表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマリリス  作者: 飴屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

8 到着

アヴィオールの手を借りて、アマリリスは馬車から降りた。

旅行鞄を勝手に持とうとするアヴィオールを威嚇しながら、長旅でシワになったスカートの裾を直す。


「まずは、村長さんにご挨拶?」

「そうだね。それで、向こうの状況を訊こうか」

「向こうの状況?」

「そう。管理人のこととか」


雪かきがされて歩きやすい道を歩く。


「管理人って、どうして?」


この後直ぐに会うのだから、訊く必要はない。

そう思って尋ねると、アヴィオールは少し考え込んだ。


「君は、ラウドルップ公爵の令嬢に会ったことは?」

「ないわ」

「一度も?」


アヴィオールに訊かれ、アマリリスは頷いた。アマリリスは十六歳。アシュリー・ラウドルップの年齢は知らないが、二、三歳年上ぐらいだろう。

それなら、知り合いでもおかしくないとアヴィオールは考えているようだ。


「えぇ。会ったことはない。通っていた学園は違ったし、私は十歳で学園を辞めて、教会に入っ…たから」

「へぇ。そうなんだ」

「うん。…甘いお菓子の並んだお茶会と恋の話ばかりで、居心地が悪くて」


あの頃を思い出すと、ため息が出てしまう。

物語に出てくるような悪い人はいなかった。ただ、どうしてもあの空間にいることが耐えられなかったのだ。


「そっか。そのおかげで、俺は君に出会えたんだね」

「そうね。学園に通ったままだったら、会わなかったでしょう」


何を当たり前のことを言っているのだろう?


貴族の世界は、思ったよりも広い。同じ舞踏会にいたとしても、すれ違うだけだ。


「いや、うん。…そうだよね」

「とにかく、大きなパーティーに出たことはないし、公爵家の方とお知り合いになれるような家ではないので、お会いしたことはないの」


そう言えば、賭けの途中だったとアマリリスは思い出した。


任務の話かと思いきや、もしかして家名を知る手懸かりを探している…とか?


家名を知られたところでアマリリスの本当の名に辿り着くことはないと思うけど、用心したほうがいいのかもしれない。

そんなアマリリスの心中を知ってか知らずか、アヴィオールは任務の話を続けるようだ。


「そうか。俺も会話したことはない。…けど、噂はよく聞いたよ」

「どんな?」


何となく、嫌な予感がした。


「我が儘、傲慢、高飛車…。それはもう色々と」

「…でも、今は罪を償っているのでしょう?」

「そうだといいけど、そうじゃなかった時のことを考えないとね」

「…例えば?」

「最悪の場合、封印石の場所は自分達で探さなければいけないかもね」


ここに来る前に見た地図を思い出す。

封印石の森は、とても広い。

詳しい数をアマリリスは知らされていないが、それでも封印石の森と呼ばれているくらいだ。そこにある魔獣の封印石はたくさんあるのだろう。


「それは、好都合ね。調査としょうして、封印石を片っ端から解けるんだもの」


アマリリスはニッコリと笑った。





「ようこそ、わが村へ」


村長は言った。


「小さな村で、何もおもてなしが出来ず、申し訳ない」

「いえ、任務ですから。気にしないでください。ご迷惑をおかけします」


小さな集落だった。

教会は小さく、もちろん宿もないので、アマリリス達は村長の家に泊まらせてもらうことになっていた。


「今日はもうお休みになられますか?」

「いえ。向こうの管理人の方に挨拶を」


ここに来るのに時間がかかり、もう日が傾き始めていた。

夕食の支度をする時間だ。


「そうですか。…天候が荒れてきているので、少し心配ですね。足元に十分お気をつけて」

「ありがとうございます。因みに、管理人はどういったかたですか?」

「あっ、えぇと…」


それまでにこやかだった村長が、急に慌て出した。口許に手を当て、言葉を探しているようだ。


…それだけで、アシュリー・ラウドルップがどんな人か、何となく分かる気がする。


身分ある人だから、悪口に取られる言い方は出来ない。でも、褒めるところもない。


そんなところだろうか。


「いや、私は、最初に挨拶しただけなので、なんとも。はい。食事や身の回りのことを世話しているメラニーは元気で良い子ですよ」

「メラニーさんですか。その方は長いのですか?」

「えぇ。最初は交代制だったのですが、いつの間にか、メラニーが専属になりました」

「はは。そうですか」


それはそれで怖い話のような気がするのは、気のせいだろうか。

後はみんな世話係をいやがった、ということでは…?


「では、今は管理人の家には、そのお二人が住まわれているんですね」

「えぇ。あと、住んではいませんが、一人。雑務を担う男がおります」

「騎士ではなく?」

「はい。城から派遣された男で…。名前はなんだったかな」


村長が考え込むも、答えは出てこないようだった。影の薄い男性なのだろう、とアマリリスは思った。

罪人とはいえ、貴族の女性の住む家に出入りが許されているのだ。

しかも、城から派遣されている。

きっと、元騎士や聖職者のおじいさんなのだろう。


「そう言えば、最近顔を見ないような。なぁ、お前達は知っているか?」


村長は部屋の外でこちらを伺っていた人達に声をかけた。


「言われてみれば、最近はあまり見ていませんね」

「また、昼寝でもしてるんじゃない?」

「雪かきで腰をやったって言ってたから、寝込んでるのかと…」

「えー。それを口実にサボってるんでしょ」


口々に娘達が言う。

なんだか気安い口調だ。

きっと、そのおじいさんは穏やかな人なのだろう、とアマリリスは教会で長老とあだ名で呼ばれている神父を思い出した。


その人が間に入ってくれたら、気難しそうな管理人さんも話を聞いてくれるかな…。


何せアマリリスがしたいのは、封印のかけ直しではなく討伐なのだ。


「あぁ、ジェフさんなら、城への報告に行くって言ってたわよ」


飲んでいたお茶のカップを置く。

そのときにかしゃんと音をたててしまい、アマリリスに注目が集まってしまった。


「その方は、ジェフさんと仰るんですか?」


フォローのつもりなのか、アヴィオールがその女性に聞いた。


「えぇ。初日に挨拶に来てくれて。手が空いたときには、村の手伝いもしてくれる良い方ですよ」

「戻られるのはいつ頃でしょう?」


アマリリスが訊く。


「五日くらい日前に出たから、そろそろ戻ってくる頃だとは思いますけど。天候次第ですかね」

「そうですか。ありがとうございます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ