第29話 「オッサンは異世界人」
異世界の料理を広めようと考えるトロ。
それは、トロ自身が食べたかっただけなのだが。
「よし! これでプリンを作るぞ!」
「おお━━━!! やったあ━━━!
・・・で? プリンって、なに?」
「・・・・・・ですよねぇ~」
ナディーにとっては、初めて聞く食べ物だろう。
元々この世界には無いものなのだから仕方ない。
トロは、プリンを作るために、人気の少ない場所に移動した。
甘くて美味しい物が目の前にあると知れば、人が殺到するのは明らかだからだ。
安定して作れるようになれば、人々に広めようと思う。
トロ達は、冒険者ギルドの隣のプライベート・ルームへと向かった。
••✼••サイチ村ブライベート・ルーム••✼••
トロは、【魔導インターネット】で『プリンの作り方』を検索した。
そしてそのレシピ通りにやってみた。
「あれ? 今日は、男の人にならないの?」
「ああ、うん なるよ!
男の身体の方が、料理などの細かい作業には慣れているしね」
「うんうん!」
「・・・(汗)」
シュパァン!
トロは変身魔法で、54歳のオッサンの姿に戻った。
トロは、ナディー以外に人目が無いので、本来の姿に戻って料理をするのだ。
やっぱり、細かな作業は長年慣れ親しんだ身体の方が何でもやりやすい♪
こうやって時々トロはオッサンの姿に戻るのだが、どうやらナディーはオッサンのトロに会うのを楽しみにしているようだ。
「ふう・・・なに?」
「え? うん・・・
トロって、男の人の姿も素敵ね?」
「ええっ?! そんな事言われたの初めてだよ」
「本当よ!」
「ははっ そんな大人をからかうもんじゃないよ(照)」
「えへへ・・・でも、本当に本当だよ?」
「そ、そうかい? ありがとう・・・」
「ふふふ・・・♡」
ナディーは、トロがオッサンになると、デレデレしてくる。
ちょっと調子が狂うトロ。
なんとなくナディーの気持ちを察してはいるトロだが、そんなナディーの気持ちには応えられない。
このムトランティアでは分からないが、日本ならオッサンが下手に若い女の子に近付くだけで通報されそうだ。
もちろん、トロにはナディーにそんな気など無いが。
「で・・・では、男のスイーツ作りをご披露しよう!」
「あれ? さっき、プリンって言わなかった?」
「うん プリンなどの甘い菓子の事を総称として、『スイーツ』って呼ぶんだよ」
「へえ~~~そうなのね!」
「では、始めるよ!」
「はい♡」
トロは、けっしてハンサムではない。
でも、一般的な美的感覚として心優しいオジサンには見えるかも知れない。
実はナディーは、小さい頃に冒険者だった父親を亡くしていた。
そのせいか、父親像を求めているのか中高年男性に憧れがあったりする。
特にナディーは、トロが笑った時の、目尻とほうれい線がクシャ!と増える笑顔が堪らなく好きだった。
いわゆる、『オジサマ好き』である。
いや、トロの年齢の場合を言うなら、『枯れ専』になるのだろうか?
孫が居ても不思議ではない歳だし。
ナディーは、トロに身体をピタッと当てて、トロの料理の様子を見ている。
正直、少しやりにくいトロだった。
「えっと・・・まあ、始めるか!」
「うん!」
トロは、プリン作りを始めた。
ナディーはトロの横でプリン作りの様子を見ていた。
オッサンのトロのエプロン姿を見て、ナディーは頬に手を当てニマニマしたいた。
他の従魔達は、食べる事は好きだが、料理には興味が無いので、みんなダラダラしていた。
・⋯━☞プリン作り☜━⋯・
材料
●陶器のカップ8個
●牛乳1リットル
●卵2個 日本のよりデカイので2個で十分と判断した。
●生地用砂糖山盛り
●カラメルソース用砂糖山盛り
★手順
1 カラメル作り。
鍋にカラメル用砂糖山盛りと水を入れて中火にかけ、茶色くなるまで煮詰める。
2
火を止めて湯を少し加えて混ぜる。
カラメルソースのでき上がり。
3
陶器の容器に均等に流し入れる。
「すんごい量の砂糖を入れるのね!?」
「そうだよ! 甘くなきゃ、スイーツにならないからね!」
「ふう~~~ん」
「ちょ、ちょっとナディー?」
「なぁに?」
「そんなにくっ付くと、やりにくいよ(汗)」
「ええ~ん いいじゃない?
料理をしている大人のトロを傍でよく見たいの!」
「そ・・・そうかい?
でも火を使うし危ないから、少し離れててくれな?」
「はあ~~~い!」
「・・・ふふふ(汗)」
トロは、娘ができたようで照れくさくも嬉しかった。
嬉しくも困ってしまい、苦笑するトロ。
ナディーはトロの事を父親というより、憧れのオジサマ的な感覚で見ていた。
4
プリンの生地作り。
ボウルに卵を割って入れてほぐし、砂糖を加えて混ぜる。
5
鍋に牛乳を入れて熱し、温まったら沸騰する前に火を止める。
6
プリンの生地の入ったボウルに少しずつ牛乳を加えてよくかき混ぜる。
7
カラメルソースの入った陶器の容器に均等にそっと流し入れる。
8
鍋に薄い布巾を敷き、プリンの陶器の容器を並べる。
鍋底に直接陶器の容器が接触させないためだ。
容器の半分くらいの高さになるように水を注ぐ。
9
ふたをして中火で熱し、湯気がたってきたら弱火にする。20〜30分蒸す。
蒸し時間の目安は、全体が固まり、揺らすと表面が軽く波打つ程度まで蒸す。
粗熱が取れたら冷やすのだが、冷蔵庫が無いので、魔導冷蔵庫なるものを【種生成】で作って、その中で冷やした。
10
十分に冷えたら、カップの底をお湯で温めてカラメルを溶かして、皿をのせて上下をひっくり返して取り出して完成!
「できた? できたの? これで完成?」
「うん! 甘くてぷるぷるのプリンの完成だ!」
「わあっ! やった!」
「「「「「「できたっ?!」」」」」」
「随分、小さいね?」
プリンを見て言うロンデル。
「本当に小さいですな?」
ガッカリした様子のロプロプ。
「ご主人様、こんな小さいと足りないよ?」
ロキシーは、まだプリンがあると思い込んでいる。
そりゃそうだろう。これはオヤツである。
プリンなんかでお腹いっぱいにしたら、気持ち悪くなってしまうぞ。
甘くて美味しいものは、『もっと食べたい!』と思うくらいで止めるのがちょうど良いのだ。
「さあ、食べてみよう!」
「うんうん!」
「「「「いただきまーす!」」」」
「「「「いただきまーす!」」」」
トロとナディーは、スプーンで少しずつ食べたが、従魔達は1口でペロリ!
「何コレ?! すんごく甘くて美味しい!!」
「うん ちゃんとプリンだ」
「これすごく美味しいね!」
「これじゃあ足りませんな!」
「・・・足りない」
「足りねえぜ姉御!」
「姉さん、お代わり!」
「何言ってんだよ プリンなんてものは、お腹を満たすために食べるものじゃないんだぞ?
これはあくまで、メインの料理の後のデザートみたいなもよだよ」
「メインすら食べてませんがな!」
「くっ!・・・それを言うかロプロプ(汗)」
「では、ご主人様の後にって事ですな!」
「ちがあ━━━うっ!!」
「じゃあ、お腹いっぱいになるほどの大きなプリンを作ってくださいよ!」
「無茶言うなよロンデル
これだけ作るのにも時間と手間でホント大変だったんだぜ?」
「じゃあ、食堂の料理人にレシピを教えて作ってもらったらどう?」
「あっ!・・・それ、いいかもね?」
「でしょう?」
「「「おおお!!」」」
「「「おおお!!」」」
そうだな! それもいいな!
なにも自分で作らなくても良いではないか?
レシピを売って、人に作らせたら良いのだ。
「流石はナディー! 頭いいね!」
「いやだ! そんなぁ~~~(照)」
ドスッ!!
「ぐをわはっ!!・・・な、ナディー何を・・・(汗)」
「ご、ごめんなさい(汗)」
ナディーは、照れ隠しでトロの鳩尾に拳をねじ込んだ!
トロは、まともに食らってお腹を抑えて蹲る。
「ナディーさん! ひどい!!」
「そうですぞ! 今のはいくらなんでも・・・」
「ご主人様、かわいそう・・・」
「姉御・・・手が早い」
「姉さん・・・ヤバい」
「やぁ~~~ん! ごめんなさい!
嬉しさと恥ずかしさで、つい・・・(汗)」
「い、いや、わかってるさ・・・
ハイ・ヒール!」
シュウウウ~~~・・・
トロは、自分にハイ・ヒールをかけた。
たとえ相手が女の子とはいえ、不意に無防備なときに鳩尾に食らったら、そりゃあ堪ったものではない。
それでもトロは、今のナディーなら並の冒険者なら相手にならないだろうと安心した。(親目線)
「ふう・・・さて! 今度は、何を作ろうかな?」
「え? 他にも美味しい料理があるの?」
「あるさ! そうだな~~~・・・
イチゴケーキとか、チョコケーキとか、ホットケーキとか・・・
ってあれ? ケーキばかりしか思い付かない」
「何それ?! 今度はその、なんとかケーキって作って!!」
「ううむ・・・でも、この世か・・・いや!
この国に、『イチゴとかチョコ』ってあるのかな?」
「いちごとかちょこ? なにそれ?」
「ふむ イチゴという名の赤く甘酸っぱい野菜の実を使ったケーキとか、チョコと呼ばれる茶色の苦甘い菓子を使ったケーキという菓子があるんだけどね、それがとってもフワフワして甘くてめちゃくちゃ美味しいんだよ?」
「わあっ! 食べてみたい!
今度、そのケーキってのを作って! ね!」
「でも、あまり頻繁に食べる物じゃないというか、お祝いやお礼に出すのが一般的というか・・・」
「へえ~~~そうなのね? でも、食べてみたいなぁ!」
「うん そうだね・・・
今度、時間があるときに、挑戦してみるよ」
「やったあ!!」
ガバッ!
「うをうっ?!・・・」
そう言って、トロをギュッ!と抱きしめるナディー。
照れ臭くて、ホワワンなトロ。
トロにとってナディーは、可愛い娘みたいなもの。
トロはナディーが可愛くて可愛くて仕方がなかった。
でも、けっして恋愛感情ではなかった。
親目線である。
だがナディーは、完全にトロに恋していた。
トロは、そんなナディーの気持ちに気付いているだけに、とても複雑だった・・・
••✼••サイチ村宿屋の食堂••✼••
「おや? お帰り! 今日は、その姿なんだね?」
「え? あ、ああ・・・」
「ただいま~~~」
「お帰り! どうだ? 少し早いけど、食事にするかい?」
「いや・・・」
宿屋の女将は、トロのオッサンの姿を見ても普通に対応する。
なぜならトロは、金髪碧眼の少女だったり、ドワーフのオッサンだったり、金髪青眼の幼女だったりと時々姿を変えていたので、宿屋の女将はもう慣れたものだった。
「実は、甘いスイーツのレシピがあるんだが、買ってくれないか?」
「甘いスイーツ? なんだいそりゃあ?」
当然ながら、宿屋の女将はスイーツなど知らなかった。
まずこの世界には、『菓子やおやつ』という概念が無い。
この世界での食事とは、あくまでも生きるためのエネルギー補給である。
まるでアグレッシブなスボーツマンのような嗜好だな。
だからなのか、トロがこの宿屋へ来る前の料理と言えばは、肉を塩で丸焼きだとか、肉や野菜をドチャ!と入れて塩茹にしただけだとか、そんなとても料理とは思えないものが主流だった。
調味料や出汁という概念すら無いのだから、仕方ない。
ただ、食べやすく塩で味付けするという考えだ。
王侯貴族や金持ちなら、胡椒なども使うらしいが、平民には手の届かない高価な物。
トロが来てから、トロが教えてあげた事もあり、塩だけではなく、味噌や醤油や出汁などの味付けされた『これぞ料理!』と言える、どこに出しても恥ずかしくないレベルにはなったと思う。
なので、サイチ村の宿屋は大繁盛である。
そこへまた、『スイーツ』なるものを教えるという訳だ。
宿屋の女将が喜ばないはずがない。
トロが女将に教えたレシピは、プリン、ホットケーキ、パウンドケーキ、味付けパン、などなど。
どれもトロの感覚なので、やたら甘かったりするのだが、これがまた大当たり!
忙しすぎて、宿屋の息子・・・いや、今は娘となったワイサも大忙しで、トロとナディーも時々手伝う羽目になってしまった。
トロは手伝う羽目になり大失敗だったと思っていたが、ナディーはそれなりに楽しんではいた。
やはり、女の子だな。
次は、中華なども作ってみるか。
とはいえ、簡単なチャーハンとか、焼き飯とか、ピラフとか・・・
ってあれ? どれも似てるな?
ピラフは米から作るんだっけ。
ってか、焼き飯とチャーハンは同じか。
所詮、トロの作る料理とはその程度である。
俗に言う、The 男飯!である。
そんな事をしていたある日のこと・・・
・⋯━☞数日後☜━⋯・
••✼••サイチ冒険者ギルド••✼••
「あ! トロさん!」
「ん? なんですか?」
「トスター伯爵夫人からの『召喚状』が届いてます」
「!!・・・すっかり忘れてた(汗)」
「え? なに?」
トロは、ナディーにトスター伯爵から呼ばれていた事を話した。
召喚状を読むと、キッチリとナディーも一緒にとなっていた。
今度は、何をさせられるのやら・・・
一応トロは、また女の子の姿でトスター伯爵と会うことにした。
トロが本当は50過ぎのオッサンだとは、トスター伯爵はまだ知らないはずだから。
••✼••トスター伯爵邸謁見の間••✼••
「やあ! 久しぶりだね!」
「どうも・・・」
「また、随分とメンバーが増えたようだね?」
「そうですね・・・」
《ちょっとトロ! そんな態度で大丈夫なの?》
ナディーがトロのトスター伯爵への態度に見かねて耳打ちする。
《いいさ 俺と伯爵との仲だ
ま、いざとなれば一緒に逃げてくれよな?》
《ええええ~~~(汗)》
「ふふふ 別に構わないさ!
私とトロ君の仲だ 気にしないでくれたまえ」
「あ、は、はい・・・(汗)」
「トスターダンジョンの件、ご苦労だったね
お陰で今のトンテンカン村は活気に溢れ、みんな大忙しだそうで、嬉しい悲鳴だと言うじゃないか?
いやはや、大したものだよ君は!」
「お褒めに預かり光栄です」
「あっはっは! よしてくれよ、そんならしくない!
先程も言ったが、私とトロ君の仲だ!
もっと、ざっくばらんに頼むよ
今じゃ君達は、『ドラゴン・スレイヤー』の称号持ち!
平民とはいえ『候爵位』同等の地位なんだからさ!」
「そのようですね・・・」
『チッ! ドラゴン・スレイヤーの称号で侯爵位同等だとはいえ、所詮は俺達は平民同様の冒険者だ
俺の方が地位は上だそと言いたい訳だな?
なかなかの生臭なヤツだな・・・』
などと心の中で思った。
そんなトロの気持ちを察したのか・・・
「あはははっ! 頼むからそんなに警戒しないでくれたまえ
私は君達とは今後も仲良くやっていきたいと思っているんだよ?」
「申し出は有り難いとは思いますが、俺はどうも貴族という生き物には苦手意識が拭えなくてね
取り込まれて死ぬまで飼い殺されるのではないかと勘ぐってしまいますね!」
《ちょっと、トロ!!(汗)》
《大丈夫だって! 俺だってトスター伯爵に対してこんな事本気で思ってなんかいないさ》
「ぷぁっはっはっはっは!!
まったく面白い娘だよ君は!」
《年上の俺に向かって、娘呼ばわりかよ(怒)》
「ふふふ ああ、それも知っているよ?」
「ん・・・?」
「本当の君は、50過ぎのオッサンだと言う事もね!」
「んなっ?!」
『こいっつう~~~!!
やっぱり俺の正体がバレていたのか。
これは、いかん!
コイツをこのまま野放しにはできん!
もし、メルセンベルグ国王の耳にでも入ったら?
今はまだメルセンベルグ国王は沈黙しているが、トロの素性や顔を知られたりでもしたら、メルセンベルグ国王から『トロは我らの物だ!返してもらおう!』なんて言って攻めてくるかも?
メルセンベルグ王国は、『人族至高主義』だ。
ロンデル達やシシー達のように強力な従魔を従える俺やナディーは、『魔族』扱いされる可能性も。
また、下手に抵抗すれば、『魔王』扱いされてしまうかも?
それこそ、この世界を敵に回す事にもなり兼ねない。
それでも、最悪は『魔王』にだってなってやるつもりだが、出来ることならばそれは避けたい・・・』
そんな気持ちがロンデル達に伝わったのか・・・
ロンデルは人型のまんま牙と爪をむき出し、ロプロプは翼をバサッ!とはためかせ、ロキシーは腕をゴーレムに戻し、トスター伯爵に対して威嚇する!
シシーとリリーはナディーを庇うように取り囲む!
「殺りますか?「おのれ!「怒ったぞ!」
「わっ! 待て待て! お前達!」
「ご主人様!「お守りしやすぜ!」
「きゃあ!」
「おいおい! 勘違いしないでくれたまえ!
私は君達をどうこうする気なんて本当に無いんだよ!」
「落ち着け! お前達!!」
「はっ!「むっ!「はい!」
ロンデル達は、落ち着きを取り戻した。
ホッとするトスター伯爵。
ナディーは、内心ドキドキバクバクだった。
実はトスター伯爵も顔には出さないが、内心ドキドキバクバクだった。
トスター伯爵は、ロンデル達がトロの鶴の一声で、このトスター領地だけでなく、王都イスヤリヤでさえも一夜で灰と化すほどの力を持つのは嫌でも理解していた。
なにせ、あのアース・ドラゴンを倒す実力だ。
トスター伯爵はトロのパーティーが、『先代魔王』に匹敵するほどの実力がある事も理解していたのだ。
そんなトロの機嫌を損ねるつもりなんて、トスター伯爵には、さらさらなかった。
だが貴族というもの、冒険者に対して下手に出る訳にはいかない。
腐っても貴族という訳だ。
さて、コイツは俺達に何をさせたいのやら・・・
内容によってはトスター伯爵の私兵との衝突もやむを得ないと考えている。
と! 思いきや!
「プリンを作ってもらいたい!」
「「はあっ?!」」
『なに? なんと言った今?
プリンと言ったか? 聞き間違いか?
プリンだと? プリンだとぉ?! 何処で知った?!
ああ、いや、俺達はトスター伯爵の配下にずっと監視されていたのだから、トスター伯爵自信が知っているのも不思議では無いが・・・』
「ぷ・・・プリン・・・ですか?」
「ああ、そうだ!
私も君達の考案したスイーツ・・・だったかな?
甘くて美味しいというプリンなどを是非私にも食べさせて欲しい!」
「スイーツという言葉まで知っているとは・・・」
「そりゃそうさ! 私の情報網を甘く見てくれては困るよ
このトスターだけではなく、西はサイチ、南はコチマまでの情報なら、1日と待たずに知る事ができるからね!」
「そのようですね・・・
電話や無線やネットも無いこの世界で大したものだ」
「ん? 何やら聞きなれない単語が出てきたね?
それは、いったい何の事かな?」
「ああ、いや、気にしないでくれ・・・(汗)」
「もしかして、この世界には無い、異世界の特異な技術の事かな?」
「!!!!・・・貴様!」
警戒態勢に入るトロ!
「ひゃう?!」
トロの警戒態勢に驚くナディー。
「「「グルルルルルル・・・」」」
威嚇するロンデル達。
「そう慌てないでくれたまえ!
私は君達をメルセンベルグに売るつもりなど無いかね」
「俺達に何を求める? なにが目的だ!」
「だから、さっきも言ったじゃないか
私にプリンを作ってもらいたいってね!」
「・・・本当に、それだけか?」
「本当だよ! それ以外に全く他意は無いさ」
「・・・・・・」
『なんなんだコイツは?
俺が異世界から召喚された勇者の1人・・・いや、召喚に巻き込まれた者だと知っている?!
コイツはやはり、野放しにはできない?
奴のステータスの状態を見ると、『警戒』と『恐れ』が表示されている
わざわざ俺達を無闇に怒らせて何が目的だ?
なのに、『好奇心』も表示されているところを見ると、プリンが食べたいのは本当なのかも知れない?
まったく、良く解らない奴だよ・・・』
「領主ともなるとね、忙しさのあまりに、時々美味しいものでも食べて息抜きをしたくなるものなんだよ」
「嘘ではなさそうだな・・・解りました
伯爵のために、プリンを作りましょう!」
「本当かね?! いやあ! ありがとう!」
「だが! もし俺の素性をバラすような事をしたなら、たとえ国王であれ敵とみなす!」
「解ってるとも! 解っているとも!
私だって命は欲しいからね
どんな事があっても、君達の事は守るつもりだよ」
「ホッ・・・それなら・・・
俺も貴方を信じる事にするよ
無礼な態度を取って申し訳なかった」
「いやいや、お互い様だよ」
「はあぁあぁあぁあぁ~~~(汗)」
ナディーは、その場に糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。
張り詰めた緊張の糸が切れたのだろう。
ロンデル達の表情も穏やかになっていた。
その後、トロとナディーは、トスター伯爵のためにプリンを作った。
トスター伯爵は物凄く喜んで、トスターダンジョンの件と、プリンのレシピ提供の分を合わせて、5000万Tiaもの報酬をくれた。
そして、今後トロの素性の情報漏洩を警戒し、トロを全力で守るとも約束してくれた。
トロ達は、トスター伯爵の屋敷を後にした。
『なんだ、トスターの奴、なかなか良い奴じゃないか?』
なんて胸をなで下ろしたのも束の間・・・
••✼••トスター宿屋の一室••✼••
「ねえ、トロ?」
「なんだい?」
「トスター伯爵が言ってた、『異世界』ってなんの事?」
「んっ??!!!!・・・・・・(焦)」
「・・・もしかしてトロって、異世界から召喚されたと言う勇者なの?」
「!!!!!!・・・・・・・・・(焦)(汗)」
来た! ついに来た!
これだけは、ナディーには悟られたくなかった。
でも、ナディーの様子からして、もう粗方察しが付いている様子。
トロの不思議でチートな能力を考えたならば、異世界から召喚された者ならではの特異な能力としか思えないのは必然。
もう、これ以上は隠し通せない・・・
トロは、正直にナディーに離すことにした。
「・・・ごめんナディー
実は俺は、メルセンベルグ国王に召喚された勇者の1人・・・いや、召喚に巻き込まれてこの世界へやって来たんだ」
「やっぱり!! やっぱりそうだったのね!
だって、トロの不思議な豆の力を見たら、全然普通じゃないもの!
異世界から来た勇者って、普通じゃ有り得ない力を持つと言うものね!」
「・・・そうだね」
「やっぱりね! そうじゃないかな?って薄々感じていたんだあ~~~!」
「・・・・・・」
「うふふふ 私って、異世界のとんでもない力を持ったトロと仲間なのね!」
「え?・・・」
「最高じゃない!!
トロ! もう私、貴女を絶対に離さないから!」
「んっ?!・・・・・・あ、ああ、構わないよ
でも、いいのかい?」
「え? 何が?」
「もし、俺が異世界人だと大っぴらにバレたりでもしたら、ナディーだってタダじゃ済まないよ?」
「ふふん! 望むところよ!
トロも私を守ってくれるでしょ?」
「?!・・・ふふ・・・ふふふふ・・・
ふはははははははっ!!
もちろんさあ! 俺は絶対にナディーを守ってみせる!」
「そうこなくっちゃ!!
私達、永遠のパートナーよ!」
「ああ、そうだとも! そうだとも!!」
ナディー。
君はなんて素晴らしい娘なんだ。
俺は何があっても、必ず君を守ってみせるから!
とうとうトロはナディーに異世界人だとバレてしまった。
それでもトロを受け入れてくれるナディー。




