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傷物少女と幻想騎士の聖釘物語 - レクイエム・イヴ  作者: まきえ
第5章 天と地の狭間

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12th day.-2/その【先】にあるもの - ゆめにっき -/DREAM DIARY



 ―――夢の続きの話だ。私の知らない彼女は、いかなる場面でも、魔法使いたらんとしていた。そして、最小の代償と共に解決しようとしていた。自信の命が尽きるその時すらも。

 夢の内容が真実かはわからない。そんなことを追い求めるために私は覚悟を決めたわけではない。彼女が如何様に過ごしてきたかは、この際関係がない。事実の真贋を説いたところで、事が有利になるわけではないから。


 ―――だけど、たくさん苦しんできたんだ。


 そう感じた。多くの死地を乗り越え、彼女は私と宗次郎を引き取った。私は、彼女に救われた。彼女の心の裡はわからないが、彼女の決断を私が批難することはない。

 墜ちていく残骸の中で、彼女は最後に見たものは何だったのだろう。事故だと思われたものが、戦闘による墜落だった。なら、彼女を亡き者にした誰かはどこにいるのだろうか。あの爆炎の中で、通常なら共に死んだだろう。だが、とても()()()()()()()()()。直感でしかないけれど、そう感じたのは事実だ。


 ジューダスが以前言っていた、多くの犠牲が出た戦いがあった。その顛末を目にした気がする。亡者の中を駆け抜けた彼女は、最後に引き金を引いた。如何なる熾烈な戦闘も、終わりを告げるのは呆気ないものだ。そこに行き着くまでに犠牲にしてきたものは、それを肯定することはない。でも、その先を求めた彼女の決意は、きっと本物だった。


 ―――夢の終わりを感じた。朝の光が重く閉じた瞼を叩く。この感情は、朝の覚醒とともに飛散するのだろう。けれど、彼女の歩んだ歴史は、私の中に残るはずだ。そう、信じた。




「―――ん」

 部屋の中に朝の陽光が差し込んでいる。寝付けないと思っていたが、どうやらあの後すぐに眠りについたようだ。我ながらよく出来た身体だ、冗談めいたが、違和感を覚えた。

「腕のしびれ、残ってる・・・・・・」

 デリンジャーを使った影響か、筋肉痛のようなしびれを感じた。素人ながら十数発の弾丸を撃った衝撃に身体が悲鳴を上げていた。魔力酔いがなかった分、身体の変化に気づきにくかったのかもしれない。練習とは言え、これで身体にガタが来ていては、この先使い所で躊躇する。

「アルスには相談しておこう。何か対策があるのかもしれない」

 陽の光が出る時間まで寝付いていたぐらいだ。疲労を無碍にしないよう気をつけよう。


 着替えを済ませて居間へと向かう。PDAを確認しても、青い波形が3つあるのみで、特に変化はない。現状は問題ないようだ。

「起きたか、アオイ」

 庭先からジューダスの声がした。縁側に出てみると、ジューダスは神鎗を持って何やら魔法陣を敷いているようだ。

「おはよう、ジューダス」

「ああ、おはよう。身体に大事はないか?」

「あ、そのことなんだけど」

 僅かだが、両腕にしびれがあることを伝える。それならば、とジューダスが湿布を取り出した。

「この家にあった湿布にジーンの"耐える者(リドヴィナ)"を参考に術式を組んだ。おそらく、デリンジャーを使った反動だと思うが、身体に異変があってはいけない。蘇生ほどの効力はないが、治癒力の向上にはなる」

 一度居間に戻り、袖をまくって前腕に湿布を貼る。ひんやりとした感触がしびれを癒やす。不思議と先程まで感じていたしびれはきれいに無くなっていた。

「ありがとう、ジューダス。ばっちりしびれが消えたわ」

「今は術式の効力で抑えてるに過ぎない。午後にでも全快するだろうが、それまでは休んでいるといい」

 ジューダスにわかったと伝え、朝食の準備へと移った。


 軽めの朝食を終え、ゆっくりとした朝を過ごす。時折PDAの表示範囲を広げて確認していたが、これといった変化はない。過信しすぎるのはよくないだろうが、こうして視覚的に確認できるのは魔力探知能力のない私にはありがたい。


///


 午後になり、ジューダスの言う通り湿布を剥がしても腕のしびれはなくなっていた。アルスにも話をしたが、昨日はオーバーワークだったようだ。今日は控えめに練習するとしよう。

「マスターの腕の心配もあるんで、緊急用に何発かはオイラの魔力を直接込めた弾丸を作っておきやすか」

 昨日の射撃演習の代わりに、今日は再装填の手順を確認した。デリンジャーは二発の弾丸を撃った後、通常の拳銃のように自動で薬莢が飛び出てくる構造がない。自分で銃身を起こし、バレル内から薬莢を取り出すしかない。その流れを手こずる事のないように流れを身体に覚えさせる。

『マスター、昨日と違って割と筋が良いっすね』

「ん~。でも、なんかね。もっとスムーズになれればなって思って」

 夢の中の映像を脳内で反芻する。彼女の動きには何一つ無駄がなかった。スパイ映画を見ているかのように、流れるような動きをイメージする。射出、排出、再装填までの動きに無駄がなければないほど隙がない。銃の性質上、そう何度も再装填することは想定されていないだろうが、できるに越したことはないだろう。

『マスターの動き、なんかナツキみたいっすね』

「一応参考にしてる。もっと綺麗だったから」

 私の言葉にアルスが『ん?』と不思議そうな声を出す。まるで()()()()()()()()()言葉に引っかかったようだ。

「今日の夢で夏喜が出てきたの。その時にデリンジャー(あなた)を使っていて、その動きがかっこいいなって思って」

 そう言ったが、アルスは返事をしなかった。

「アルス、どうかした?」

『いや、何でもないっす。一日ですごい上達してたからただのビックリっす』

 アルスがそういうのなら、昨日よりは成長したのだろう。腕の疲労の事を考えて、今日は装填の練習だけで終わらそう。




_go to "operation aptemiσ".


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