研究員の日記 八月四日(プロローグ 23/25)
研究員の日記 八月四日
再度の調査を明後日に控えた今日、とんでもないことが判明した。
〈遺跡〉が稼働しなくなったのだ。
見た目は何も変わっていないが、明後日に向けて試運転しようと研究員が操作パネルに触れても、いつものようにパネルが光ることはなく、チューブにも何も変化は見られなかった。
研究員は激しく動揺していた。
所長らも総出で調査に当たったが、元々どうやって動いているのかわからないブラックボックスのため、原因など探りようがなかった。
監視カメラの記録映像を見ても、何もおかしな事はない。
最後に遺跡を起動させたのは、定期チェックを行った一昨日のことだ。映像にも残っている。
研究員がパネルに触れると、その指の動きを追うようにパネルは光の尾を引き、中央のチューブが開く。研究員がその中に雑多な機械を入れる。再びパネルを操作、チューブが閉じる。中が光で満たされ、それが消えると機械は消えている。また操作するとチューブに光が満ち、晴れると見事に破壊された機械が姿を現す。今まで何回も何十回も目にした光景。
遺跡を分解してみようという案も出たが、見たところ遺跡を構成する壁に一切繋ぎ目のようなものは見えない。まるで一体成形されたようだ。
ドリルで穴を開けてみる提案もされたが、もうそれしかない、と議論が煮詰まりそうになると、提案した本人でさえ実行には二の足を踏むような言葉を漏らした。
当然だろう。壊れたのか、ただ調子が悪いだけなのか、原因がまったくわからないのだ。我々の手で本当に壊してしまっては目も当てられない。
出た結論は、「明日また様子を見よう」という当然といえば当然のものだった。
誰もが諦めに近い沈痛な表情を浮かべる中。亮次ひとりは、心底悔しそうに唇を噛んでいた。
叢雲博士のほうは、ほとんど無表情だった。それが現しているのは、諦めなのか?
私には窺い知ることはできなかった。




