7th day.-6/目覚めの朝、決意の朝 - マム -/MUM
「―――さて、明日の決戦についてだが」
明日。あの惨劇から六日目の明日、全ての現況である悪魔たちが再来する。雷の白髪に蒼白の魔眼。一度目は負け、二度目は友を失い、そして三度目の明日。全ての決着をつけると、決意した。もうこれ以上の惨劇は御免だ。全てを解き、悪魔の再来を迎撃する。
「とにかく、もう一度この建物には結界を敷いておいたほうがいい。おそらく、派手な戦闘になる。半壊ではすまないだろう」
「そうですね。たしか、以前ナツキが使用していた骨董魔具がありましたね。それなら、建物の全域をカバーできるはずです」
「そうだな。まぁ、結界を敷くのはすぐにでも終わろう。大事なのはどう戦うかだ」
「ええ。どちらを相手に執るか決めておけば、戦いやすいでしょう」
「ロキはオレがやる。今までの雪辱も含め、奴には借りがありすぎる」
「ジューダス、あまり私情を挿むべきではありません」
「・・・・・・いや。どちらにしても、お前じゃあいつとは相性が悪すぎる。あいつは根っからの魔術師だ。正面切っての戦いでは、数手届きまい」
「そう言われれば、・・・・・・そうですね。ワタシもあの白髪の巨躯の方が戦いやすい」
「なら、決まりだな」
決戦を前に、こちらでの作戦を取り決める。これは一つの戦争のそれに近い。こちらは敵軍の攻めを読み、それを迎撃しなければいけない。待ち受ける側は、冷静な判断と勝てるだけの条件を汲み取らなければいけない。なら、勝てる相手を選ぶのも道理。ジューダスは蒼白の魔眼、ジーンは雷の白髪。その組み合わせは必然と組まれる。
「問題は・・・・・・、やはりソウジロウですね」
「そうだな。あちらが万全なら、坊主の存在は脅威だ。オレが造った魔法障壁の塊を意図も簡単に崩壊させたのだ。坊主が前に出るのなら、危険だ」
「・・・・・・うん」
あの日の宗次郎は、なんの迷いも無しに私の横腹を穿った。あの威力は、あの時の本がなければ、私はおそらく死んでいただろう。何の変哲もないパンチでああなのだ。その威力はジューダスや蒔絵のあの氷牙でさえ凌駕してると思う。
「アオイ、あなたはやはり・・・・・・」
「大丈夫。私も戦える、私にはアルスがいるし、これでも足は速い方なの。逃げるだけなら、時間は稼げる」
「・・・・・・だが極力戦闘には参加するな。お前が死んでしまったら意味がない。奴らはお前の命をとる気はないだろうが、坊主の意志が掴めん。殺す気のない奴が操られていたと考えてもああするとは思えん。戦闘になれば―――最悪死ぬぞ」
「大丈夫よ。きっと、大丈夫だから・・・・・・」
「マスター。安心してくださいよ。マスターにはオイラがいるじゃないっすか。大丈夫。マスターはオイラが護りますよ」
「うん。期待してるよ、アルス」
気持ちはやけに澄んでいた。―――いや。どちらかというと高鳴りを感じる。私は、自分自身の血の沸騰を感じている。恐れていた惨劇を、今までの中で最も冷静に、心待ちにしている感さえある。これは、私に自信を与えてくれる。きっと勝てる、元に戻れる、と気持ちを引き締めてくれる。
「―――ごめんください」
「「!?」」
誰だろう? こんな時に訪問なんて。ましてや平日に来客なんて今までなかった。
「・・・・・・アオイ。十分に気をつけろ」
「どういうこと?」
「そうです。今の今まで、ワタシたちでさえ気配を感じ取れませんでした」
「・・・・・・うん。わかった」
ジューダスとジーンが警戒する中、玄関へと向かう。
「はい、どなたでしょうか?」
「あぁ、キミはこの家の者かい?」
玄関の扉を開けると、そこにいたのは一人の男性だった。見た目の歳は三十代前後に見え、茶の短髪がそれを幼く見せる。
「そうですが、なんでしょうか?」
「ここは夏喜さんの家だろう。なら、キミが葵さんかな?」
「えっ、あっ、はい。そうですが・・・・・・、どちら様でしょうか?」
「申し遅れてすまない。ワタシの名前は栗崎菊。キミの友達の、―――栗崎蒔絵の兄だ」
「蒔絵の―――お兄さん?」
佐蔵が話していた蒔絵の兄。歳が離れていると言っていたが、これならば納得がつく。
「ああ。今日は一つ、キミに話があって来たんだ。ワタシは以前から夏喜さんとは知り合いでね、少しはキミの事も聞いているよ」
蒔絵の兄と名乗る人―――栗崎菊はキリッとした目線でそう言った。
「アオイ、どうし・・・・・・―――お前、・・・・・・キク、か?」
私の様子を見に玄関に現れたジューダスの顔色が変わる。
「そうだよ。久しいな、ジューダス。そうか、キミが・・・・・・」
「えっ? どういうこと?」
ジューダスと蒔絵のお兄さんが知り合い? どういうこと?
「なぜ、キクが・・・・・・ここに?」
「そうか、キミがいるのなら納得がいく。妹が世話になったな」
「なっ!? なら、お前・・・・・・」
「そうだよ。今日はそのことで話があるんだ」
「あの、立ち話もなんですし、えっと、菊さん? お上がりになって下さい」
「ああ、すまないね、急な訪問で。それでは、失礼してもらうよ」
「・・・・・・キク」
「ジューダス、キミがそんな顔をする必要は無いさ」
「あの、どうぞ。粗茶ですが・・・・・・」
菊を居間へと通す。急な来客でジューダスとジーンも緊張している様子だ。ましてや、蒔絵の兄となると尚更だ。
「やや、どうもすまない」
「いえ、雑な持て成ししかできなくて」
「いや、そう持て成さなくても結構だ。今日はキミに謝罪のつもりで来たのだから」
「私に、謝罪?」
「そうだ。蒔絵についてのね。キミたちには妹が無礼に迷惑をかけた。すまない」
急に下げられた頭は畳につけられ、蒔絵のお兄さんは謝罪の形をとった。
「そんな、頭を上げてください。それに蒔絵は・・・・・・」
「それ故にこうして来たのだ。蒔絵のことは聞いている。これは兄であるワタシの責任でもある。すまなかった」
さらに深々と頭が下げられる。
「菊さん、頭を上げてください。私の所為なんです。私の方こそ、菊さんに謝らなければいけないのに・・・・・・」
「そうだ。キク、すまない。頭を上げてくれ」
「ジューダス、葵さん。これはワタシのケジメだ」
「・・・・・・やれやれ。これではキリがありませんね。三人とも、一度頭を上げてください」
「ジーン・・・・・・」
「あなたが彼女の兄上でしたか。それならあなたも魔法使いなのですね?」
「そうだ・・・・・・。ワタシも蒔絵も、その血族の末裔だ」
「葵さん、まさかキミまで魔法使いになっていることは驚きだったが、魔法使いとしての蒔絵がキミやジューダスたちに絡むとなると、まさか・・・・・・」
「キク、お前は何か知っていてここに来たんじゃないのか?」
「ジューダス、どういうことです?」
「・・・・・・知っていることは知っている。だが、まだ確定している訳ではない。今日は蒔絵の謝罪も含め、それについて確認に来たのだ」
「知っているって・・・・・・、何のこと?」
「葵さん、あなたは夏喜さんの死んだ日のことを覚えているか?」
「えぇ、少しは・・・・・・」
「ならその意味は?」
「・・・・・・それは、つい最近知りました」
「そうか。キミは、いつからこちら側になったのだ? 夏喜さんの話だと、キミは普通の少女だと・・・・・・」
「まだ一週間と経っていない。いろいろとこちらの事情でな、半ば無理やりにこちら側の人間になってしまった」
「そうか・・・・・・。なら、やはりキミも、―――巻き込まれてしまったんだね」
「巻き込まれた?」
「ああ。ワタシはね、以前は夏喜さんの部下だった。六年程前に夏喜さんの元を離れ、欧州の渡っていたんだ。だが、昨日蒔絵のことを聞いてね、急いで日本に戻ってきたんだ」
―――哀愁に溶ける目で、茶髪の青年は語らいだ。
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「夏喜さんは世界でも随一の魔法使いでね、夏喜さんはある重大な仕事をしていた。それは十年にも及び、キミたちも知ってる彼らに関係するものだ」
「彼らって、やっぱりあの二人組のことなの?」
「そうだ。キミのいう二人の正体はまだ把握できていないが、以前夏喜さんが潜入していた組織のものだろう」
「組織、だと?」
「今判っていることは彼らは世界をひっくり返せるほどの力を隠していることだ。その組織の名を―――"銀の星"といい、欧州の何処かに本拠地があるとされている」
「"銀の星"だと!? 百年前の魔術結社がまだ存在しているのか!?」
「ジューダス、なにか知っているのですか?」
「・・・・・・ああ。だが、あの結社は開祖が国外追放された後、弟子によって再結成されたが、すでに壊滅しているはずだ」
「そうだ。公式な記録だと、第二次世界大戦中の1944年5月25日、戦火に紛れて数人の魔術師が崩壊させた。その中には確か、―――ジューダス、キミもいたそうだね?」
「どういうこと?」
「以前オレを呼び出したジジィがその結社殲滅隊のリーダーだった。当主自体を討伐はできなかったが、あの時確かにオレたちの手で結社を崩壊させた」
「彼らは生きていたのだよ。誰が立て直したか知らないが、彼らは世界中を周り、世界に散らばる神秘を統一し、神が齎した奇蹟を手中に収め、世界に再び宣戦布告しようとしている」
「だがキク。当時の結社の頭首は七十手前のジジィだった。あの時の戦いでかなりの重傷を負っていたうえに、そのジジィも三年後にヘイスティングスで死んでいる。そんなヤツらに、世界に牙を向けられるものか」
「そうも言えまい。現に彼は十年前に君の前に立ちふさがっていたではないか。彼が契約を完了させていたと考えられなくもない。それ故に教会は彼らを敵視している。現に彼らはヴァチカンで厳重に保管されていた聖遺物をも持ち出した。すでにそれだけの力がついているのだ」
「菊さん、詳しく話してくれませんか。どうしてか、私も他人事には思えなくて・・・・・・」
「そうしよう。ジューダスが言う通り、その組織はすでに二度崩壊している。だが何者かの手によって彼らは三度世界に出現した。これほど往生儀の悪いヤツらは未だかつていなかったが、彼らには世界を敵に回すだけのある"神秘"を手に入れた」
「それがヴァチカンから盗まれた物ですか?」
「そうだ。ヴァチカン内で幾重にも張り巡らせた結界の中から、何一つ痕跡を残さず持ち出した。それだけの力を持つものがすでに何十人と組織内にいるのだ。ヴァチカンは世界中の魔術関係者の手を借り、彼らの後を追った。夏喜さんもその仕事に手を貸した一人でね、彼女は独自で彼らのアジトを突き止め、潜入していた。夏喜さんによる計画はすべて順調だった。彼らが世界から集めた神秘もほぼすべて把握できていた。現在していた聖遺物も新たに見つかった。世界に散らばる古文書や魔術書、その他の多くの古代魔具も発見できた。盗まれた物も確認できたよ」
「あの、先ほどからでている盗まれた物って、一体何なんですか?」
「・・・・・・そうか、そこから説明しなければいけなかったな。ヴァチカンから盗まれた物はジューダスもよく知っているものだよ」
「オレが?」
「―――"ヘレナ"と、言えばわかるだろう」
「なんだと!? あの釘のことか!?」
「ヘレナ? 釘?」
「"ヘレナの聖釘"。世界に三本とないとされる聖遺物の一つで、その聖釘は現段階で二本しか発見されていない。一本は無事だったが、もう一本が盗まれたのだ」
「"ヘレナの聖釘"といえば、聖杯や聖骸布などと同等の価値があるとされるキリスト教の聖遺物です。"ヘレナ"と銘打たれてるのは開祖が処刑で磔にされる時に手と足に打ち付けられたときのものですね」
「ほう。そちらの方も詳しいな」
「いえ、ワタシもその宗の者でして」
「なるほど、どうりで。だが、あなたもジューダスと同じようで幻想騎士のようですね」
「ええ、そうです。もっとも、ワタシは今回初めて呼ばれた者ですので」
「いや、キミはどうやらなかなかの力を受けているようだ。きっと騎士としての務めを守れるだろう」
「おい、話が逸れているぞ」
「おお、悪かった。話を戻そう。夏喜さんは組織に潜入し、かなりの信頼を得ていたそうだ。教会の最終報告書では組織の最高幹部にまで昇格している。そこでいろいろなモノの存在を確認できたが、現頭首の存在だけが不明でね、我々も未だ調査中だ」
「それで、そのヘレナって聖遺物はどうなったんですか?」
「発見されたよ。夏喜さんが十年も掛けて潜入していたんだ、あちら側の信用もあってなんとか騙せたみたいだよ」
「そうか。それで、ヘレナも今はヴァチカンへ戻ったのだろう? なら一体何の問題がある」
「・・・・・・それなんだが。―――未だ、行方不明だ」
「どういうことですか・・・・・・?」
「夏喜さんはヘレナを回収し教会へ帰還しようとした。あちらにはダミーを置いていたらしいけど、運悪く見つかってしまってね。その時に夏喜さんがスパイだということが発覚してしまったんだ。それによって夏喜さんは処分されたよ。それが三年前のあの墜落事故だ」
「・・・・・・そんな。それなら、その人たちは夏喜一人を殺すために、何百人もの命を奪ったというの?」
「そういうことだ。夏喜さんほどの魔法使いとなると、一晩で町一つ壊滅させるほどの出来る兵器と一緒だ。手元にあれば戦力になるが、夏喜さんはフリーランスの魔術師だったため、いつ敵となるかわからない。教会にとって、飛行機という限定された"籠"はちょうどいい犠牲だったんだ。ヴァチカンもそれによって再びヘレナを失うことになったが、彼らの手の内から離れたことが大きなプラスになったと解釈したようだ。夏喜さんは、ヴァチカンからすれば噛ませ犬に過ぎない。彼女一人失ったところで、世界は変わらないと思ったんだろうな」
「そんな・・・・・・。それじゃあ夏喜は、無駄死にってこと?」
「ふんっ、ジジィたちの考えそうなことだ」
「そうだな。彼らは結果にしか目がない。過程がどうなろうと、結果さえあれば納得するのが彼らだ。だが、夏喜さんは命と引き換えにあちら側の機密を知ったようだぞ」
「機密?」
「あの組織の中ではある重要キーワードに『zero』というものがでてきた。我々の調査の結果、つい先日、ある人を示すことが判明した。それが―――キミの弟だ」
「宗次郎が? なぜですか?」
「キミは弟の宗次郎君の経緯を知っているかい?」
「・・・・・・ええ」
「宗次郎君は十年前に夏喜さんによってあちら側の組織から回収した子供の様でね、詳しいことは未だ不明だが、どうやらあちら側の重要な秘密を握っていると推測される。宗次郎君自身がそうなのか、それとも宗次郎君が持つ力か眠っている能力なのか、いろいろと憶測はある。だが、彼らが宗次郎君だけを連れ去ったことは事実だ」
「アオイ、たしか坊主はナツキがお前の両親に預けたって言っていたな」
「ええ。ロキが言っていたことだから事実かどうかわからないけど、嘘には聞こえなかったから・・・・・・」
「そのロキという者だが、彼女は夏喜さんの最終報告書にも記録が残っていた。あちら側の組織が呼び出した幻想騎士で、組織内では特別な地位をもっているらしい」
「・・・・・・ロキ=スレイプニール。キク。ヤツの魔術特性は何か記録があったか?」
「一つだけ。能力自体は不明だが"占領する真実"と呼ばれる血系魔法があるらしいが―――」
「―――キク。その情報は正確か?」
一瞬、ジューダスの声のトーンが下がった。言葉一つに敵意が混在する、そんな声だ。
「そうだが、なにか心当たりでもあるのか?」
「いや、確信はない。もしそうだとすれば、辻褄が合わない」
「どういうことだ?」
「そいつはヘイスティングスで死んでいるからだ。組織を統括するものが、幻想騎士であるはずがない」
「・・・・・・なるほど。反魂な存在に、世界が翻弄されるわけがないからな。どうやら、もう一度対策を練る必要があるらしいな」
「ああ」
「ねぇ、どういうこと?」
「"銀の星"の開祖は死んでいる。その開祖が幻想騎士で再び生を得ているのなら、そいつを呼び出した別の魔術師がいるということだ。なるほど、どうやらロキの正体も読めてきたぞ」
「なら、勝機はあると?」
「ああ。ヤツは当初の計画通り、オレが相手をする。ジーン、お前は手を出すな」
深く、見えない敵に対して、確実なる敵意を示している。
「しかし、なぜナツキはソウジロウを彼らから奪ったのでしょうか? やはり、彼らにとっての切り札だったからでしょうか?」
「その可能性もあるだろう」
「・・・・・・宗次郎」
「葵さん。あなたが悔やむ必要はない。彼らの目的がどうであれ、宗次郎君はキミの弟であることには変わらない。キミは、ここで気持ちを揺らがしてはいけないんだ」
肩を強く掴まれた。そこに蒔絵に対する罪悪感も覚えた。彼自身の使命感も、これからの運命も、私が背負うであろう未来も、彼らへの敵対心も、菊の腕から伝わった。私には宗次郎を救うことが出来るだろうか。それだけが私の心に大きく揺れている。その気持ちが崩れるのはもう御免だ。蒔絵も失い、宗次郎も失うわけにはいかない。
「菊さん。私は諦めませんよ」
肩を掴む目を見る。その瞳に、私は誓うのだ。
「十年も一緒に過ごした私にはわかります。あの子の事実を、彼らは知らない。宗次郎はやさしい子なんです。だから、私は諦めません」
「葵さん。ワタシは蒔絵の兄であるが、元は夏喜さんの部下だ。あの人には腐るほどの恩がある。恥ずかしい話、蒔絵よりも共にした時間は長い。しばらくこちらに残るから困った時は呼んでくれ。いつでもキミの力になろう」
掴まれた手は肩を離れ、私の前に差し出された。その差し出された手のひらは大きく、見れば、ジューダスのようにたくさんの傷があった。これは、栗崎菊が栗崎蒔絵の兄ではなく、倉山夏喜の部下として、魔法使いとしての傷跡であり、証拠なのだ。
「はい。よろしくお願いします」
差し出された手のひらを力強く握る。交わされた言葉は、私の覚悟として、彼の誓いとして契られる。
「ああ、こちらもよろしく願おう。さて、ワタシはそろそろ退散しよう。キミたちもまだすることがありそうだし、ワタシも少しこの町ですることがあるのでね」
「キク。こちらも何かわかれば連絡しよう。お前の情報はとても参考になった。礼を言う」
「キミに感謝されるのは初めてだな。キミたちの問題が早く解決できるよう願っているよ」
「菊さんは何処に滞在するのですか?」
「何処って、この町には帰るべき家があるんだ」
「あっ、それなら送ります」
「それならワタシもお供しましょう」
「ははっ、これは心強いボディガードだ。ああ、それならお願いしよう」
「オレもキクとはもっと話をしたいところだが、この家を空にするわけにはいくまい。オレはアオイとジーンが帰ってくる間に結界を張りなおしておくさ」
「うん。それじゃあお願いね」
「ああ、気をつけてな。キクも、健闘を祈る」
「・・・・・・ああ」
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