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傷物少女と幻想騎士の聖釘物語 - レクイエム・イヴ  作者: まきえ
第6章 I'm (not) ready.

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93/102

14th(13th) day.-11 TAIL ZWEI/釘、扉、鍵 - ひとりじゃない - /THIS UGLY AND BEAUTIFUL WORLD


G.T. 13:08


 宗次郎の構える"魔灯剣エクスキューショナーソード"の刃が、鋭い軌道で振り抜かれた。的確に、ジューダスの急所へと金色に輝く切っ先は、淀みのない殺意となり、―――


「っ―――!」


 ジューダスの神槍の穂先に阻まれる。


 眩い火花を散らす互いの刃が、狂いなく何度も衝突する。刃こぼれもなく、繊麗された金属同士の接触に、互いの狙いが同等なものだと認識させた。


 今のジューダスは、決して手を抜いていない。先程とは違い、宗次郎の覚悟に答えようと、雷と帯同した神槍が、間合いの外から迫りくる。


 対し、圧倒的な魔力の圧縮による"魔灯剣"の刃は、それすらたやすく弾き返す。以前とは違う形態ではあるが、その驚異は微塵も変化がない。


「はっ―――!」


 大人と子供ほどの体格の差がありながらも、互いの一撃は寸分狂わない精度で攻め立てる。余りある魔力により、振り抜く切っ先からは熱を帯びた衝撃が放たれ、それすらも人の身を斬り裂く威力と化していた。


 数合の打ち合いの結果、お互いが息を合わせたかのように距離を取る。静かに神槍を構えるジューダスに対し、宗次郎が肩を上下に揺らして呼吸が乱れていた。


「坊主、アレイスターの魔炉、確かに言ったな。第二魔法の結晶だと、違いないな」

「言ったよ。それがなにか問題でも?」

「ああ。問題しか無い。第二魔法『占領す(Master )る真実(Therion)』はアレイスター=クロウリーにだけ許された血系魔法だ。その結晶体を無理やり同期させたなど、お前の()()が乗りこなせるはずがない」

「・・・・・・」

「すでに気付いてるだろう。"魔灯剣"の()()()()がその証拠だ」


 見れば、わずかにだが宗次郎の持つ刀に刃こぼれの後が見られた。


「お前の覚悟は、尊敬に値する。その志には、頭が下がるよ。だが、()()では、それを担ぐのに荷が重すぎる」

「そうかもね。だけど、それを降ろせば、ボクの覚悟は無意味になる。ねぇちゃんが身を呈してここに立つように、ボクにだって立たなきゃいけない。それが、ボクの覚悟だからッ―――!!」


 一息で跳躍する宗次郎の身体が、ジューダスの懐へと潜り込む。下から振り上げた刃が、ジューダスの身体を斬り裂こうとうねりを上げ、


「グッ―――!」


 神槍の穂先に軌道を変えられ、火花を散らしながら空を切った。体勢が崩れた宗次郎の身体に神槍の柄が迫り、その勢いのまま宙に飛ばされる。受け身を取れずに背中から地面に落ちた宗次郎が、苦痛の声を漏らした。


「・・・・・・お前の抱えてるものがお前を象るというのなら、もう手合わせは不要だ。オレの刃はアオイの覚悟のそれだ。()()()()が、その証だ」


 ジューダスは構えを崩さない。神槍に施した魔力の雷は、その存在を主張するかのように跳ねる。空気を焼き、首を絞めるほどの殺意を孕んで、目の前にいる相手へと提示された。


 それを受けて、痛みを堪えてゆっくりと立ち上がった宗次郎が、刃こぼれした刀に再び魔力を濃縮させ、次第に輝きを取り戻していく。その様子を、ジューダスはただ静かに待っていた。




 待っている。次の一撃で、雌雄を決すると。宗次郎の覚悟を尊重しつつ、けれどそれを打ち破ると。互いの覚悟の形を、今ここで証明する刃となる。




 心身を錬磨し、自己の修養を刃に乗せて、お互いの間合いの接点が魔力の摩擦により、空気が避けていく。先の言葉から、2人は口を開かない。どちらがその帳を下ろすのか―――




「―――月天(げってん)穿(うが)て、―――」




 ジューダスの詠唱が、宗次郎の足を動かした。




_go to "no one lives forever".

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