望まぬ告白
「寒いーーー!」
学校から数分歩いて公園に着いたところで、教室を出てから何度目かもわからない「寒い」を千里が口にした。少し歩いたことで、若干寒さに慣れたような気はするが、それでも寒いものは寒い。
「とりあえず自販機であったかい飲み物でも買おうか。少しはマシになるだろ。」
そう言って二人で適当に飲み物を買い、風のよけれそれそうなベンチに座った。
「あったかいねぇ~」
「あぁ、うん、そうだね」
千里はさっき買った飲み物で首や頬を温めている。僕はどう切り出そうかとあまり頭が回っておらず、生返事になってしまった。
千里が顔を温めるのをやめ、飲み物を開けるとともに今日の名目である進路についての話を切り出してきた。
「で、奏はどこの大学考えてるの?」
このまま進路の話を始めてしまうと、そのまま告白のタイミングを逃してしまうかもしれない。言うなら今しかないと思い、僕は意を決して口を開いた。
「千里、実は今日誘ったのは進路の話をするためじゃないんだ。」
千里はキョトンとしている。そして僕は全身に力を入れていた。そうしないと、緊張で震えてしまいそうだ。
「実は・・・・・」
飛んだ。
今日まで考えてきたはずのセリフは、一瞬にして寒さとともに12月の空へと飛び立ってしまった。顔が熱い。なにを言えばいいのか分からない。しかしなにか言わなければ。いや、彼女に告白をしなければ。告白をするのだ。
「ずっと、前から、好きだったんだ!千里のことが!」
そういうと、千里はとても驚いたようにそのまま固まってしまった。
「だから、僕と付き合ってください!」
すると、千里ははっとして、そのあと少し気まずそうな顔をした。その顔を見て、今度は僕が固まってしまった。少しの間の後、千里が口を開いた。
「ごめん。私にとっても奏は大事な存在だと思ってる。小学校の時からずっと一緒で、奏にならなんでも話せるし、どんな話でも嫌な顔一つせずに聞いてくれるから。でも、奏と恋人になるっていうのは、ちょっと私は、想像できない・・・」
僕の頭の中は真っ白だった。ちゃんと振られる可能性も考えていたはずなのに。
「・・・それに私、今、好きな人がいるの」
その一言で、僕の中で何かが限界を迎えた。僕はベンチから立ち上がり、
「もし、君が僕と付き合ってくれないなら、僕は、自殺する!!!」
そう言ってから我に返ったが、自分でも自分が何を言ったのかわからなかった。
とにかく馬鹿な事を言ってしまったのは確かなので、どうにか訂正しなくてはと思うのだが何をどう言えばいいのか分からず、パニック状態になって声を出すこともできなかった。
しかし、彼女はそんな僕の目を見ながらこういった。
「ごめんなさい。もし今付き合ったとしても、きっと私は奏を殺してしまうことになると思う」
それを聞いて僕は泣いてしまっていた。そして、そのまま走って逃げてしまった。後ろから僕の名前を呼ぶ千里の声が聞こえたが、僕は止まることはできなかった。溢れる涙を止めることもできなかった。