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初めまして Side パウエル黒龍大公大翁 

見直し 完了記念! パウエル曾お爺ちゃん編



 小雨降る中、儂らは墓標の前に立つ。

 


    小さな……



 本当に小さな背中が、四つ並んだ ” その墓標 ” の前に立っている。




 精霊様に祈りを捧げるその姿は、崇高にして、犯し難く ―――声を掛ける事すら憚られた。




 我が息子、そして、孫…… セシル姫様…… そして、儂が見知らぬカールの娘……




 墓の中から、儂に呼びかけて来るのだ。 この子を護ってやってくれと。 ハンダイが血を色濃く持つ、龍印の御子。 セシル様の宝珠にハッキリとした証を描き出す、龍の愛し子…… 余りに小さく、幼い後姿に、儂の心は震える。



 息子 カール を差し出し、黒龍が家の命運を護った。


 孫 エルグリッド を差し出し、大罪の贖いとした。



 罪深き儂に、墓の中の者達が言う。 





 ” この幼き、愛し子を、我等の代わりに護って欲しい ”





 畏れ多くも、ハンダイ王家の血を受け継ぐ、この幼子。



 真名は、クロエ=ハンダイ。



 肉親の墓標を前に涙一つ零さず、祈り、心に崇高な ” 貴族の矜持 ” を持つ者。 この精霊すらも加護を与えられそうに無い 辺境の地 において、民草を護り、ともに生き、共に笑う そんな少女。 寄る辺ない身なのに、この地を離れる事を、決して認めず 幼子は信念を持った目で儂に言い切りおった。




「クロエは、この地で暮します。 父様、母様、爺様、婆様が、命を懸けて護り抜き、愛したこの地を離れる事は、あり得ません。 帰って下さい。 クロエは、この地に生き、この地の民の安寧を護ります」




 度肝を抜かれるというのは、こういう事なのだ。 僅か 五歳(・・) の幼子が、王都シンダイでのうのうと暮らしている、どんな貴族よりも ―――大領を封じている、どんな高位貴族よりも ―――いや、龍王国を護っている、四大大公家の者達よりも…… この国に住まう誰よりも……




 ――― 天龍様とのご契約に沿った心根を持っていた ―――




 初代様達が交わした、天龍様とのご契約を、簡潔に纏めると――― 突き詰めれば、その事に尽きるのだ。




 ――― この地に生き、この地の民の安寧を護る ―――




 天龍様の御加護が無ければ、到底 人の住めるような場所ではない、この龍王国という土地。 強き龍印を持つ者が、天龍様の穢れを払う見返りに、授けて頂ける加護が無くては…… この地はマガツに覆われる。



 コレが………… 血統と云う物か……



 だれよりも、「 誇り高く 」、誰よりも 「 穢れを嫌う 」 者達(・・)の幼子。 セシル姫様…… カール…… エルグリッド……  我等、黒龍大公家一同が、そして、あの集まりの者達が 「 夢想 」した、未来が此処に有ったのだ。 儂は、もう年老いた。 しかし、その霞んだ視界に、凛と佇むこの幼子に、儂は未来を、龍王国の未来を垣間見たのだ。


 

 見てしまったのだ!



 あぁ、精霊様。



 疲弊した、ハンダイ王家  我等、四大公家が夢にまで見た、未来の希望。 何としても、王都シンダイに迎えねばならない。 何としてもだ! 崇高な魂を、龍王国の未来は必要としているのだ。 儂ら大公家は、王家の藩屏たるを自任しているが、それは、あくまでも、「 龍王国の民 」 いや、「 龍王国に生きとし生けるもの 」 の安寧を平安を守る為に存在するのだ。


 悪辣と言うならば、そう呼ばえ。


 もう、ハンダイ王家の寿命は其処まで来ているのだ! 形振り構っては居られんのだ!!! アレクサスは聡い。 しかし、情に脆い。 この幼子を託するには…… いや、他にアテなど無い。 やってもらうぞ、アレクサス。 この幼子には、重き荷を持ってもらう事になる。 確信がある。 そして、やり切るだろう事も――― 


 何故に儂が執着し、幼子を王都シンダイに迎えんとするか、いずれ判る。 




 何故に、精霊様は、この辺境の地に、この御子を誘われたのですか? 




 長き説得の後、幼子は、儂の頬を伝う涙に、彼女の意地を折り、王都シンダイに向う事を了承した。 最後に墓に祈りを捧げたいと、そう申した、幼子を前に、儂は何も言えなんだ。 旅立ちの朝。 四つ並んだ墓の前に跪拝する、その幼子。 この、小さな、小さな背中に、儂は――――――



 ――― 龍王国の未来を見出したのだ。 ―――



 これで、逝ける……



 本来ならば、儂が……、 儂が、導かねばならぬのは、判っている。 が…… 時間切れじゃ。



 セシル姫様…… クロエに逢えた事。 言葉を交わせたこと。 儂の行った諸々の所業の対価として受け取りますぞ。 これは、傲慢な想いですかな?



 ――― ふと、頬を撫でられた ―――   



 そうですか…… それで良いのですか。 カール…… エルグリッド…… 後は、黒龍大公家がクロエを護る…… アレクサスが差配する。 遠き時の輪の接する所に、儂も直ぐに参る。 その時は…… その時は…… 存分に叱って呉れ。 



 ………… 雨が上がる。



 雲間から、光の階梯降り、地上に精霊様が舞い上がる。



            行こうか…… 



          新しき未来を紡ぎに……



            我が屍を礎に……






         ” 誇り高く 穢れなく ” 






              ……な。







辺境 ロブソン開拓村に迎えに来た、黒龍大公一家。 

パウエルお爺ちゃんが、クロエの中に、龍王国の未来を見たお話です。


見直し、完了記念!!


ですです!!

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