは、その画面が見えるよう、一方向に固まる。
こころが見せた画像は、翔虎と槍ストレイヤーが戦っている場面を不鮮明ながらも捉えていたものだった。
「うん。怪物のほうは違うものだけど、鎧の戦士はさっきのグラウンドにいたのと同じ人に見えるね」
矢川が言うと、
「女の子……よね?」
美波は、確認するように矢川の顔を見た。
「うーん、そうですね……背も低いし、体つきも細いし、何よりこの格好だからね。これで男ってことはないでしょ」
画像の中の戦士は、腹部と腿を露出したビキニ状のアーマーを着て剣を構えていた。
「どんな子だった?」
「え?」
直は、こころの質問が自分に向けられていたことに気が付いたのか、携帯電話の画面からこころに視線を移して、
「な、何がですか?」
「成岡、怪物にキックかました時、この戦士ちゃんの側まで行ったよね。どんな子だった? かわいかった?」
「さ、さあ……ヘルメットで顔は全然見えなかったから……あ、でも」
「でも?」
「きっと、かわいい女の子だと思いますよ」
「ふーん……私も成岡と一緒に行って近くで見たかったな」
「危ないことはいけません」
それを聞いた美波は改めて諫める声を出した。
携帯電話が振動して、直はすぐに着信を受けた。
「もしもし……うん、今、部室。翔虎も来る?」
それを聞いた美波は直に向かって微笑みながら、
「翔虎ちゃんから? お茶煎れて待ってるって伝えて」
「……お茶煎れて待ってるから。うん」
直はここで声を小さく絞り、
「……お疲れ様」
直は少しだけ微笑みを浮かべて電話を切った。
「南方先輩、私手伝います」
携帯電話をしまった直は、椅子から立ち上がり、給湯セットのある棚まで駆け寄っていった。
――2016年4月8日




