外伝その3.深緑家の日常~タカラサガシ~
夏休み中の部活。
今日はバイトもないので部活へ顔を出すと英玲奈が裁縫道具を持ってきてぬいぐるみを作っていた。
「乙ー、英玲奈何作ってるの?」
「ふー先輩乙です~。これですか?"いそうろうぐらし"の南極ペンギンさんです、ウチこのキャラ好きなんです~」
「妹がそのキャラ好きだから私も知ってるよ、よく出来てるね!」
「そうですか?お世辞でも照れますなぁ。そういえばふー先輩妹さんおるんですか?」
皆に妹の話をしていなかったな……英玲奈に私の6つ程歳の離れた妹の話しをすることにした。
妹は小学4年生で私と昔から仲が良く一緒に遊んであげる事が多く、中でも"宝探し"をすることが多かった。宝探しは妹が友達と外に遊びに行った時に公園などに宝……大体はペンとか消しゴムなどを隠して手書きの地図だったりヒントを書いて私にくれるので、それを頼りに宝を探すのだ。
そして今日の朝、その宝のヒントが書いてある手紙をもらっており、ピンクの紙に【宝のありか】と大きく書いてある。
それを英玲奈に見せると面白そうと食いついてきて「ウチも一緒に探す」と申し出したので今回は"仲間"を連れ冒険に出かける事に。
手紙には【今日は寒い日です。A君はブランコ、B君はうんてい、C君はシーソー、D君は砂場で砂遊び、E君は何もせずベンチに座っています。この中で寒くなかった人の場所にお宝があるよ!】と書かれていた。
正直もうちょいパッとわかるような感じだと思っていたがなぞなぞが結構難しい。場所はこのラインナップから家の近くの公園だとわかったのだが……
英玲奈もわからず悩んでいたのでとりあえず私達は公園へむかいながら考えることにした。
公園へ向かう途中ふと昔を思い出したので英玲奈へ聞かせてあげることにした。
「妹がまだ小学生になったばっかりの時に自分の大切にしてたノートをお宝として隠した事があってさ、その時の地図がめちゃくちゃで全然あってなくて3日くらい探せなくて。
途中雨も降ったからやっと見つけた時はノートぐっちゃぐちゃになってて妹が泣いて私にめっちゃ抗議してきたの思い出した」
「それおもろいわぁ~妹さんかわええなぁ~」
「それからはそうならないようどんなに忙しくても一生懸命探してあげようって思って……でも今回のちょっと難しいかも」
そんな会話をしている内に公園へ到着した。
遊具が手紙の中に書いてある通りの物が置いてあり場所はここで間違いはない、とりあえず手分けしてその遊具の周りを探したが見つからない。
「あらへんな~、見つからんとなると、あとは砂場に埋めてあるとかですかね?」
「うーん、子供の力で掘れるくらいだと他の人に見つけられてる可能性も出てくるな……とりあえず初心に帰ってなぞなぞ解いてみるか」
2人で木製のベンチへ座り考えてみることに。
手紙では寒い設定なのだが今は暑くてじっとしていても汗が出る。ここまで歩いてくるのと宝を探すのにも体力を使いどちらもへとへとで英玲奈はぼーっと明後日の方向を向いている。
「英玲奈大丈夫?」
「大丈夫です~……それにしても夏は暑いな~ウチ冬の方好きやわ、服着込んで防寒すればええだけやし夏は裸になりたいくらいやけどそうはいかんのよな~」
「そうだね……ん?今なんていった?」
「えっ?"裸になりたい"って」
「いやそこじゃなくてその前」
「"服着込んで防寒すれば"って……あ!」
英玲奈も答えがわかったようだ。
ぼうかんしているから寒くない……つまり"傍観"してる子が寒くないのだ!
つまり宝の場所は……
「このベンチや!……でもさっき探してもあらへんかったし……」
「いや、あいつは見つからないよう何か細工してるかも。とりあえずベンチを隅々まで見てみよう!」
しばらくして私達はベンチの裏側に茶色で外側が塗られてあるビニールに包まれた手紙を発見した。
前濡れてダメになったからビニールで包み、それをすぐ見つからないようベンチの色と同じにして同化させていたのだ。
ビニールを取って手紙を開く、メッセージはこうであった。
【お姉ちゃんへ
いつもあそんでくれてありがとう。お仕事とか部活でいそがしいのにいっしょにあそんでくれてうれしいよ!あと、色んなもの買ってくれたり、私に優しくしてくれるお姉ちゃんが大好きです!これからも一緒にあそぼうね。】
それを読んでいた時もウルウルきていたが読み終わり声を出すほど泣いてしまい、一緒にいた英玲奈は私の背中をさすってくれている。
「ええ妹さんですね、ウチもこんなの見てもうたらちょっとヤバい、泣きそうやわ……」
英玲奈もハンカチで涙をふいている。
こうして私たちはかけがけのない"宝"を見つけられた……
後日妹へ私から宝の場所のヒントとなるなぞなぞを書いて渡した。
宝は英玲奈に頼んで作ってもらった"いそうろうぐらし"の南極ペンギンさんだった。
「英玲奈、妹の為にぬいぐるみ作ってくれてありがとう。あの完成度なら私が欲しかったくらいだよ」
「ええですよお気になさらなくて。
あ、もう一体作ってウチがどこかに隠して手書きの地図書きますからふー先輩また宝探しします?」
「望むところだ!私の趣味は"宝探し"だからな!」
こうして私の中にも新たな”趣味”が追加されるのであった。
本日の趣味について深緑 風花からメッセージがありました。
【宝探しは危険な所に隠さずに見つかりやすいような場所にしよう!
それにしてもあの手紙は何回見ても泣いてしまう…】