第28話 「乳と卵」
この世界に無いものを作る。
それは、トロにとって素晴らしい物だから。
本当は食べたいだけ?
••✼••サイチ村宿屋の一室••✼••
「ナディー! これを着てみて?」
「なにソレ? もしかして新しい服?」
「うん そうだよ!
俺の・・・じゃなくて、私の故郷で流行っていた服をアレンジしたモノなんだよ」
「へえ~~~そうなんだ?
何でもいいけど、トロって時々自分のことを、
『俺』って呼ぶよね?」
「あっ!・・・そ、そうだっけ?」
「うん・・・なんだか・・・
ずっと年上のお婆ちゃんと話してるみたい」
「おばあちゃん?!・・・あはは(焦)」
「・・・」
『おばあちゃんって、ロリババアって事か?』
ナディーって、抜けてるところもあるけど、けっこう聡い娘だよな・・・(汗)
トロは、気を付けてはいたが、気が緩むとついつい一人称を「俺」と呼んでしまう。
ステータスは、【隠匿スキル】で、年齢は18歳に見えるように隠している事を完全に忘れていた。
ナディーの気心に慣れてきたのか、ついつい素が出てしまう。
ナディーから突かれると、自分は本当はオッサンなのに、召喚者とバレないように女の子の姿をしている事をついつい忘れてしまう。
「ええと、それはですねぇ・・・
ナディーの前だと、ついつい気が抜けちゃって(汗)」
「ふぅん・・・そうなんだ?」
「あは・・・うん・・・」
「・・・そう」
「・・・・・・う、うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・(汗)」
やめてぇ~~~! この苦しい間っ!!
ナディーは、トロが本当は50過ぎのオッサンだと周囲にバレたとしても、コレっぽっちも心配などしていなかった。
なぜなら、たとえそう言われたとしても、到底信じられない話しだからだ。
なぜなら、【変身】なんて魔法なんて、この世界の魔法には存在しないし、誰も知らない。
あるとしたなら、ゴーレムや1部の魔獣の【変化スキル】ぐらいなもので、あと姿を変える手段としては、二度と元の姿には戻れない『女装剤』ぐらいなものだ。
「それはそうと!
この服は、今ナディーが着ている服と、私の故郷で流行っていた服とを参考にして作ったモノなんだけどね?
一応、物理攻撃耐性と、魔法攻撃耐性を付与しているから、今後も1ランク上の奴らと戦うときには為になると思うよ!」
「凄おい!! そうなんだぁ! ありがとう!!」
「どういたしまして!」
トロがナディーに渡した服とは、今ナディーが着ているテイマーの初期装備の服に似せた『フード付きのマント』なのだが、フードには猫のような耳が付いている。
「あとね、右の耳に【猫の耳スキル】、左の耳に【猫の目スキル】を付与されてるから、きっと役に立つよ!」
「へえ~~~すごおい!!
でもコレどうしたの? トロが作ってくれたの?」
「う、うん まあね!
でも、私が作ったことは内緒にしてね?」
「うふ もちろん!」
「わっ! な、ナディー?」
「ふふふ」
ナディーは、いきなり抱き付いてきた。
ううん! 可愛い♡
うん! うん! 良い娘だ。
オジサンも思わず抱きしめて頭をナデナデしちゃったぞ。
もし、日本でそんな事したなら、鉄拳食らって鼻血ブー!のオマケに、手が後ろに回っちまって、豚箱行きで人生終わってたな。
ますます、男に戻れなくなってきた。
というか、男に戻ったところで、ステータスの性別がなぜか、女のまんまなんだよな・・・
なぜか直ぐに元に戻ってしまうし。
実は、トロがオッサンに変身してもすぐに女の子に戻ってしまうのは、『勇者として召喚された1人』としてバレたくない心境から、無意識の内に【変身スキル】が発動していたのだ。
また、ステータスの性別も女性のままなのは、単に『女性』として活動する時間の方が長いためである。
それにステータスの性別が男性に戻れたとしても、勇者召喚に巻き込まれたアラフィフのオッサンだとバレたりでもしたら、それこそ人生終わりだ。
【種生成魔法】を利用して、一生飼い殺されるのは火を見るより明らかだ。
本当に日本に戻れるかどうかは怪しいが・・・
もし日本に戻れるとしても、戻る気なんてさらさら無いトロ。
ここムトランティアでは、女のまんまで生きてくしかないなら、それならそれでも良い。
でも、何処から何から足が付くか分からない。
【種生成スキル】がバレた時のため、顔を覚えられないように、容姿も時々変えた方が良いか?
今持つバリエーションは・・・
10歳幼女、15歳金髪碧眼少女、18歳金髪青眼女性。
TPOによっては、プラチナ・ブロンドに赤目の美少女バンパイヤなんかも良いかも?
なにも人間に拘らなくてもね。
今現在のこの世界ムトランティアは、オーシテミーナ大陸以外は、魔族との対立はしていないそうな。
なので、イスヤリヤ王国の街や村などでは、エルフや獣人やドワーフなども、普通に人族と一緒に生活している。
ってか、エルフや獣人やドワーフってトロからすれば『亜人』という認識だったが、この世界では『魔族』だったのね。
冒険者ギルドで聞いた話しだが・・・
この世界の人の魔族の認識って、
『魔力を人族よりも桁違いに多く持つ者』
『身体能力が人族よりも桁違いに強い者』
『人族よりも寿命が遥かに長い者』
と、なるみたいだ。
また魔物とは、人間などの怨念が混ざり淀んだ魔力から産まれると考えられているそうだ。
そのため、人間や亜人(魔族)などの闇に堕ちた者達が、怨念に満ちた魔力にさらされると、自我を失い殺戮マシーンと化した強大な魔物と化す事もあるとか。
過去にも、そんな魔物が魔王となった例もあるとされている。
そして魔獣とは、この世界に元々生息する動物達が、魔石を食べて魔獣化したものと考えられている。
そのため、数百年と生きる魔獣は、人語を話すとさえ言われている。
中でも、「神獣」と呼ばれる種が居り、「エンシェント・ドラゴン」や、「神獣フェンリル」などがそうだとかで、魔王に匹敵する力を持つとか、またはそれ以上だとも云われているそうだ。
そんな魔王を倒したとされる初代勇者は、サファイア級と云われている。
だったら、今のロンデルとロプロプなら、当時の魔王に勝てるかも知れない?
でも、神格な奴らには流石に勝てないだろう。
でもでも!
『俺が、全ステータス強化魔法をかけたなら、もしかしたら、ロンデル達なら魔王にだって勝てるのでは・・・?
全く可能性が無い訳じゃない。
俺は、豆で世界を変えてやる!』
「じゃあ!
明日に備えて、今日はゆっくり休んでくれ」
「じゃあね!「ではまた「またねー!」
「はぁーい!」
「お疲れ様っす!「お疲れ様でっす!」
こうしてトロ達は、自分の部屋へと戻った。
・⋯━☞翌朝☜━⋯・
••✼••トロ達の部屋••✼••
コンコン!
「トロー! 起きてるー?」
「ゔゔゔゔゔ~~~(瀕死)」
ボロ雑巾のようにボロボロなトロ。
「ご主人様! お呼びですよ!」
「うっさぁい・・・」
「ご主人様 ナディー殿が呼んでおられますぞ!」
「うっさぁいってぇ・・・」
「ご主人様? 早く起きて服着て!」
「ロキシー服着させてぇ~~~」
「はいはい しょうがないなぁ~」
パタパタ・・・
昨夜もトロは、ロンデルとロプロプに美味しく頂かれました。
強引に迫るロンデルとロプロプに根負けして、慌てて【防音結界魔法】を発動させたが、振動は伝わっていたようだ。
・⋯━☞しばらく経って☜━⋯・
ガチャ・・・パタン!
「おははお~~~」
「どうしたの?! 目ぇ真っ赤じゃない!!」
「聞かないで・・・」
「・・・そう? じゃあ聞かないね
でも、すんごいズンズンって揺れてたけど、いったいあの振動は何だったのかしらね?
酔っ払いでも暴れていたのかしら?」
「・・・・・・さ、さあ?」
言えるはずがない・・・
ロンデルとロプロプが、俺を食い散らかしていた音だなんて、死んで言えない・・・知られちゃいけない・・・
ナディーが大人の情交を知る女だったなら、絶対に勘づかれていたはず。
ナディーが、純粋な少女で良かった。
どうか神様! キキティ様ぁ! お願いしますぅ!!
どうか! どおおうか! どお━━━か!
ナディーがロンデル達に、汚染されませんように!
トロは、生まれて初めて神に祈った。
••✼••宿屋1階食堂••✼••
日本なら、朝起きて玄関先に毎朝届けられる牛乳を飲むの日課だった。
だがここは、日本ではない。
毎朝牛乳1本グイ~~~?
そんな気の利いた物などあるはずがない。
でも日課となった毎朝牛乳を飲むもいうルーティーンが無いとなると、どうも調子が出ない。
「えっ?! この国じゃあ、牛の乳って飲まないの?」
「あるのは、あるんですよ?
でも、『スーパー・カウ』はとても凶暴で・・・」
「その、スーパー・カウって牛ですよね?
それを飼い慣らすことはできないのですか?」
「ううん・・・生きたまま捉えるのは難しいかと?」
俺は、唐突だが牛乳が飲みたくなった。
思い出したかのように、宿屋の主人に聞いてみた。
でも、牛乳らしきモノは、あるのはあるらしい。
だが! 野生の牛に似た魔獣の乳を取るのだそうだ。
数人がかりで牛を取り押さえて、その隙に搾乳するとか?
それがまた凄く大変らしい。
なので、この世界の牛の乳とは、とんでもなく高価なモノらしい。
・・・マジか。
しかし、『スーパー・カウ』だってえ?!
HONBAの世界一頑丈で長持ちするエンジンのバイクの事か?
ちがうよ! ちっがぁーうよ!
俺が欲しいのは、牛の乳なんだってば!
「いやいや、乳を搾乳するために育てた牛って居ないの?」
「なんだいそりゃあ?
そんなの、居る訳がないじゃないか」
「あれ? あれれ?」
どうやら、牛乳・・・つまり、牛系の動物の乳が欲しいなら、『スーパー・カウ』とかいう、凶暴な牛に似た魔獣から取るしかなさそうだ。
でも、『スーパー・カウ』を討伐した冒険者達は、乳まで取るような気の利いた奴など滅多に居らず、そのためとても高価な飲み物とされているらしい。
するとナディーが、不思議そうにトロに問いかける。
「がぁ~~~ん・・・」
「なぁに? トロは、スーパー・カウの乳が飲みたいの?」
「うん、そうだねえ
私の故郷では、乳を取るために飼い慣らしたスーパー・カウ?みたいな動物が居たんだ
『乳牛』と言って、その乳を『牛乳』って呼んでるんだけどね?
好きな人なら毎朝飲むものなんだよ。
私の故郷なら、簡単に誰にでも手に入るモノだったから、とても安価な飲み物だったんだけどなぁ・・・
だから、この国でもそれほど高くもなく、平民でも誰でも普通に買えて飲めた飲み物だと思ったんだけどなぁ・・・」
「へぇ~~~そうなんだぁ?」
「それに、牛の乳さえあれば、美味しい料理やお菓子だって作れるんだけどなあ」
「そうなの?! ソレ、どんなの? 食べてみたい!」
「ああ そうだねぇ・・・
仕方ない! スーパー・カウって奴をとっ捕まえて、搾乳するしかないか!」
「ええっ?! トロ、正気なの?!
スーパー・カウって、すんごく大きくて、すんごく凶暴なのよ!!」
「大丈夫だろ? 俺達なら!
あ! いえ、私達ならね!」
「ぷっ! そうね
今の私達なら、できるかもね?」
「うん! ああ、そうだ!
どうせなら、卵も欲しいよな!
これくらいの大きさの卵を産む鳥なんて居ないかな?」
「たまご? なにをするの?」
「なにをって、食べるんだよ」
「食べちゃうの?!」
「「「「ワイワイガヤガヤ・・・」」」」
「な、なんだ?」
そんな話しをナディーとしていたら、突然周りがざわめき始めた!
すると、1人の男性客が話しかけてきた。
「嬢ちゃん! 話は聞かせてもらったが、卵を産む鳥って事は、ココ鶏の事かい?」
「ココ鶏?
ああ、鶏のデカイ奴みたいねヤツだね?
ドラゴンの翼に、しっぽが蛇になったヤツ?」
トロは、『コカトリス』をイメージしていた。
「あん? なんだその化け物は?
ちがうよ! 1週間に5~6個の卵を産む鳥なんだがな?
コイツもまた凶暴でな!
背丈は、そうだな・・・
丁度、お嬢ちゃんくらいあるかな!」
「デカイなおい?!」
「ああ、そうさ!
ソイツは、丸々と太っていて大地を素早く走り、
翼はあるくせに飛べなくてな!
んで大地に巣を作り、毎日1個の卵を産み、
朝になると、『ココーココーッ!』って鳴くんだ」
「鶏、まんまだな・・・」
その男性の言う『ココ鶏』とは、日本でもごくお馴染みの鶏だと思った。
ただ、俺と同じ背丈って、化け物みたいにデカイけど。
「で、そのココ鶏って、何処に居るの?」
「コチマ村のずっと南の森の浅い所に、たっくさん居るぜ!
でもとても危険なヤツらだから、スーパー・カウの乳やココ鶏の卵を取りたいなら、捕獲専門の冒険者に依頼した方がいいぜ!」
「おおおっ! ありがとう!!」
トロは、ココ鶏の生息地の情報をゲットした!
「ナディー!
今日は、コチマ村の南の森へ行こう!」
「ココ鶏の卵を取りに行くのね?」
「うんにゃ ただチョイと確認するだけだ」
「はえっ?! ココ鶏の卵を取るために行くんじゃなかったの?」
「いやいや、私達なんかよりも、専門の冒険者達が居るみたいだよ?」
「そうみたいだけど・・・」
「うん! 牛の乳とか、鶏の卵を取る専門の冒険者達がね!
だから、私達が下手に動いたなら、彼らの仕事を奪う事になり、敵を作る結果になり兼ねないからね!」
「うう~~~ん そんな考えもあるんだあ?
私なら『早い者勝ち』って考えがちだったけど
なんだか複雑な人間模様が渦巻くような話しになっちゃったわね?」
「そだね! 適材適所だよ」
「そう言うものかしらね?」
「そう言うものだよ
私は、ただ食べたい物が作れたら、それでいいの!」
「ただ食べたい物のために、ここまでするんだ?」
「そうさ! 私は、この世界を変えるんだ!
もっともっと、美味しい世界に!!」
「美味しい世界に・・・って、トロにとって食べ物が全てなのね(汗)」
「当たり前だろ? 他に何があると言うんだい?」
「はいはい 付き合いますよ 何処までも!」
「あはっ! そうこなくっちゃ!!」
今のトロの頭の中には、
『美味しい料理が食べたい!』
ただ、それしか無かった。
••✼••サイチ冒険者ギルド••✼••
「あ、おはようございます!
トロさん! ナディーさん!」
「「おはようございます!」」
「すみません!
まだ、アース・ドラゴンの査定は済んでないんですよお~(汗)」
「いえいえ! その件で来たんじゃないんですが」
「では、クエストですか?
『トロと愉快な仲間たち!』に似合ったクエストはぁ・・・」
「ぶほっ!! 愉快な・・・(困惑)
ああ~~~いえいえ!
クエストの受注でもないんですが」
「あれ? 今日は、クエストを受けるんじゃないんですか?」
「受ける側じゃくって、依頼する側・・・かな?」
「ええ? 依頼する側???」
受付嬢が不思議がるのも無理はない。
なぜなら、冒険者がクエストを依頼するなんて、金の力で高ランク冒険者に成り上がろうとする貴族坊やの冒険者のやりそうな事だ。
貴族でありながら冒険者? なぜ自分でやらない?
いや、勿論自分も参加するのだ。
エグいやり方な例では、裏ギルドに依頼して、盗賊や魔物に村や旅人などを襲わせる。
そして、村や旅人を襲った盗賊や魔物を討伐する依頼を冒険者ギルドに依頼する。
そこへ金で雇った高ランク冒険者のパーティーに寄生して、村や旅人を襲った盗賊や魔物を討伐し、自分もチャッカリとクエスト完遂の実績を獲得し、人々を救ったという「英雄」の称号まで貰い、チャッカリとランクアップするという、セコいマッチポンプである。
受付嬢は、トロもその口か?と思った。
「トロさん? 貴女はそんな事のどしなくても、十分に実力がおありです!
ですから、地道にコツコツと・・・」
「あの~~~ちょっと、いいですか?」
「あ、はい」
「何をどう勘違いしたのか私を誤解しているようですけど、私は私で受けたクエストをするので、牛の乳と鳥の卵の獲得に、それらを専門に取る冒険者に定期的にお願いしたいんです
勿論、出来高でね!」
「ああ~~~なるほど!
そういう事でしたか! 解りました!
それでしたら、スーパー・カウの乳と、ココ鶏の卵を専門に取る、『チキン&カウ・テイカーズ』というパーティーが居ますので、そちらにトロさんからの依頼というかたちで通しても宜しいでしょうか?」
「はい! お願いします!」
ぬふふふふ♪
これで、この世界の牛乳と卵がゲットできるぜ!
この世界の牛乳とされる、「スーパー・カウの乳」と、鶏の卵とされる、「ココ鶏の卵」をゲットしたら、もうコッチのものだ。
どんな物なのかを知る事ができたなら、この世界の物と同じに完コピした物を種生成魔法で作れるはず。
まさか、日本の牛乳や鶏の卵を種生成で作るわけにもいかない。
出処を探られても、つまらないしな。
・⋯━☞数日後☜━⋯・
••✼••サイチ村冒険者ギルド••✼••
「トロさん お待ちしておりました!
スーパー・カウの乳と、ココ鶏の卵が、無事に確保できていますよ!」
「そうですか! 有難うございます!」
「出来高制との事でしたので・・・
スーパー・カウの乳が小瓶20本分と、
ココ鶏の卵が12個でしたので・・・」
「ほおお! 結構な量が取れたんですね!」
「はぁい! なので・・・
スーパー・カウの乳の小瓶1本分が10万Tiaとなりますので、20本で200万Tiaに」
「?!・・・はぁい?」
「そして、ココ鶏の卵1個分が5万Tiaとなりますので、12個で60万Tiaに」
「・・・・・・は、はあ?!(汗)」
「クエスト完遂代がそれぞれ100万Tiaになりますので、
クエストは2つなので200万Tiaとなり、総額で460万Tiaとなります!」
「「えええええ~~~?!」」
「?!・・・えっ?
どうか、なされましたか?」
「そんなに高いのお~~~?!」
「あ、はい・・・
これが通常範囲ですが?」
「「!!??・・・・・・」」
なんだってえ?! めちゃくちゃ高いなあ!!
ってかその高さ、有り得ないだろう!!
ユニークの武具ほどの額だぞ!
小瓶とは、ポーションなどを入れるガラスの小瓶であり、50ccほどしか入らない。
なので、20本分でたったの1リットル?
たった1リットルのスーパー・カウの乳が200万Tia?!
卵12個だけで、60万Tia?!
バカなの?!
いくらなんでも高過ぎでしょ!!
でも、後に受付嬢から聞いた話しだと、スーパー・カウの乳や鳥の卵を欲しがるのは、貴族や王族くらいなものらしい。
または物珍しさに時々、豪商が買うくらいだとか。
稀に並の冒険者が運良く卵をゲットできる程度。
そんな場合は、食べることなどせず、金に変えるとか。
また生物なので、新鮮さは大事!
特に卵だって新鮮なうちに割らずに持ち帰るのはとても難しいらしい。
なので、乳や卵とは、普通の冒険者や庶民には手の届かない超高級品だ!
しかも美味しい調理法を知らないので、超高級珍品扱いだ。
卵を焼いて食べたもいう冒険者の話しでは、とても不味かったと言う。
そりゃそうだろう。
卵を直接炊いたら、割れるし焦げるし・・・
失敗した・・・。
この世界を完全にナメめてた。
料理は、『さしすせそ』だろ!
『さ』は砂糖、『し』は醤油、『す』は酢、『せ』は醤油(昔は、『せうゆ』と書かれていた)、『そ』は味噌だ。
だがこの世界には、酢も醤油も味噌も無い。
なので料理と言えば、シンプルの塩味!
食文化の余りの低俗さに呆れた。
スープは塩のみの味付け、焼いた肉や魚も同じだ。
胡椒はあるが、お約束通りとても高級だ。
乳や卵がこんなに高いなんて、想像もしなかった。
無知は罪だな・・・まったく。
楽して乳と卵をゲットしようなどと考えた俺がバカだった。
こんな事を定期的に依頼していたら破産する!!
すぐにでも、定期的な依頼を取り下げねば!!
「あ、あの!」
「なんでしょうか?」
「この、定期的な依頼を、取り下げてくれますか?」
「ああ、申し訳ありません!
もう次の依頼が発注されてしまっていまして、冒険者様達もクエストに出掛けられております
なので、現在遂行中の依頼を取り下げることはできません(汗)」
「えっ?! そうですか
『定期的』って言ったのに・・・
では、その次の依頼で終わりにしてください!」
「はい 畏まりました
その様に、処理いたします」
「・・・ほっ」
やっべぇ! やっべぇ!
王侯貴族様共めぇ~~~(怒)
つまらない事で無駄金使いやがって!
↑
『人の事言えない』
俺は「ドラゴン・スレイヤー」の称号を得て、「侯爵位」同等となってしまったからか、数百万Tiaくらいホイホイ出す人なんて思われてるんじゃなかろうか?
冗談じゃないぞ!
俺達は、働いて稼げぐんだ。
黙ってても市井からせしめた金が入るような、お貴族様とは違うんだ。
一緒だと思われちゃ敵わん!
なにはともあれ、乳と卵をゲット!
乳と卵を使う料理で簡単なモノと言えば、プリンかな?
とは言え、日本でオッサンやってる時に、何回か作っただけだし、足りない材料もある。
どうしよう・・・?
こんな時、ネットでもあればなあ・・・
なんて思っていた。
じゃあ、【種生成】で作れないか?
種生成スキルを発動するときに、自然と頭に浮かんだものがある。
「魔導インターネット」だ。
この世界で、「インターネット」なんて単語が浮かぶだなんて有り得ない。
だとしたら、召喚された俺や勇者達以外にも、地球からこの世界へやって来たヤツが作ったとしか思えない。
それとも、この世界を創造したという「創造主キキティ」は、元々地球出身だったのかも?
地球とこのムトランティアとでは、時の流れは違うだろうから、有り得ない事ではない?
ま、深くは考えまい。
これも、召喚された俺のチートなんだと、無理やり納得した。
トロは、異空間収納内で【種生成魔法】で、【魔導インターネットスキルを覚える豆の種】を生成。
そのまま異空間収納内で、栽培→収穫→浄化→塩茹して、【魔導インターネットを覚える豆】を10個取り出し食べた。
トロは、【魔導インターネット魔法Lv4】を覚えた!
トロは、早速【魔導インターネットスキル】を使ってみる。
「トロ? 何やってんの?」
「うん? うん・・・ちょっとね、調べもの」
「調べもの? うん???」
トロは、中空に何かが有るかのように、指をクイクイ動かしたり、なぞったりしている。
今トロの目の前には、【魔導インターネット】の画面が表示されているのだが、トロ以外は誰にも見えない。
なので、ナディーにはトロが何をしているのか理解できないのだった。
だがそこは、ナディーである。
トロの事だから、きっと何か不思議なユニーク・スキルでも使っているのだろうと察する。
ここで深く考えても仕方ないと理解しているナディー。
何でも受け入れてしまう、素直で可愛いナディーだった。
「なるほど・・・ケーキを作る時はベーキングパウダーの代わりに、『自家製酵母』を使うのか
なんだ、パンと同じなんだな」
「げーきんぐ? こーぼ? パン?」
「そう言えばナディー!
近頃魔法使いの間では、「甘い実」とかいう甘い果実で、料理や素材などを作るんだってな?」
「え? あ、うん
そうい言えば、聞いた事があるわね!」
「その、『甘い実』って、どこで手に入るのかな?」
「うん 普通に何処にでも立ってる、「ピンク色の実」の生る、「甘い木」から採るのよ」
「あ、そーなんだ? 気付かなかったよ
じゃあ、その甘い木が立つ場所に行ってみよう!」
「あ、うん・・・???」
何が何だか解らないまんま、トロに付いて行くナディーだった。
「甘い実」とは、背の低い木に生るリンゴに似た形のした桃色の果実で、リンゴのような歯ごたえで、魔力が豊富に含まれた桃の味がする果実だ。
甘い実からも、きっと酵母が作れるはずだ。
魔法が使える俺になら、絶対できると自信がある。
『甘い木』は、この世界ではナディーが言うように何処にでも立つ木で、その木から取れる『甘い実』は、魔女や魔法使い達にとっては、ポーションや料理の素材として使われる。
また、そのまま食べても魔力の補充にもなるし、ポーション並の回復効果がある。
甘い実は、もぎっても、もぎっても、数日経てばまた実が生るという、不思議な木の実だ。
なので、自然に生えている甘い木の甘い実は、誰が取っても構わないのだ。
勿論、他人の屋敷の敷地内にある甘い木に手を出せば罰せられるが。
••✼••道具屋••✼••
「大将! シッカリ密閉できるガラスの瓶ってあるかい?」
「なんだい嬢ちゃん!
嬢ちゃんも、甘い酒にはシュワシュワ水派かい?」
「しゅわしゅわ?」
このオヤジ、シュワシュワ水と言ったが、「炭酸水」の事を言っているのか?
近頃は甘い酒に、シュワシュワ水(炭酸水)を混ぜて冷やして飲むのが流行ってるらしい。
「甘い酒」とは、甘い実から作られる酒であり、桃に似た味でとても甘く、そのまま飲むのが一般的な飲み方だった。
だが誰が始めたのか、炭酸水と氷を混ぜて飲むらしい。
少し薄くなるのだが、それがまた実に美味くなるとして、めちゃくちゃ流行っているそうだ。
「あは・・・いや、料理に使おうと思ってね」
「料理にシュワシュワ水を使うだって?
また奇妙な・・・まあいいさ」
誰も、シュワシュワ水を料理に使うなどと、一言も言ってないのだが・・・
「大、中、小があるぜ!
大きい方から、3000Tia、2000Tia、1000Tiaだよ!」
「!・・・思ってたより高いんだな?」
そう思った。
日本なら、この程度の瓶なら大量生産できるので比較的安価で百均などでも購入できるが、この世界では透明に近い瓶の生成は極めて難しいらしい。
ポーションの小瓶だって、磨りガラスのように透明では無い。
なので、もっと安い物だと思っていた。
「まあな、このサイチ村付近の森の中に、シュワシュワ水が湧く泉があるからな!
いくらでも湧くモノだから、実質タダなんだよ」
いやいや、シュワシュワ水の事を言ってるのではないのだが。
なんだか話しが噛み合わない・・・
これも日本とこの異世界との常識に違いか。
「へえ~~~そうなんだね!
じゃあ、中の瓶を1本くれる?」
「2000Tiaだね!」
「中身は要らないんだけどな」
「おや? シュワシュワ水が欲しかったんじゃないのかい?」
「言ってない・・・ 瓶だけが欲しいんだよ」
「・・・そうかい?
他に何か要る物はないかい?」
「じゃあ、その瓶1本の他に、野営用の肉焼きセットをおくれ!」
「はいよ! 全部で32000Tiaだよ」
「肉焼きセットって、3万Tiaもするのか
それに、焼肉とは言わず、肉焼きと言うのか
こんな物、日本で買えば5000円で釣りが来るのに・・・」
「ん? なんだって?」
「ああ、いえいえ! コチラの事で・・・
それと! ソッチの陶器の器も8個くれるかい?」
「ああ、コレだね?
1つ2000Tiaで、8個で16000Tiaになるよ
全部で、48000Tiaだよ!」
「この世界の物は、何もかも高いな・・・」
「あん? なんだい嬢ちゃん?」
「あ、はいはい! 48000Tiaね・・・」
チャリーン!
「毎度!」
銀貨5枚を渡して、銅貨2枚のお釣りだった。
トロは、炭酸用中瓶1本と、野営用の肉焼きセット、そして陶器の器8個を購入した。
トロなら、なんでも【種生成魔法】で作れるのだが、この世界の物も使わないと怪しまれると思ったので、『肉焼きセット』を使ってみる事にした。
肉焼きセットとは、肉を焼く鉄板と、鉄板を支えるラック、トング、炭などである。
トロには、以前に種生成で作った、立派な『なんちゃってBBQセット』なる物があるのだが、この世界からすれば異世界の物。
目立つのは良くない。
できるだけこの世界の物を使った方が無難だろう。
「よし! これでプリンを作るぞ!」
「おお━━━!! やったあ━━━!
・・・プリンって、なに?」
「・・・・・・ですよねぇ~」
改めて何も無い世界で、地球の料理を再現しようと考えると、すんごく難しいんですね?




