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錬換武装ディールナイト  作者: 庵字
第1話 ディールナイト誕生!
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第1話 ディールナイト誕生! 2/3

 ビキニアーマーとでも言うべき鎧姿に変身したショウコ。

 変身と同時にその周りの地面は、クレーターのようにショウコを中心に円形に窪んでいた。


「ショウコ! 来た!」


 ナオの叫びに我を取り戻したように、ショウコは表情を固くした。

 鎧の怪物がすでに目前まで迫っていたのだ。

 怪物は斧を振り上げる。


「跳べ!」


 怪物の体越しに聞こえた男の声に従い、ショウコはナオを抱え上げて地面を蹴った。


「え?」


 ショウコはまさに跳び上がった。その高さは数メートルに達していた。

 見下ろすと、眼下に先ほどまで眼前に迫っていた鎧の怪物が見える。その右手の斧は、ついさっきまでショウコとナオがいた地面に突き立っていた。

 そのナオは今、ショウコに軽々と抱きかかえられて腕の中にいる。呆気にとられたように目を丸くして。

 放物線を描いてショウコは怪物の後ろに着地した。

 着地時には、足の鎧が駆動する音がして、着地による衝撃を和らげてくれていた。

 ショウコは、差し出された男の手にナオを預けて、


「あの、これって……」


 ショウコは、きょとんとした目で男を見上げた。男は頷いて、


「戦ってくれ。ショウコくん」

「え? 戦う? どうやって?」

「武器がある。左腕を見るんだ」


 男に言われてショウコは左腕を見た。そこには消灯したディスプレイが腕鎧に埋め込まれるように付いていた。


「これは」

「そう、君の携帯だ。スーツの一部として組み込まれている。タップするんだ」

「何か出た」


 黒い画面をタップしたショウコは、そこに浮かび上がったものを見て言った。

 横長の画面がスロットのドラムのように左、中央、右と三分割されている。中央には数字の〈1〉、左側には、


「スペード?」


 トランプのスペードのマークがあった。左側のスペードマークも中央の数字の〈1〉も黒に霞が掛かったようなグレー色をしている。


「数字のほうをフリックして〈6〉を出すんだ」


 ショウコは言われたとおり、数字の1の上に指を乗せ滑らせる。数字は〈2〉〈3〉と、スロットのドラムのように回転していく。そのどの数字も〈1〉と同じようにグレーだったが、〈6〉だけは、くっきりとした鮮やかな黒色をしていた。

〈6〉を表示させると、同時に左側のスペードマークも同じようにくっきりと黒く色合いを変えた。

 そして、スペードと〈6〉が合わさると、何も表示されていなかった右側のドラムに、剣のイラストが表示された。


「6だけ色が黒い。何か絵も出た、剣?」

「そうだ、他のは、まだ持ってないんだ。右下の赤いボタンを二回タップしろ」


 画面には、三つのドラムの他に、右下に赤い〈Go〉と書かれたボタンもある。ショウコは言われるがまま、そこを二回タップする。


「うわ! 手が!」


 瞬間、ショウコの両方の(てのひら)が光を帯びた。その光は、掌にある小さなカメラのレンズのような部分から放たれている。


「右左どっちでもいい。壁か地面に手を打ち付けろ!」


 男の言葉に従い、ショウコは屈み込んで地面を叩くように右手を打ち付けた。

 光ったレンズから光の帯のようなものが地面に向かって吸い込まれ、そして、


「わ! 何?」


 一瞬で地面から何かが飛び出てきた。飛び出た勢いで空中で回転を続けるそれは、


「剣だ!」

「そうだ、ショウコくん! 君の武器だ!」


 ショウコは目の前で回転する剣の柄を右手でキャッチした。剣が飛び出てきた地面は、そこから剣が抜け出てきたかのように細長い溝がクレーターのように刻まれていた。


「来るぞ!」


 男の叫びに、ショウコは顔を上げた。

 鎧の怪物が斧を振りかざして向かってきていた。

 ショウコは剣をそのまま両手で構えると、向かってきた怪物の一つ目に向け、斧が振り下ろされるよりも早く、カウンター気味に剣先を突き刺した。

 怪物は突進の勢いを止められて仰け反り、ショウコもその反動を受け後方に少し浮かび上がった。


「やった!」


 ショウコが叫んだが、男は、


「まだ来るぞ!」


 怪物はすぐに仰け反った上体を引き起こし斧を振り下ろした。が、ショウコはその場で跳び上がる。怪物の斧は地面に食い込んだ。


「うわ! 飛んだ!」


 男に肩を借りて立っているナオが、ショウコの動きを目で追って言った。


「凄いよ! ショウコ!」


 ナオが更にその動きを賞賛する間に、ショウコは空中で上段に剣を構えていた。

 鎧の怪物は空振りに終わった斧を引き抜こうと右腕を動かすが、それよりもショウコの一撃のほうが早かった。

 落下しながら打ち下ろされたショウコの剣は、怪物の右腕を肘関節で切断した。斧を引き抜こうとしていた動きの反動で、怪物はまたも仰け反った。


「やった! これであいつは丸腰」


 ナオはそう安堵の声を漏らしたが、男はショウコに向かって、


「油断するな! 再生するぞ」

「再生?」


 ショウコは男と怪物を交互に見ながら言った。

 男の言葉の通りだった。

 怪物の失われたはずの右腕は、切断面からコードやシャフトが伸び絡まるようにして、元通りの右腕に再生されつつあった。

 男はショウコに向かって、


「足の裏から取り込んだ地面の土を材料にして再生しているんだ」

「土で?」

「そうだ、右腕だけじゃないぞ、見ろ」

「あ!」


 男が指し示したように、最初の突きでダメージを受けたはずの怪物の頭部も、ほとんど再生を遂げていた。

 切断され地面に突き立っていた怪物の右肘から先は、塵のようにボロボロに崩れて消え去っていた。


「こんなのどうやって倒せばいいんだ?」


 ショウコは困惑した表情で言った。


「〈シャットダウンアタック〉を使うしかない」

「何それ?」

「画面の右上に緑のボタンがあるだろ」

「ある」


 男に言われて画面を見たショウコは、その右上に緑色のボタンがあることを確認した。そしてそれをタップしたが何も起こらない。

 すぐにショウコは赤いボタンの時と同じように、緑色のボタンを二回タップした。すると、三つのドラムが回転を始め、左から〈S〉〈D〉〈A〉という表示になり、画面全体が点滅した。

 ショウコは点滅した画面をさらにタップすると、


「うわ!」


 ショウコの両方の(てのひら)が輝きだした。剣を作り出したときと同じように、掌のあるレンズのような部分から光が発せられたのだった。

 その光は手にしていた剣の表面を撫でていき、剣は全体が輝きを放つ光の剣と化した。剣を両手で構え直したショウコの顔を剣の光が照らす。


「この状態にすればあいつを倒せるんだね」


 ショウコは、今や完全に再生した怪物と相対して言った。


「そうだ、だが、一回しか使えないぞ」

「え?」

「しかも、三十秒で効果は消える。その間に決めてくれ」

「そんな大事なことはもっと早――」


 ショウコの言葉は、再生した斧を振りかざして襲いかかってくる怪物の攻撃を避けるため中断された。


「説明しようとしたらひとりで発動させてしまうんだからな。理解が早くて助かるが」


 二人のやりとりを、やきもきした様子で聞いていたナオが、


「そんなこと言ってる間に、もうあと二十秒くらしいかないよ! ……ああ、あと十五秒!」

「大丈夫だナオ、いける」


 ショウコは、怪物の斧による振り下ろし、あるいはなぎ払いの連続攻撃を巧みに(かわ)しつつ、


「もらった!」


 そう叫ぶと、大降りされた斧の一撃を躱して、がら空きになった怪物の頭部めがけて上段に構えた剣を振り下ろした。

 その一撃は頭部を砕き、怪物の胸の中程までその刀身をめり込ませた。

 剣を覆っていた光は拡散、同時に怪物の全身も粉々に砕け散り、ショウコの周囲は濛々(もうもう)とした土煙と塵に満たされた。


「ショウコ!」


 ナオの叫びに答えるように、煙の中からショウコは左手を上げながら歩み出てきた。右手は口元を覆っている

 怪物が砕け散ると同時に、ショウコが手にしていた剣も消え去っていた。


「ショウコくん、まだ終わりじゃないぞ。最後の仕事が残ってる」


 男の声にショウコは出て来た煙のほうを振り返ると、


「何? あれ」


 煙の中に、宙に浮いてぼんやりと光るものがあった。


「プログラムだ。回収してくれ。どちらかの手を当てるんだ」


 言われるがままショウコは煙の中に戻り、ちょうど目の高さに浮いている淡い光球に右手をかざした。

 すると光は掌のカメラのレンズのような部分に吸い込まれていき、左腕のディスプレイからチャイムが鳴った。

 見ると、スペードのマークと数字の7が並んで表示され点滅しており、それは数秒で消え、元のドラム表示に戻った。

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