14th(13th) day.-3 TAIL EINS/銀の星 - 約束の日はすぐに -/COMING SOON - PROMISE DAY
J.T. ??:??
腹を貫く激痛に意識を削られる。治療班の男が言っていた通りだ。全身麻酔が切れ、全身が動くようになるにつれて、次第に腹の痛みが大きくなる。
創縁が熱傷とも刺傷とも取れる痛みを訴える。傷口こそはホムンクルスの技術により、今では自らの肉として機能している。だが、焼付刃の肉に対する拒絶反応が無いわけではない。
新たな肉から熱すら感じる。視界にちらつく光は痛みに対する生体反応だろう。これほどの『痛み』なら、意識を失えという防衛機構。
鍛錬された自らの肉体に嫌気すら指す。だからこそ、戦場に戻される。恐怖はない。後悔はない。だが、明らかに自らの能力に影響を与えることは間違いない。戦闘に与える影響を計算に入れなければ、確実に足元をすくわれる。なら、覚悟を決めなければ。
「クリザキさん。無理はしない。補肉が完成しても、ダンチェッカーの炎による火傷は、並の火傷とは質が違う。痛み止めを服用してください」
「痛っ―――いや、大丈夫、だ。夜までには、・・・・・・慣れる」
こちらの言葉を聞いて、ため息が聞こえた。拒否された以上、強要はできないのだろう。
鎮痛剤の投与を拒否するのは、決して意地ではない。薬学に対して知識もなく、ホムンクルスの技術自体自分には管轄外だ。当然ながら、処置を施した側からすれば、こちらの判断は良くないものと考えるだろう。これからの戦いに、痛みを引きずって参加すること自体が愚策だと。
だが、この傷にはきっとどの鎮痛剤も効果を及ばさないだろう。この判断は、ただの勘でしか無い。根拠を示そうにも、"経験則"としか言えない。
以前にも戦闘により大怪我をしたことがあった。ケルベロスを顕現したノーウェンス=ダンチェッカーほどの脅威ではないが、より地獄に近いバケモノと対峙した際に追った傷。如何なる薬が効かず、傷自体が自然治癒するまでの約1年の間、常に痛みとの戦いがあった。
それはもはや"呪い"に近い。負ったときと同じ痛みを、治癒が済み、傷が完全に失くなるまで常に感じ続けていた。これが地獄がもたらす"呪い"なのだろうと判断した。だから―――以前よりも確実に地獄を体現するバケモノだ。傷自体がないのなら、この痛みは暫く続くだろう。数時間か。数日か。数ヶ月か―――数年か。落ち着くまでなけなしの"鎮痛"に縋るくらいなら、受け入れたほうが精神的に楽だ。
「三基、は・・・・・・修復終わった、のか?」
「はい。すでに夜に向けて"肉体改造"に入ってます。本来、完全な調整には数日かかりますが、ダンチェッカーがいない以上、十分すぎる戦力にはなるかと」
「なら、よかった・・・・・・」
痛みを和らげるために深く息を吐く。それでも激痛は否応なしに襲ってくるが、徐々に呼吸を落ち着かせ、痛みを軽減させていく。応急処置ほどの効力しかないが、思考を痛み以外のものにするスペースを作るのが先決だ。
「・・・・・・驚いた。バイタルが落ち着いている。クリザキさん、何をしたんです?」
「ただの呼吸法さ。酸素量をわずかに増やしたに過ぎない」
通常の呼吸では、血中酸素濃度は一定だ。だが、肉体の損傷により血流が変われば、身体に取り込まれる酸素量が減少する。酸素をより取り込める呼吸法で血中酸素濃度を上げれば、わずかではあるが、肉体の回復力が上がる。
高気圧装置があればもう少し効率よく酸素を取り込めるが、カプセルに入りながらの治療をしている場合ではない。なら、自前で呼吸法を知っておけばとある人に教えてもらった技術だ。
「―――大変だ! クリザキはいるか!?」
アギトの部隊の者が騒がしく治療室に入ってきた。鷲の腕章を付けた通信兵が青ざめた表情で肩を上下に揺らしていた。
「よかった、まだここにいたか・・・・・・。いち早く出動していなくてよかった」
この怪我だ。意識を取り戻して数時間経つが、ようやくここまで肉体が慣れた頃だ。すぐに立って戦場に戻れるほど、この身体は戦闘向きではない。
「何かあったのか?」
「・・・・・・ああ。あの魔女がいないからと侮っていた。実は―――」
_go to "jigsaw, leg-hold.




