序章 物語紹介:『栴檀は双葉より芳しからず〜偏差値32から教壇のカリスマへ〜』のあらすじ紹介
1966年〜2027年。
伊崎進の人生を概観しました。
1967年、嵐の夜に「知的障害の覚悟」とともに産声を上げた一人の少年、進。
彼を待っていたのは、無能の烙印を押された父の背中と、借金取りから逃れる深夜の「夜逃げ」、そして「お前も父親のように仕事のできない大人になる」という呪いのような予言だった。
偏差値32。定時制高校。パンの耳で飢えを凌ぐ極貧の浪人生活。
社会の底辺で泥を啜りながらも、彼は法律という名の「盾」を求めて、たった一人で暗闇を歩き続ける。1995年、未曾有の災厄を紙一重で回避した彼は、運命に導かれるようにして、自分と同じ孤独を抱えた女性・美智子と出会う。
司法試験という巨大な壁を前に、一度は夢を断念しかけた進。しかし、彼は気づく。自分に必要なのは「資格という肩書き」ではなく、法律の言葉を、かつての自分と同じように苦しむ人々へ届ける「声」だったのだ。
宅建試験対策講座、公務員試験対策講座講師を経て、還暦を迎えた進は、YouTuberにデビューする。
【主な登場人物】
伊崎 進
本作の主人公。1967年生まれ。 劣等感と貧困、そして家族の離散という過酷な少年時代を送り、偏差値32の定時制高校から一念発起して黎明大学法学部へ進学。司法試験挫折後、公務員試験・資格試験のカリスマ講師として近畿一円を駆け巡る。 論理を重んじる一方、挫折を知る者ゆえの優しさを持ち、法律を「弱者を守る盾」として伝えることに命を懸けている。
美智子
1966年生まれ。進の定時制高校時代の1年先輩であり、生涯の伴侶。 進と同じ定時制高校を卒業後、一度は上京して婚約したが破綻。京都に戻り進と再会する。発達障害による生きづらさを抱えながらも、進の「背中」を誰よりも信じ、静かに支え続ける。彼女の淹れる茶と、何気ない一言が進の荒んだ心を何度も救うことになる。
(伊崎家・血縁の人々)
伊崎 千夜子
進の母。1943年生まれ、1982年没(享年38)。 不遇な結婚生活と困窮の中でも、進を産む際に見た「大勢の前で熱弁を振るう息子の夢」を信じ続けた。進が14歳の時にこの世を去るが、彼女が残した「直意」は進の人生を導く光となる。
荒川 俊郎
進の実父。1930年生まれ。 大手精密機器メーカー重役の息子として生まれるが、組織に馴染めず「無能」の刻印を押される。千夜子と離婚後は放蕩の末に行方知れずとなる。彼の存在は、進にとって「血の呪縛」として長く重くのしかかる。
伊崎 政夫
1940年生まれ。千夜子の兄であり、進の叔父。 自動車部品工場を経営。母を亡くした進を引き取るが、「中卒で働くのが当たり前」という価値観を持ち、進の高校進学を猛烈に反対して絶望の淵に突き落とす。進が最初に乗り越えなければならなかった壁。
木島
1940年生まれ。左官の親方。千夜子の再婚相手であり、進の継父。 学歴コンプレックスが強く、家ではニュース番組以外許さないという徹底したワンマン気質。進とそりが合わず、後に千夜子とも離婚する。
(進の恩人とその家族)
鹿沢 慎之助
1943年生まれ。進の人生最大の恩人。飲食店経営。自らも14歳で母を亡くした経験から、叔父に虐げられていた進を「自分の子供として育てる」と引き取り、高校進学の道を開いた。しかし、友人の3000万円の借金の連帯保証人になったことで夜逃げされ、進を全日制に通わせることが困難になるという悲劇に見舞われる。
鹿沢の姉
進が定時制高校を受験する際、娘の郁代も一緒に受験。しかし郁代は不合格。それなのに進が定時制高校へ入学する際、盛大な祝賀パーティーを開き、図書券を贈って門出を祝ってくれた。進が初めて「家族以外の大人」から受けた、純粋な祝福の象徴。
(友人・恩師)
伊勢
進の中学時代の恩師であり、美術家。進の母・千夜子が倒れた時、真っ先に進にそれを伝え、病院に行くことを促した。進の鋭い知性と正義感を見抜き、法律家への道を期待していた。後に予備校講師となった進に対し、「効率を教えるだけの存在になったのか」と厳しい言葉を投げかける。
高橋
黎明大学時代の戦友。共に司法試験を目指すが、後に大手金融機関のエリートへと転身。司法試験を受け続ける進をずっと電話で励ましていた。予備校講師として成功する進を認めず、進と決別する。




