運命の始まり
規衣ちゃんがまとっちゃんの写真を見たときの話です。
一様、絖里視点。
何故絖里なのかというツッコミは無しの方向で。ただ単に規衣ちゃん視点が書けなかっただけです。
ある日の昼下がり、大きな校舎の端の方にある生徒会室では普段人が近寄らないため辺りは静まりかえっている。
そんななか、普段なら聞くはずのない音量の声が廊下に響いていた。
「だーかーらー、2ヶ月だけって言ってるでしょ!!」
「いーやーだーーー!!!!」
1度中に入ってしまうと廊下が静かなのが不思議なくらい騒がしいのだが、今日はいつもに増して騒がしい。
その理由は…何故か入学式を終えたこの時期に転入生が来るというからだ。いきなりのことで部屋が余っておらず、どうせ近いうちに新しい寮に移る予定だったので1人部屋の住人のところに無理矢理入れてしまえということらしい。そこで白羽の矢がたったのが生徒会長である兎廩規衣だ。1人部屋なのはあと、副会長もいるんだけど、だれも頼む度胸がない。それなら、我が儘そうだけど会長を言いくるめる方が楽だとオレたちは結論づけた。
さっきから会長の説得を試みているのは、オレの兄である后乃朱里。そして申し遅れました、オレは后乃絖里。朱里の弟だというだけで生徒会書記、別名雑用に任命された。今は生徒会専用階で兄貴と一緒に住んでいる。
話が逸れたが会長が同室を嫌がる理由はこうだ。部屋は確かに共同スペースを挟んで2つあるけど、2つとも自分が使っているから片付けるのがめんどくさい。それなら業者を呼ぶか自分たちが手伝うと言えば、部屋を他の人に見せたくないと。あれこれと言ってみたが全く効果はない。2時間もこの状態が続き、もうそろそろ朔螺先輩が怒るかも……。理不尽だけど。
ガンッといきなり扉が開いたと思ったら、どこに行ってたのか峻岑先輩が入ってきた。
「強盗だ!手を上げろ!!」
右手で銃の形を作り、左手は無線を持った振りをしながら中に入ってくる。普通に入ってこれないのか、この人は。
「助けてくださいましー!!」
机の上で正座し両手を上げるこの人もこの人だ。
「俺仕事早いからー、誰かさんと違って。で、転校生の写真ゲットー!!結構かわいいよ、生意気そうだけど。」
ホレッと写真を目の前に見せている。するとさっきまでのうるささが嘘のように静まりかえる。どうしたのかと思い会長を見てみると、切れ長の目がこれでめかというほど見開かれている。
「いいよっ、僕この人と一緒に住む。一生!!」
いや、2ヶ月だけだから。
「何言ってんの〜?2ヶ月だけでしょ。」
「嫌だ!一生人生を共にする!!」
転入生も、また偉いものに好かれたもんだな。…ていうか、オレまだ写真見てない。
「天使だ、エンジェルだ、人魚だ!!」
天使とエンジェル一緒の意味だし。それに、人魚って……。
自称仕事の早い峻岑先輩は本当に仕事が早く、写真を等身大に引き延ばしてきた。無駄なところが技術力高いな…。全然画像が粗くない。そこで初めて転校生の顔を見た。なるほど、峻岑先輩の言っていることがよくわかる。
だけどこの転校生、あの人に似ている。もし、あの人の息子ならこの時期に無理矢理入学できるのも納得がいく。だけど、このことがわかるのは少数だろうし、多くの人はただの季節外れの転校生って思うだけだろう。んー、えらいひとに惚れちゃったな会長も。まぁ、何はともあれ当初の目的は達成されたし。めでたしめでたし……なのか?
「一目惚れしちゃったよ!超好き、大好き!!」
さっきの反応を見てだれもが気付いていることを連呼する会長。…さっきの写真を天井にまで貼ろうとしている。……それとるの、きっとオレの仕事になるんですけど。
これからの学園生活を思うと、写真の中の転校生に同情してくる。会長の親衛隊とかに酷い扱いを受けるかもしれない。
オレだけでも出来るかぎり彼に優しくしようと心に決めた。
fin.
どうでしたでしょうか?
絖里視点の意味がないような…。
読んでいただきありがとうございました。本編もがんばります。