表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

『禁忌の力解禁!』

 塊が目の前まで来たあああぁぁ!?

 うわああああああぁぁぁっ!?


『お、落ち着けハヤト。気持ちは分かるが、もう少しポジティブになった方がよいぞ……。それに安心しろ、ワシは一筋縄ではいかんよ! いくぞ――――』


「――――グラビティ・フィールドッ!!」


 ジャークさんが叫ぶと俺を中心に半径1メートル程度の範囲に魔力の波動が広がり、メキッという音を立てて石床が軋む。

 同時に直撃するかと思われた黒い魔力の塊は、一瞬で床に叩きつけられ消滅したのだった。


「むぅ……久しぶりで力の加減が難しいのぅ。まあ、神殿を壊さぬように出来たから上出来かの?」


 と、余裕を見せるジャークさん。


 凄い、凄いよ!? これならレドルーツの洗脳魔法なんて当たるわけないじゃん!?


「忘れたか? ワシは禁忌の大魔法……。お主のような小物に洗脳されるはずもないわ、かっかっかっ!」


「小癪な真似を……」


 ギリッと歯の根を鳴らし、レドルーツは悔しそうに顔をしかめるが、指先を向けたまま先端に真っ黒な魔力を集め始める。


「ならば、フンッ!!」


 次の瞬間、掛け声と共に諦めるどころか連続して魔法を繰り出してきたのだ。

 指先から放つ黒い塊はマシンガンのように次々と放たれこちらに向かって迫り来る。


 そして俺は、迫り来る塊を見てビビる。いやまてチビリそうだ。目を閉じたい。頭抱えてしゃがみたい。今すぐ脱兎の如く逃げ出したい。でも主導権はジャークさんだ。俺は諦めた……。


 だってえええぇ、喧嘩もしたことないんだぞおおおぉ!

 あんな弾丸みたいなの沢山飛んで来たらめちゃくちゃ恐すぎるってえええぇ!


「無駄だ」


 と、ジャークさんの言葉通り俺の不安も無駄となる。

 全ての洗脳魔法は、周囲に広がる紫色に輝く円錐状の空間に触れた瞬間、床へ次々と叩きつけられ消滅していったのだ。

 レドルーツは魔法が叩きつけられているにもかかわらず追撃を緩めずにいたが、やがて連続した魔法攻撃は途絶え儀式の間に静寂が戻ったのだった。


「……無駄か。そうであったな。禁忌の魔法人が持つ力の根源とは――重力。我が魔力さえも平伏すか……。やはり、手元に欲しい。その力があれば法界さえたやすく手に入るだろう」


「ふん、お主の策略に手を染めるつもりなど毛頭ないわ。無駄だと分かったならば、ワシの力で大人しく殲滅せよ!」


 圧倒的に有利だ。洗脳を封じられたレドルーツなんてただの人間と変わらない。

 でもちょっとまてよ、今ジャークさんの力は重力だって言ってたよな?

 重力って俺が魔法陣に吸い寄せられたみたいに動きを封じるだけなんじゃ……。

 もちろん、それだけでも凄い力だと思うけど、重力を使ってどうやって殲滅なんてするんだ?


『かっかっかっ、ハヤトよ。重力とは物体に付加を加えるだけが能ではないぞ。応用はいくらでも効くのだ』


 え? じゃあ、どうやって……。


『ワシには細々とした闘い方は性に合わぬが、強力な力を使えば神殿ごと破壊しかねない。まあ、見ておれ』


「――グラビティ・ブレード」


 静かに魔法の名前を唱えると、今度は俺の右手に魔力が集まり――細身の剣が具現化する。

 そして剣の調子を確かめるように片手で軽く振ると妖艶に輝く紫の刃がブンッと音を立てて空気を切り裂く。


「うむ、よい感じだ」


 ジャークさんは満足そうに言うと剣先をレドルーツに向けた。


「ほぅ……その細い軟弱な剣で我を殲滅すると言うのか? 笑わせる。しかし、どんな力を宿す剣か知らぬが果たしてその刃が我に届くか楽しみだな」


「ふん、お主の魔法がワシに一切効かないと知ったくせに、ずいぶんと余裕だのぅ?」


「フッ、我の魔法が効かぬのは予想外だったが、禁忌の魔法人を召喚する上で――何も用意がないと思うたか?」


 言うと同時にレドルーツは大きく跳び退き、一気に石像まで後退するとニヤリと口元を緩ませる。


「我がしもべ達よ! 存分に力を奮い、ジャラークを弱らせるのだ! その後でゆっくりと我の虜にしてくれる……。さあ、ゆけっ!!」


 魔法陣を取り囲むローブの人達から、一斉に魔力が溢れ出す。


「なにっ!? 油断しておった!? こやつらは魔女、魔人であったか!?」


 どうやら全員ただの操り人形ではなかったようだ。

 二十人近い人間。いや、魔法使いと言うべきか……。

 それぞれの魔法使い達が様々な呪文を唱え始める。

 さっきまで余裕を見せていたジャークさんから、焦りの感情が溢れ出し俺に伝わった。


『レドルーツめ。すでに様々な属性を持つ魔法人達を召喚しておったか。……ハヤト、少々やっかいだぞ』


 え、やっかいって? 確かに人数が多いとは思いますけど、この重力の空間が魔法を寄せ付けないから大丈夫なんじゃ……。


『まあ、普通ならな。だが重力に逆らう程の貫通力がある攻撃魔法。もしくは、転送系でワシの真上と真下から攻撃されるとやっかいなのだ。力場の出力を上げれば貫通系の魔法だけならなんとかなるが……』


 そうか、確かに自分の立っている場所まで重力がかかってたら身体が持たないよな。完璧に思えた魔法にもこんな弱点があったのか……。


 じゃあせめて、出力上げて貫通系の魔法だけでも!!


『これ以上は難しい』


 え、それって、もしかして俺のせいで力を制限されてるから……。


『いや、これ以上重力を増せば天井が崩れるかも知れん、そうなればワシらは生き埋めだ。――むぅ、くるか!!』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ