初顔合わせ
連れてきてもらった場所
とおされた部屋は何もないところだった。
里美は田中さんがほかの人を呼びにいっている間
急に緊張感を感じるようになった。
やがてきた2人のうちのひとりは北斗自動車の副社長。
山田副社長は思いを里美に話しだした。
某所についた。
(ここからは皆さんにも場所は秘密です)
田中さんについていく。
ミーティングルームみたいなところに案内された。
ここまで人にあってない。
「なにもないとこでしょう。
ごめんなさいね。
そこで、すこしお待ちいただけますか。
すぐに戻りますね」
ほんとになにもない部屋だった。
モニターしか置いてない。
田中さんがいなくなって、ひとりでいると
それまでなかった緊張感を感じるようになった。
(そっか、田中さんは初対面だったけど、
気遣いしない感じで、それがよかったのかも。。)
しばらくして田中さんがふたりを連れて戻ってきた。
おそらく、今回の本丸になるふたりだ。
ひとりはちょっといい感じ。
いわゆるイケおじの部類なんだと思う。
もうひとりは…なんとなく技術系のひとなんだろうな
と思った。
イケおじ(失礼)がやんわりと始めた。
「佐藤さん
きていただいてありがとうございます。
わたしは山田といいます。
わたしがファースター社の代表をしています。
そして今回のプロジェクトの代表でもあります。
そして、しぱらくご一緒いただいた田中さん。
彼はわたしと一緒に、このプロジェクトの中核を
担っています。
佐藤さんが、プロジェクトに賛同いただいた際は
今後、彼と打合せいただくことが多くなると思います。
そして、戸田さん
ふだんは物静かですが、わたしたちと同じ志をもった
仲間です。
実は今回のプロジェクトは
佐藤さんの発想力と
戸田さんの技術力があって初めて成立する
と考えています。
あらためて佐藤さん
アンケートでご意見をいただき
そして、ご招待に応じていただいて
ありがとうごさいます」
(穏やかだけど、心地よい低い声。
ほんとに俳優さんみたい)
田中さんがあとを続けた。
「名前からお気付きかもしれませんが
山田は当社の代表ですが、北斗自動車の副社長です。
山田副社長がわたしたちに賛同いただけなければ
このベンチャーは発足することができませんでした」
(そうだ案内状の北斗自動車の副社長の苗字って
たしか山田だった。。)
山田副社長が再度話しだした
「わたしたちは実は佐藤さんの『ユメのクルマ』に
勇気をもらったものの集まりでもあります。
いまの自動車業界、いや社会全体といって過言ではない
と思いますが、『コンプライアンス』がすべてのことに
ついてまわります。
もちろん『コンプライアンス』は絶対です。
違反することは考えられません。
ただ一方で、過剰な対応がさまざまな足かせに
なっていると考えています」
(そうなんです。
過剰な対応っていい得てるとわたしも思います)
「とくに安全性。もちろん安全は絶対です。
わたしの口から、間違っても、ないがしろにして
よいとはいえませんし、いいません。
安全がすべてにおいて優先されます。
そこは譲れません。
ただ、わたしたちは車を運転するという行為について
ほかにも大事なことがあるんじゃないかと
常々思っています」
(そう、わたしもそうだと思います)
「たとえば衝突する可能性について。
これを極力0に近づける。
究極は0ですし、これを目指しています。
たとえば現在値が0.0002だとします。
そうすると、0.0001にするためにあらゆる手段を
講じます。
仮にほかの利点があったとしても
それをスポイルして0.0001への手をうちます。
ほかの利点が格段に向上するのがわかっていたとしても
絶対に0.0003に後戻りはできないんです」
※副社長が熱弁をふるっているところ、失礼します。
作者です。
副社長のことばは、もっともらしくきこえますが
取材に基づいた『ものいい』ではありません。
あくまで作者の想像発端の熱弁です。
今後も同じように、もっともらしく誰かに語らせること
があるかもしれません。
それらは部分的に作者の想像であることがあります。
その場合、事実と異なることもあるかもしれません。
はなし半分で、きいていただけると幸いです。
「だから例えば衝突安全装置ではその安全マージンを
大きくとっています。
万人が運転するケースを想定して設定しますので
危険を感じるタイミングは早めかつ多めになります。
危険があり、センサーがそれを察知して装置が
作動するタイミング。
このタイミングと実際に運転している人の
ブレーキング感覚のズレ。
それは人間の感覚、人により個体差や経験則に
基づいた加減の差異。
どうしても感覚のズレは発生します。
だから佐藤さんのように感覚の鋭い方、経験から
導かれるパーシャルの使い方のうまい方にとっては
センサーによる作動タイミングは違和感を覚える
かもしれません」
(⋯パーシャル?)
※たびたび作者が失礼いたします。
『パーシャル』ということばは一般的には
『部分的な』等の意味になります。
車においては『中間的な』=アクセルペダルの踏み具合
を加減させてあまり加減速が激しくならないようにする
等の意味に置き換えられて使われることが多いと
思われます。
今回の副社長の場合は、文脈からは『いいあんばい』
って置き換えるのがわかりやすいかもしれません。
(あ、そういうことね。作者さん補足ありがとう)
副社長は続ける
「佐藤さんが指摘する衝突安全装置の違和感や
衝突ギリギリの際にわざと衝突したように
感じさせる疑似接触の衝撃。
ライトの点灯タイミング。
これらはすべて安全性に関係してきます」
(そうか、だからワザと衝突したみたいなイヤな感じ
にして、これ以上アクセル踏まないようにしている
のかも。警告にもなるよね。
ライトもそれぞれの人の感覚があるけれど
そのなかでひとりでも暗いと感じる人がいるような
レベルの暗さなら、ライトを点灯させるとか)
※三たび作者です。。
このはなしはフィクションです。
副社長や佐藤さんのいってることは
作者が運転してて感じたことと
この作品を書きながら安全性について考えたこと。
これらをミックスして『こういうことなのかな』って
作者が自己解釈したにすぎません。
メーカーさんに取材をして
確認をしたことではないので念のため。。
「だからアンケートで佐藤さんにいただいた指摘に
わたしたちは
『そうだよね』とか
『うん、そうそう』
って共感していました。
そして佐藤さんの思い描く『ユメのクルマ』に勇気を
いただき、当社へ佐藤さんをご招待した次第です」
副社長の車の安全性の仕組みのはなしについて
わたしは全面的に納得した。
そしてわたしの素朴なこころのこえが漏れた。
「わたしの『ユメのクルマ』って
わたしがいうのは変ですけど
それほどのモノなんですか」
読んでいただきありがとうございます。
今回は文が多くなり、読みにくいかもしれません。
ごめんなさい。
そして作者の弁を多用してしまいました。
今回のことは作者が最近の車に感じていることです。
そして作者の『ユメのクルマ』のはなしの土台になる
違和感についてでした。
次回、さらに里美に作者の思いを語らせるかと。。