第30話 「新しい仲間と新しい職業」
また新しい職業の冒険者が現れる。
••✼••トスター冒険者ギルド••✼••
トスター伯爵から解放されて、宿屋で部屋を取ってから、トスターの冒険者ギルドへ寄った。
流石にサイチ村よりは大きな街だけあって、クエストも数多くあるようだ。
そして、メルセンベルグ国王に召喚された勇者の情報も時々入ってくるので、ある事に気付いたのだった。
今日のトロは、オッサンの姿のまんまで、ロンデルは黒豹の獣人女性の姿に、ロプロプは赤いドラゴノイドの女性の姿に、ロキシーは小さなロック・ゴーレムの姿だった。
トスター冒険者ギルドの受付嬢は、そんなトロ達にはもう慣れたもので、普通に対応してくれる。
トロがオッサンの姿で居るのは、トロをこの世界に召喚したメルセンベルグ国王が沈黙している事と、どうやらトロの顔を知らないようだとの事。
冒険者ギルドの受付嬢の話しでは、勇者達は魔王を倒すための、過去の勇者の武具を探して今も世界中を旅しているらしく、トロを探している様子も無いということ。
それなら、トロは元の姿のまんまでも、何も問題無いという事になる。
それに、生身の人間の身体とはいえ、少女の姿よりは多少は力があるので、オッサンの身体で活動すると決めたのだった。
ただ、今でも気を抜けば少女の身体に戻ってしまう事もあるが、そこは冒険者ギルドの受付嬢のギルド員も、トスター冒険者ギルドに集まる冒険者達も、『いつもの事』として、誰も何も言わなくなっていた。
「おはようございます! トロさん! ナディーさん!」
「やあ! おはよう!」
「おはようございます!」
「今日は俺達に似合うクエストはあるかい?」
「はい! 少々お待ちくださぁ~い」
そう言って、受付嬢はトロの今のレベルに似合ったクエストを探してくれる。
そんな時、ふと視線を冒険者ギルドの冒険者達が集まるホールに目を向けると、隅っこのテーブルの椅子に1人ポツンと寂しそうに座る少年を見付けた。
なにやら訳ありな雰囲気を醸し出していた。
なんとなく気になったトロは・・・
「うん? どうしたのトロ?」
「え? ああ、あの子がなんとなく気になってね?」
「へえ? どこ? どの子?」
「ほら! 隅っこのテーブルの椅子に座ってる男の子だよ」
「んん~~~あ! あの子? まだ、駆け出しっ子みたいね?
ふうん・・・なんだか、思い詰めてる様な・・・?」
「うん・・・ちょっと行ってみるね?」
「え? あ、うん! 分かった!
私は、ここで待ってるわね!」
「ああ・・・」
トットットッ・・・
トロは1人、その少年のもとへ向かった。
「君、1人なのかい?」
「!・・・・・・?」
少年は、ガックリと項垂れていた顔を、ふと上げトロの顔を見詰める。
だが、まだ自分に声を掛けられた事に気付いていない様子だった。
「・・・・・・???」
「君だよ! 俺は今君に話し掛けてるんだよ?」
「え? えっと、僕の事ですか?」
「うん そうだよ
ちょっと気になって声をかけさせてもらったんだけど、迷惑だったかな?」
「あ、いえ! そんな事はありません・・・
まさか僕に声をかけてくれるなんて、思いもしなかったものですから・・・」
「ううむ・・・なんだか思い詰めている様に見えたけど、
もしかして、何かあったのかい?」
「!・・・は、はい 実は昨日・・・
お世話になっていたパーティーをクビになっちゃって・・・」
「クビ?! 何か大きなミスでもやらかしたのかい?」
「いえ!! そんな事は絶対に!・・・たぶん・・・」
「・・・ふぅん?」
なんだか、この少年には訳がありそうだ。
しかし、可愛らしい子だな。
初期装備の『村人の服』が、『村娘の服』だったら、さぞかし似合って可愛い女の子に見えただろうに・・・
女装させてみたい! 可愛いコスプレさせてみたい!
などと考えてしまった。
いかんいかん! また自己趣味に走りそうだ(汗)
それはそうと、その少年がなんとなく放っておけなかったので、トロは彼の話しを聞いてみる事にした。
彼の名は、クレオ。
15歳の冒険者2年目のレベル50の『催眠術師』だった。
『催眠術師』とは、文字通り催眠効果で、仲間のステータスを一時的に上げたり、敵の戦闘意欲を萎えさせたりする事ができるのだとか。
装備は、初期装備の『村人の服』に、皮のライトアーマーに、短剣を腰のベルトのサックに納めている。
見た感じでは、ゴブリンがやっと倒せる程度の装備だ。
『催眠術Lv3』か・・・なかなか、面白そうなスキルだ。
他には、『料理スキルLv5』があるらしい。
パーティーに所属していた時は、荷物持ちと料理が主な仕事だったらしい。
でも、他にこれと言ったスキルや魔法を持つ訳でも無く、力もなく戦闘力も無いとの事で、荷物持ちと野営の食事の提供程度しか任される事が無く、昨日のクエスト終了後にクビになってしまったと言うのだ。
なるほどなるほど。
トロにしてみれば、是非とも欲しい人材だった。
トロが注目したのは、初耳の『催眠術』だった。
どれほどの効果があるのか、是非見てみたいと思った。
「そうなんだ・・・なら、俺達のパーティーに来るかい?」
「え? 貴方のパーティーに?」
「うん! 『トロと愉快な仲間たち』ってパーティーなんだけど、もし気が進まないのならお試しという事で、少し俺達と組んでみないかい?
そして君のスキル効果を是非見せて欲しい!」
「!・・・・・・トロと愉快な・・・って?!
あの有名なアクアマリン級冒険者パーティーじゃないですか!
そんな凄いパーティーが、僕なんかを?」
「そ、そう? ゆ、有名だったんだ? はは(汗)
それは知らなかったけど・・・(照)
ああ是非、君の能力を俺達に見せてくれないか?」
「・・・・・・わ、わか、わかりました!
僕の方こそ、よ、よ、ぃぃぃよ、よろしくお願いします!」
「ぷぷっ! そんなに緊張しなくても・・・
うん! よろしくな!」
トロは、ナディーに相談も無しに、クレオをパーティーに入れてしまったのだった。
••✼••冒険者ギルド受付け前••✼••
「あれ? その子・・・連れて来ちゃったの?」
「うん なんだか放っておけなくてね・・・」
「・・・どうも クレオといいます」
「ふうん・・・そうなんだ?
うん! ナディーだよ! よろしくね!」
「はっ、はい! よ、よろしくお願いします!!」
「うふふ 元気がいいわね?」
「そうそう! それにさ! 俺も初めて聞いたんだけど、
この子、『催眠術師』なんだってさ!」
「催眠術師?! 確かに初めて聞くジョブだわね?
でもそれって、どんな事をする職業なの?」
「うん! これからクレオに聞くことろなんだよ!
それよりさ、俺達も初めて聞く職業だろ?
だからさ! 前のパーティーではどうだったかは良く知らないけど、もしかしたら凄く可能性を秘めているかも知れないって思ってね!」
「いや、僕はそんな・・・」
「うふふふ・・・トロらしいわね?
いいんじゃない? 面白そうじゃない!
ウチのパーティーで頑張ってみたらいいわ!」
「はい! ありがとうございます!!」
こうしてクレオは、あっさり受け入れられた。
早速、パーティー新メンバー加入申請をして、トロは『お試し』とは言ったが、クレオを『トロと愉快な仲間たち』の正式メンバーとして登録した。
なにせトロには、クレオは絶対に素晴しい能力を持つ冒険者だと確信していたからだ。
絶対に、他のパーティーに取られたくない!
「トロさーん!」
「あ、はーい!」
パタパタパタパタッ・・・
受付嬢が、ニコニコ笑顔でトロを呼ぶ。
••✼••冒険者ギルド受け付け••✼••
受付嬢が、少し複雑な表情で話し始めた。
「何か良いクエストありました?」
「あのですねぇ・・・
新しく発見されたダンジョンなんですがぁ・・・」
「「「新しく発見されたダンジョン?」」」
新しく発見されたダンジョン。
それは、ネチコイ森林で発見され、調査隊が冒険者から選別し集められ、ダンジョンの調査とマップ作成に出てから2週間目に入るのに、まだ何も報告も無く、調査隊も帰ってくる気配も無いという。
そこで冒険者ギルドでは、調査隊に何かあったのでは?と考え、調査隊の捜索に出て欲しいとの事だった。
「もしかして、『晴天の雷』のみんなが、戻って来ないんですか?!」
急に慌てだすクレオ。
「え、ええ・・・まさか!」
「晴天の雷? なんだその厨二病な名前は・・・(汗)」
「でも、『トロと愉快な仲間たち』よりはマシじゃない?」
「・・・ナディー?」
苦笑するトロ。
「なんでもなぁ~~~い(汗)」
そんな事を話していると、クレオが下を向いて何やらブツブツと何か呟いていた。
「ん? どうしたクレオ?」
「え? あ、あの! 実は『晴天の雷』ってパーティーは、僕が元居たパーティーなんです!」
「「はあっ?!」」
「もしかして、僕が抜けたから・・・」
「ん?! ちょっと待て! それはどういう意味だ?」
実は、その調査隊が、クレオが元いたパーティーだったと言う。
それに何だかクレオが意味深な言い方をする。
「僕は戦闘には参加できないから、『催眠術』でみんなのステータスを上げていたんだ!
だから、普通なら絶対に無理な100くらいのレベル差だって、バンバン倒せてたんです」
「ほぉ! 催眠術って、そんな事ができるんだ?」
「へえ~~~すごいじゃない!」
「う、うん 今の僕の催眠術のレベルは3なので、最大全ステータスを3倍まで上げられるんです
他はからっきしだけど・・・
本当に催眠術にだけは自信があるんです!
でも晴天の雷のみんなは、僕の催眠術の効果を信じてくれなくて、みんな自分の力だと信じきっていて、だからクビになって・・・」
「「・・・・・・」」
「でも、ボクが抜けて催眠術でステータスを上げられなくなったから、今頃はみんなきっと・・・」
「「・・・・・・・・・」」
クレオのそんな話しを聞いたトロは正直ところ、『クレオってば自惚れすぎじゃね?』なんて思ったが、もしそれが本当なら晴天の雷は己の力を過信してダンジョン探索に向かったが、クレオの催眠術が無くてステータスは本来の低いまんまだったから、思うように魔物を討伐できずに今頃は・・・などと最悪な事態を想像してしまう。
半信半疑だったが、もしクレオの言う事が本当だったなら?
「わかった! どうやらクレオの元居たパーティー達がダンジョン探索から戻らないのは、クレオの催眠術が無いから対抗できずに、今頃はダンジョン内で助けを待っているのかも知れない」
「そうね!」
「・・・」
今、新しいダンジョンに探索に行って戻って来ない調査隊と言うのが、元クレオの居たパーティーだと言うのだが、冒険者ギルド側としても晴天の雷はクラス以上の結果を出していたので、今回の探索に向かう事を認めたのだとか。
だがクレオの能力を晴天の雷は一切好評しなかったので、今現在も冒険者ギルドでは『催眠術』という新しいジョブの存在すら把握していないのだ。
またそれは、晴天の雷もクレオのジョブの真の力を知らなかった事になる。
受付嬢の話しによると、第1次調査隊が新ダンジョンの第3階層まで調査済みだったのだが、第2次調査隊の元クレオの居たパーティー晴天の雷がまだ戻らないとの事で、トロ達に第2次調査隊の捜索に向かって欲しいとの事だった。
第1次調査隊によると、 第1階層はアメジスト級でレベル20~49で、第2階層はアメジスト級~ジェイド級で、レベル20~99で、第3階層はジェイド級で、レベル50~99なのだそうだ。
この、ネチコイ新ダンジョンの構成は大理石の様な硬い石でできた地下施設のような造りで、『ヒカリゴケ』のような何かが光っていて、ダンジョン内は本の文字が読めるほど明るかったそうだ。
各階層毎にボス部屋が存在し、ボスを倒さなければ次の階層へ通じる扉が開かない、または現れないシステムのようだ。
ボスを倒せば、ユニークの武具をドロップする事もあり、宝箱も出現する事もあり、またはその両方もあると言う。
また、ボス部屋の前には必ず魔物の寄り付かないセイフティールームがあると言う。
まあ、システム的にはごくごく普通のダンジョンと言える。
今回の第1次調査隊の探索では、ダンジョン内はそれほど複雑な造りではなく、予想よりも早く4日で帰って来れたとの事で、第2次調査隊も、案外早く帰って来るのでは?と予想されていたらしい。
だが、もう2週間を過ぎていると言う。
それにもうとっくに、保存食も切れている頃だとか。
第1次調査隊の冒険者達の予想では、第4階層からは難しくなり、出没すル魔物も強くなるのでは?との事だった。
なので第1次調査隊の冒険者達は、1~3階層まで何度かループして詳しくダンジョンを調べただけとのこと。
第2次調査隊の、元クレオのパーティーだった冒険者達は、ラピスラズリ級冒険者パーティーだ。
リーダー1人がラピスラズリ級で、他はジェイド級だそうだ。
つまり、第1次と第2次調査隊の冒険者達の中で、【限界突破】はたった1人だけだと言うことだ。
未開のダンジョンの探索で、限界突破が1人だけとは、それはあまりにも無謀なのではないか?とは思うのだが、実際問題限界突破冒険者が少なすぎるのが、この世界の常識と言うか問題点だと思う。
トロが【限界突破】のスキル獲得法を広めたお陰で徐々に限界突破の冒険者達が増えてはきているが、それでもギルドの把握している数は少なすぎる。
そこで、白羽の矢が立ったのが、トロ達だった。
「それで俺達に、行方不明になった冒険者の捜索に行って欲しいと?」
「はい! そうなのです!! お願いできますか?」
「ナディーは、構わないかい?」
「勿論! 構わないわ!」
「では、そのクエスト受けます!」
「そうですか! ありがとうございます!!」
こうしてトロ達は、ネチコイダンジョンで行方不明になった冒険者達の捜索クエストを受けたのだった。
とにかく、ナディーとクレオはダンジョン初体験だ。
どんなに弱い魔物相手にしても、『多勢に無勢』はどうにもならない
そこでトロは、『一網打尽』できる魔法で、【電撃魔法を覚える豆】を生成して、ナディーとクレオに10個ずつ食べさせた。
これによりナディーのクレオには、【電撃魔法Lv4】が『習得魔法』に追加された。
そして、回復系の魔法の覚える豆も食べさせてあげた。
【ヒール】と、【ハイ・ヒール】と、【浄化魔法】と、【パーフェクト・バリア】を覚える豆を食べさせた。
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
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名前 ナディー
性別 女
年齢 17
種族 人族
職業 シンニング・テイマー
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
Lv 185
HP 185
MP 193
STR 16
ATK 24
DEF 24
DEX 40
INT 68
MAT 27
SPD 40
LUK 68
EXP 819341
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【電撃魔法Lv4】【ヒールLv4】【ハイ・ヒールLv4】【浄化魔法Lv4】【パーフェクト・バリアLv4】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【テイムLv3】【従魔の治癒Lv3】【従魔の増強Lv3】【従魔の防御Lv3】【従魔の加速Lv3】【従魔の復活Lv2】【限界突破Lv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【ビースト・テイマー】【シンニング・テイマー】【パーティー名『トロと愉快な仲間達!』の副リーダー】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【オパール級冒険者】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
従魔
●シシー
【クノイチ・アサシン】
●リリー
【クノイチ・アサシン】
■===========■
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 クレオ
性別 男
年齢 15
種族 人族
職業 催眠術師
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
Lv 50
HP 150
MP 369
STR 9
ATK 14
DEF 14
DEX 21
INT 46
MAT 14
SPD 21
LUK 35
EXP 40420
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【電撃魔法Lv4】【ヒールLv4】【ハイ・ヒールLv4】【浄化魔法Lv4】【パーフェクト・バリアLv4】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【闘志向上催眠Lv5】【倦怠感催眠Lv5】【混乱催眠Lv4】【恐怖払拭催眠Lv4】【狂戦士催眠Lv5】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【ジェイド級冒険者】
■===========■
「ううむ・・・」
「「・・・?」」
クレオもナディーも、トロに負けじと劣らず・・・
と言いたくはないが、悲しいことに非常に弱い(汗)
流石は、非戦闘職だな。
だがトロは、オッサンの姿なら、少しは力があるのと、【剣術Lv4】があるので、そこそこ戦えるはず。
それよりクレオは、MPが異様に高い!
きっと、【催眠術】とは、【魔法使い】に近い職なのだろう。
とはいえ、催眠術系の技は全てスキルとなっている。
なんとも珍しくもあり、謎な職業だ。
研究対象としても、なかなか面白そうである。
もしかしたら、とんでもなく強者に化けるかも知れない?
だがクレオによると、催眠術は自分にはかけられないらしい。
なんだそりゃ、もったいない・・・
やっぱり、根本は支援職なのだろう。
MPが多いのだから、攻撃魔法と防御魔法を覚えさせても良いかも知れない。
でも今は、クレオの能力を直に体験してから今後の成長プロセスを考える事にしよう。
だが今回は、トロがナディーとクレオに与えた【電撃魔法】が大いに役に立つ事になるのだった。
••✼••ネチコイダンジョン••✼••
ネチコイダンジョン前に来ると、ダンジョンの入口に門番が立っていた。
トロは、門番に話しかけた。
「どうも ダンジョンから戻らない冒険者達の捜索に来ました」
「おおっ! 君達が、行方不明の冒険者達を捜索する『トロと愉快な仲間たち』という名のパーティーかい?」
「えっ?! ああ、はい そうです」
「君達の実力は噂には聞くが、ここはまだ何層まであるかさえも分からない未踏のダンジョンだ
何があるか起こるか分からない! 気を付けてくれよ?」
「勿論です!」
「うむ ご武運を祈る!」
「ありがとうございます!」
トロは不思議に思った。
つい先程、冒険者ギルドから行方不明のパーティーの捜索を受けたばかりなのに、もう自分達のパーティー名を言い当てられ、トロは一瞬戸惑った。
おそらく冒険者ギルド側は、トロ達がダンジョンで行方不明になった冒険者達の捜索を必ず受けると確信して、前もってダンジョンの入口の門番に伝えていたのだろう。
トロ達のように高ランク冒険者でなければ、捜索は難しいと判断したと思われる。
それに、トロ達以外の高ランク冒険者が他に居なかったのも理由のようだ。
こうしてトロ達『トロと愉快な仲間たち』は、ネチコイダンジョンへの行方不明者の捜索へと向かった!
••✼••ネチコイダンジョン入口••✼••
ダンジョンの入口から階段を下り、しばらく通路を歩いて行き止まりの第1階層への扉を抜けたすぐの事だった。
••✼••ネチコイダンジョン第1階層••✼••
ガコン! キィイィイィ~~~
「「「ひぃやあっ?!」」」
ワラワラワラワラ・・・
ガサガサガサガサ・・・
ブオォオォオォオォオォ~~~ン!
「どわあ?!」
「きゃあ!!「うわっ!!」
「姉御! 後ろへ!「クレオさんも!」
「う、うん!「ひええええ~~~(汗)」
ナディーとクレオは、思わず後退る。
そしてシシー達の後ろに隠れる!
「なん・・・なんじゃこりゃあ━━━!!
気持ち悪ううううう~~~い!!」
「これは・・・難儀ですな!」
「気持ち悪い~~~(汗)」
「こりゃあ、面倒な相手ですよご主人様!」
「あ、ああ・・・面倒と言うより、全身鳥肌モノだ!」
トロ達が見たものは、地面に大量に蠢くコガネムシに似た昆虫型の魔物だった!
しかも、ソフトボールくらいのデカさ!!
足の踏み場の無いほどにダンジョンの地面をワラワラと這っているし、空中にもブンブンと羽音を立てて飛び回っている!
四方八方から急速に近付いては去っていくときの羽音のドップラー効果が鳥肌モノで気持ち悪い!
『こんなの聞いてな━━━い!!
って言うか、俺は虫が苦手なんだあ~~~!!
虫のテラテラ感が大っ嫌いなんだあ~~~!!』
「こっ、これはいかん!! 一旦、引くぞ!!」
「ダメですご主人様! 入り口が塞がっています!!」
「なんだと?! 畜生! 閉じ込められたか!」
「きゃあぁあぁあぁ~~~!!「ぎゃあああああ~~~!!」
ナディーとクレオは、頭を腕で覆いながら悲鳴をあげる事しかできなかった!
ロンデルとロプロプは、トロを守ろうと必死だ。
ロキシーは、クレオを守ってくれている。
シシーとリリーとレレーも、ナディーを守ろうとしている。
為す術なしか!・・・と、思ったその時だった!
ロキシーが、作戦を思いつく。
「ご主人様! 私が『タゲ取り』をしますので、『電撃魔法』で奴らを一網打尽にしてください!!」
「なんだって?! そんな事をしたらロキシーは・・・」
「私なら大丈夫ですから!!
私には電撃魔法は効きませんから!!」
「!!・・・そっか! わかった!
あっ! なら、クレオにやって貰おう!」
「ええっ?! ぼ、僕が?!」
「そうだ! ロキシーはゴーレムだから、強力な火と氷以外は効かない!
だから電撃は効かないんだ!!
大丈夫だから、安心して思い切りやってくれ!!」
「そういう問題じゃなくって(汗)」
「何が問題なんだ! 守ってもらうばかりじゃダメだ!
お前には電撃魔法があるんだから、いいからやってみろ!」
「!!・・・・・・電⋯撃⋯」
「クレオ君! やっちゃって!!」
「わ、わかった! やってみるよ!」
作戦はいたって簡単!
ロキシーが『タゲ取り』(ヘイト)スキルで、昆虫型の魔物を自分の身体の周りに集め、タイミングを見計らって、クレオが【電撃魔法】をロキシーに向けて放つのだ。
あまりにも簡単で単純な作戦だったので、本当に大丈夫か?とは思ったが、今はロキシーを信じる他はない!
「いっくよお━━━!! タゲ取り━━━!!」
ブウウゥゥ~~~ン・・・
ブオオオオオオオオオオオ━━━!!
「きゃあぁあぁあぁ~~~!!「ぎえええええ━━━!!」
「うわわっ! ちょっと落ち着けっ!!
って、落ち着けなんて無理か?!
やっぱり俺も無理~~~~~~~~~!!」
ロキシーが【タゲ取り】スキルを発動した途端!
昆虫型の魔物は一斉にロキシーに集まる!
もう全身鳥肌だった!
ナディーとクレオは、もう発狂精神崩壊寸前!
地面から空中から、おぞましい程の大量の昆虫型の魔物が集まる光景は、洗った後のお風呂の栓を抜いたときに泡が排水口に向かって渦を巻いて流れ込むような光景だった!
昆虫型の魔物達はロキシーに集中攻撃しているようだが、ロキシーにはまったく効いていたなかった。
しばらくすると、昆虫型の魔物に包まれてロキシーが見えなくなり、ロキシーは黒い大きな塊になった!
そして・・・!
「今です! ご主人様!!」
「よしっ! クレオ! 電撃魔法だ!!」
「はっ・・・はいいいっ!!
んんんんんん~~~電撃~~~!!」
ピシャン! バリバリバリバリドド━━━ン!!!
「「「くぁwせdrftgyふじこlp~~~!!」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
モコモコモコモコ・・・
「「「・・・・・・・・・・・・(汗)」」」
ピシャ!と光ったと思った瞬間!
ロキシーの頭上に何本もの稲妻が落ちたように見えた!
閃光でダンジョン内全体が真っ白になり、みんな思わずその眩しさに堪らず目を瞑った!
落雷のような轟音と衝撃で、地面が叩いた太鼓のようにビリビリと小刻みに揺れて、みんなの身体や肌にもその衝撃は伝わり、クレオの放った電撃魔法の凄まじさにみんな驚いた!
その後、煙がモコモコと立ち上り、何も見なくなった。
そして、変な油が焼けるような臭いで充満していた。
クレオの放った電撃魔法の後、ダンジョン内を静寂が支配する。
トロ達はみんな、腰が抜けたように座り込んでいた。
しばらく静まり返った後、ようやく煙が晴れてくると・・・
「うわっ! なんだこりゃ?!」
「うっわあー!「えええええ~~~(汗)」
「わっはっは! まさに一網打尽ですな!!」
「凄いねぇ! ロキシー!!
あれほどの電撃だったのに全然平気じゃないか?」
「うん! 私には基本的に魔法攻撃は効かないから!」
「ホントに凄いな・・・たったの一撃で全滅かよ!」
「はぁ~~~・・・(汗)」
「ぼ、僕にこんな力が・・・(焦)」
この時クレオの習得スキルに、【限界突破Lv1】が追加された!
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 クレオ
性別 男
年齢 15
種族 人族
職業 催眠術師
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
Lv 150
HP 250
MP 1237
STR 14
ATK 22
DEF 22
DEX 36
INT 100
MAT 24
SPD 36
LUK 61
EXP 505801
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【電撃魔法Lv4】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【闘志向上催眠Lv5】【倦怠感催眠Lv5】【混乱催眠Lv4】【恐怖払拭催眠Lv4】【狂戦士催眠Lv5】【限界突破Lv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【ジェイド級冒険者】
■===========■
なんとクレオは、『トロと愉快な仲間たち』のパーティーメンバーとしての初の攻撃で、【限界突破】スキルを習得したのだった!
そして、他にも異変が起きていた!
「いやあ・・・おっどろいたなぁ~~~
まさかここまでとは? やるなクレオ!」
「は、はい! あの・・・えっと・・・・・・」
「どうしたの?」
「なんだよクレオ? どうした?」
「あの・・・・・・貴女は誰ですか?」
「「・・・はっ?」」
突然、クレオが変な事を言う。
トロに向かって、『誰?』と・・・
実はその時、トロはクレオの放った電撃魔法の衝撃に驚き、変身が解けてしまっていたのだった。
「誰って、何を言ってるんだ?」
「トロ! トロー!」
「ん? 何だよナディー?」
「気付いてないかも知れないけど、トロ、女の子に戻ってるわよ!」
「はえっ?!・・・・・・・・・・・・・・・
ああああああああぁぁぁ━━━━━━っ!!」
なんとなんと!
トロは、50過ぎのオッサンから、また金髪碧眼の女の子に戻ってしまっていたのだった。
そりゃあ、何も知らないクレオは驚くはずである。
「と、トロさんって、女の子だったんですかあ?!」
「あ、いや、これは違うんだ!!
俺は元々オッサンだったんだけど・・・」
「そうよ! トロは女の子なのよ!!」
「えええええええええええ~~~?!」
「ちょっ! こらっ! なんて事言うんだナディー!!」
「あ、え~~~と、女の子でもある・・・かな?」
「なっ?! はぁい? 何ですかそれ???」
「こらあ!! クレオが、ますます困惑するような事を言わないでくれ!」
「クスクスクスクス・・・(笑)」
「・・・か、可愛い♡」
「はあいっ?!」
「と、トロさん! 僕、トロさんに一目惚れしました!」
「ひゃあい?! なん、何を言ってんだよ?!」
「あらあら・・・これは修羅場だわねぇ」
「ダメだ! ご主人様は私のモノだぞ!!」
「何を言うかロンデル殿! ご主人様は私のモノですぞ!!」
「だぁ~~~め! 私のモノなのお!」
「ちょ、なんだお前達まで!!
ややこしくなる事を言うんじゃない!!」
「ふぅ~~~ん・・・じゃあ、恋のライバルって事ですね?」
「いててっ! やめろ! 離せぇー!!
今こんな事をしている場合じゃないだろ!!
痛いって!! 壊れちゃうってばあ━━━!!」
「あらあらあらあら~~~(笑)」
トロは、ロンデルとロプロプとロキシー、としてクレオに、文字通り引っ張りタコになっていた。
オッサン・・・危機です。




