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アマリリス  作者: 飴屋


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7/7

7 一流

「ローズ、アシュリー、イリス、カレン、アトリ、ソフィア、コーデリア…」

「アヴィオール、流石に外では声に出さないほうがいいと思う…」


女性の名前を呟く神父は、怪しさ満点だろう。


「あぁ、そうだね。もし訊かれたら、赤ん坊の名付けを頼まれている、とでも誤魔化そう」


涼しい顔で告げられる。


…この人は、他の職業のほうが向いているのでは。


具体的な職種を思い浮かべようとして、それ以上考えることを頭が拒否した。


「うーん。そうか、名付けの本とかも参考になるかな…」


そう言いながらも、どんどんと女性の名前が書かれていく。

真っ白な紙に最新式のペンで書くことだろうか。


「あぁ、そうだ。アマリリス。これから行くところだけど」

「なに?」

「管理者の名前はなんて書いてあった?」


アマリリスは折りたたんだ紙を広げる。


「アシュリー・ラウドルップとあるわ」

「まだ、家名は名乗れるのか…」

「ラウドルップって、あの?」


ガタコトと揺れる馬車の中、アマリリスは聞いた。


「そう。アシュリー・ラウドルップはラウドルップ公爵の令嬢にして、罪人」

「…封印石を壊したと聞いた」


ふわりとアヴィオールが微笑む。


「いたずらに封印石を破損し、そのまま放置した罪、だね。覚悟を持って封印石に挑む君とは全然違う」

「…」


アマリリスは王都での魔獣討伐騒ぎを新聞や噂話でしか知らない。アヴィオールはそれを察したようで、メモ帳を閉じると胸ポケットにしまった。


「君も知っているだろう? 十ヶ月ほど前の、魔獣復活騒ぎ」

「えぇ。封印石が壊され一頭の魔獣が王都近くに現れた。騎士団が討伐したのだけど、その際に他の封印石を傷付けてしまった。そのためさらに三頭の魔獣を倒さなければならなくなったと」


王都近くでの魔獣騒ぎだ。

政治を行う中心地で、王や貴族を含め人も多く住む。

そんな中での戦いは難しいものだっただろう。


「君がいれば、直ぐに倒せたかな?」

「冗談はやめて。私は封印が解けて、まだ、ぼんやりとした形の時にとどめを打っているの。完全に復活したら、一瞬で吹き飛ばされてお仕舞いよ」


アマリリスは、魔術についてはかなりの訓練を重ねたが、狩りや戦闘の訓練はしていない。

出来るのは、止まっている標的に当てるだけだ。

もしも封印が解けて時間が経った魔獣に出くわしたら、ひとたまりもない。


「魔獣は強いうえに賢い。私なんかが敵うわけない」

「良かった。出来ることと出来ないことの見極めが出来るのは、一流の証拠だ」

「…」


どうやら、アヴィオールに試されていたらしい。


「そんな無鉄砲に見えてたの?」

「ごめん。君は、賢く勇敢な女性だ」

「私は別に…」


言いかけたとき、馬車がゆっくりと止まった。


「あぁ。ついたかな」

「ここ?」


アマリリスは窓の外を見た。

木の柵で境界線を示した先には、いくつもの小さな家が点在している。


「違うよ。ここは封印の森に一番近い村。この先に王立騎士団の訓練施設があって、森はそのさき」

「随分遠いところで降りるようだけど…」

「今回は時間がかかりそうな任務だから、まずは、村人に挨拶が必要だろう? その後に騎士団の建物に立ち寄って、今回の説明を」

「分かったわ」

「封印の森は危険な森だから、外部の人間に敏感なんだ。だから…」


馭者が扉を開けた。

馬車の音を聞き付けたらしい、村人たちの姿が遠くに見えた。

先に降りたアヴィオールがアマリリスに手を伸ばす。


「お手をどうぞ。シスター」

「ありがとう。アヴィオール様」


アマリリスは淑やかな笑顔を作った。

その笑顔を見てアヴィオールは呟く。


「…まさか、アフロディーテ? それともヴィーナスか。セラフィナ…アンジェリカ…」




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