第1話 ディールナイト誕生! 3/3
「……ありがとう。ショウコくん」
男はため息をついて、ショウコに礼を述べた。
「ナオ」
ショウコはナオに近づき、
「足、大丈夫?」
「うん、ちょっと捻っただけ」
ナオはそう言って男の肩から手を離すと、自分の足で地面に立ち、
「大丈夫、平気」
そう言って笑った。それを見たショウコは微笑むと、
「……さて」
と、視線を男に向けて、
「どういうことなんですか、これは?」
真面目な表情になって言った。
ナオも男のそばから離れてショウコの隣に行き、不審者に対するような怪訝な目で男を見る。
「話せば長くなるんだがな……」
「簡潔にお願いします」
ショウコはそう言って、
「と、とりあえず、先にこの格好、何とかして下さい……」
と、顔を赤らめ、隠すように下半身を覆った白いビキニパンツに手を当てた。
「似合ってるぞ――」
男は言いかけて咳払いした。ショウコが眉を吊り上げて睨んでいたためだった。
「……パネルを二本指で右にスライドしてくれ、解除ボタンが出てくる。テンキーの初期設定はゼロ四つだ」
ショウコが言われた通りにタッチパネルを二本指でスライドさせると、いくつかのボタンが配された画面に変わる。そこにあった〈解除〉と記されたボタンをタップすると、画面にテンキーが浮かんだ。
ショウコはゼロを四回タップ。瞬間、ショウコの全身は一瞬光に包まれ、鎧のシルエットが崩壊、いくつものブロック状になって地面に落下した。
ブロックは落下して地面に落ちると同時に粉々に砕け散り塵を舞わせた。
「……戻った」
ショウコは、完全に変身前の服装に戻った自分の体、両腕、両脚に目をやる。携帯電話は左手に握られていた。
「さて……」
男は頭を掻いて、
「何から話したらいいものか」
「僕のほうも、何から訊いていいのか。頭の整理が追いつきません」
「僕? ショウコくん、自分のことを『僕』って言うのか。かわいいな」
「何かおかしいですか?」
ショウコは、むっとした顔をした。
「いや、おかしいってことはないよ。かわいいって。希少だろ? 一人称を『僕』って言う女の子って。ディールナイトスーツも似合ってたし……咄嗟のことだったが、君が女の子だったから、私はディールナイトを託しても問題はないと思ったんだ。見ただろ、あの鎧のデザイン。あれを男子に着させるのは抵抗あるじゃないか。どのみち、あのままだと私たち三人ともやられていた。この場にいたのが誰であろうと、ディールナイトになってもらわなけらばならなかっただろうけれどね。でも、なるべくなら似合う人に装着してほしいじゃないか。君のような、小さくてかわいい女の子に。そう言う意味では僥倖だった……どうした?」
喋り通しだった男は、二人の様子が変わったことに気付いた。
ショウコはますます眉を吊り上げて男を睨み、ナオは神妙な表情で腕を組んでいる。
「ど、どうしたんだ、二人とも……?」
「僕……」
ショウコが小さな声で、
「……男です」
「……え?」
男はショウコの顔に視線を止めた。
男と目を合わせるのを避け、逆にショウコは視線を下げると、助けを求めるようにナオに顔を向けた。
ナオは口に手を当てて、小さく吹き出した。
――2016年4月2日




