No.2『タイムリミット』
このヒガン・シンスという少女は人生の最大最悪の壁に3回衝突することになる。
その壁の1回目、幼なじみが目の前で魔物に惨殺されるというもの。
ドットの2Dゲームであるためか、直接的な絵の表現はない。しかし文字でその様子が事細かく、鮮明に伝わるのように書かれていおり、その状況がどれだけ悲惨だったか…プレイヤーはすぐに理解することができた。
これはヒガンという少女が8歳の頃に経験することなのだ。つまりタイムリミットは8年。
8年間のうちにこの魔物から幼なじみを助けられるぐらい強くならなければならない。
ヒガンと幼なじみが初めて会うのが6歳…
ゲームではないので意識すればもう少し早く会うことができたりするのだろうか。
とりあえずそれまでに、この世界が自分の知識と本当にあっているか、知る必要がある。
2年が過ぎ、この世界の本を読んだりして分かったこと、それはやはりこの世界はフラワーリング・クロニカルであることは間違いない。
まず、作中通りに、この世界の共通言語は日本語であるという点。
フラクロで出てきた、魔法、地名、魔物の種類。
ゲーム内設定での歴史ともほとんど全て一致する。
この世界はフラクロの世界で間違いない。
ゲームであるフラクロとこの世界の決定的な違いは、魔法の使い方。
ゲームの方ではただ選択カーソルを文字に合わせ、決定ボタンを押すだけだったが、こっちではしっかり詠唱する必要がある。
しかし極めれば無詠唱も可能だそうで、無詠唱が使えれば戦略の幅も大きく広がるだろう。
当たり前だが戦闘はターン制ではないので、じっくり考えて戦闘する暇なんてない。
なので私はとりあえず反射神経を極めるために、遊びのフリをして木の棒を使った反射神経トレーニングを行っていた…
「なぁマリー?」
「何あなた?」
「いや、ヒガンが変わったことをしてるなぁって」
カモフラージュはどうやら失敗したようだ。
父親には怪訝そうな顔で見られているが、とりあえず気にしないようにしよう…
「何言ってるのよあなた!うちの子どもは自分で遊びを考えられたのよ!これは誇るべきことだわ!!」
どうやら母親の方は親バカのようだ。
まぁ傍から見たら不思議なことをしてる子供にしか見えないのだが…
トレーニングの説明は難しいので省く…私の語彙力が無いわけじゃないぞ?ほんとだからな!?信じてないだろ!?
しょうがないから説明してやるっ!!
「マリー…なんかヒガン怒ってるぞ…眉間に皺を寄せて、まるで立ち読み客を睨みつける書店のおじさんみたいな顔してるよ!?」
「何言ってるのよあなた!うちの子どもは自分で怒ることを覚え……」
「それはもういいよマリーッ!!」
両親がうるさいな…
説明する気が失せたので外で体を鍛えるトレーニング…って言っても体が未発達すぎてできることは限られてくる。
とりあえず体力、非常に重要な体力増強だ。チカライズパワー。
力尽きてそのまま殺されるなんてたまったもんじゃないからな。
シンス家は由緒正しき貴族の家系である。
まぁフラクロの作中内では権力争いでものすごくドロドロしている…そして権力争いによりヒガンは両親を目の前で失う。
…今は第1のタイムリミットのことを集中して考えよう。
話が逸れてしまったが、うちの両親は権力などに全く興味がなく、どちらかというと穏やかに過ごしたい派の人間なのである。
だからこのプリムラという村に越してきたのである。
ここは一言で言えば、田舎…ものすごい田舎なのである。
自然の力を借りたトレーニングができる素晴らしい環境なのだ。
それに正直自分もそこまで人と関わりたくはないし、人の多い都市部などには行きたくない…自分のわがままなのだろうか。
前世散々人からの関わりを避けてきた身の者が言えることではないのだろうけど。
しかし自然に囲まれた場所と言っても、自分はまだ2歳だ…庭の外になんて行ってしまったら大騒ぎになる。
庭に生えてる1本の大木だけ大自然にあっても違和感ないようなものであった…それぐらいしか自然の要素がない…
しかし貴族の家なだけあって庭はかなり広い、田舎のコンビニの駐車場よりも全然広いのだ。
家の中ではできないようなトレーニングも、ここなら何個かできるはずだ。
…2歳がまともにできるトレーニングってなんだろう?
肉体的にまだまだ未発達すぎるので、魔法を覚えることにした。
幼少期は物覚えがいいと言うし、魔法は頭脳にほとんど依存する。
ただゲームでの裏ボスとしてのヒガンは物理特化のボスであったため、あまり魔法の才能は期待できないのだが。
とりあえず物は試しだ。母さんの書斎から勝手に持ってきた魔導本に詠唱が記されているので、それを読んでみよう。
「小さな炎は 暗闇の道をも照らす力を持つ 我にその導きを示せ 」
魔力…ただ聞いたことあるだけであった存在を今確かにこの身をもって感じている。
そしてこの魔力…変形させることもできる。
でも変形についての記述は魔導書のどこにもないのだ。
「…ッ、ファイアライト!!」
このファイアライトは初級魔法、球状の小さな炎を放つ魔法である。
しかし、ヒガンが放ったものは先端がようやく見えるくらいの円錐型。
見本の図とは全くもって違う別の魔法のようにも見える。
これは、もしかしたら上級なんて覚えなくても魔力の形の変形を極めれば遠距離戦も問題ないのでは!?
さらに3年が過ぎ5歳になった、この世界では誕生日に歳の分のロウソクをケーキの上に立てるという文化がないらしい。
それで、魔力が変形できるなら初級魔法でも十分戦えるという説の結論だが…初級で十分、というより初級にしかないメリットも沢山見つかった。
まずは初級魔法は無詠唱が簡単なのだ。
2つ目、そして形の変形がしやすい。魔法は級が上がれば威力と大きさがでかくなる。つまりのこの手のひらサイズの魔力が1番弄りやすい。
3つ目、お手軽簡単無詠唱の多用な組み合わせによる混合魔法のバリエーションの多さだ。しかも自由度がめちゃくちゃ高い。これに対応できる者も少ないと思う。
以上の3つである。
ひたすら無詠唱の完璧習得と魔力の形の成形の練習に時間を使ってきた。
多分、そこら辺の雑魚の魔物だったら普通に殺せると思う、マジで。
なので、そろそろ幼なじみにも合う頃なのだ。
そう!幼なじみと巡り会う、それがあと半年も切っているのだ。前世で友達なんて居なかったので家族以外の人と話すのはハードルが高すぎる。
私は一体どうすれば!?




